21/60サンティアゴ巡礼を途中で辞める日本人のノートの書き込み


目次・Contents
5/6(木)ブルゴス観光日 0㎞/€49 小さいアットホーム公営宿 寄付€3
ブルゴスの街には、大聖堂がありました。
「中の展示は、是非!観た方がいいよ!」とオスピタレロのおじさんに勧められました。
おじさんは、見送りをしてくれました。
私たちは、ここしばらく田舎道を歩いて来たので、都会に来たのが久しぶりでした。今日は、巡礼をお休みにして、ブルゴスの街を観光する事にしました。
アルベルゲは一泊しか泊まることが出来ない決まりなので、昨日、道で会ったトモコさんのおススメの、小じんまりしたアルベルゲへと移動することにしました。そこのオープンは昼12時でした。
今朝、5階建てのアルベルゲをチェックアウトしてから、3時間以上、空いた時間がありました。
外は寒く、小雨が降っていました。
疲れた時はチョコレート祭り
私は、ATMを探しました。 大きな街でお金を下ろしておかないといけないわ。ATMは初めてだけど、うまく出来るかしら…。
英語の説明に戸惑いながらも、なんとか500ユーロの現金を手にし、すぐさまお腹の薄いウエストバックにしまいました。ふう~、ひと安心~。
バルを見つけ、中で朝食を摂ることにしました。
甘いパンとカフェレチェ、コラカオをたのみました。
窓から外を観ると、細かい霧雨が降っていました。肌寒いし、いつまでも、ここで休んでいたいのですが…
今日、歩かないなら、絶対に公園で遊びたい!
私とChaiは、気がすすまないものの、他にすることもなく、コラカオやパンがなくなると、いつまでもバルに居るのも気が引けてきました。
私たちは霧雨の中、ブルゴスの街の公園を探しに行くことにしました。
モニュメントの近くに公園があるかも~。。
しかし、Denのリクエストにお応え出来るような遊具のある公園は見あたりませんでした。背中にはバックパックもありました。
外歩きは止めにして、どこか屋根の下に入りたいのでした。
それじゃあ、食べもの探索をしようよ!
果物、ハム、チーズ、パン、肉、魚、野菜、缶詰、お菓子、ヨーグルト…。いくらでもチェックするものがありました。もう、スーパーマーケットは、楽しい趣味の世界でした。
Denは公園もないし、お菓子は見てしまったし、退屈モードになってしまいました。表情無く、買い物時間が過ぎるのを待っていました。そのうち まだ~?まだなの~っ!
ハイハイ、わかってるわよ~。
Denが楽しめるようにと、チョコレートクリーム(ヌテラ)の巨大な瓶と甘くないスティッククラッカーを買いました。
このヌテラというのは、ヘーゼルナッツ入りのチョコクリームでした。それはもう魔性のおいしさで、以前に会ったドイツ人女性の話では
「ヌテラはね、失恋したときスプーンですくって、ひと瓶食べちゃうのよ。自分をなぐさめるのに最高のアイテムよ!」というぐらい、定番のチョコスイーツでした。
私たちは街角のベンチに座り、ビスケットでチョコをすくって食べるチョコレート祭りを開催しました。
ヘーゼルナッツのチョコ!うーんうま〜い‼︎。
Denはどうやら、気持ちが治まってきました。
チョコレートってすご~い‼︎
一瞬で人をシアワセ!にするのだから。
小ぢんまりしたアルベルゲ
12時、小ぢんまりしたアルベルゲに入りました。昨日会ったオビディオおじさんオススメでした。
「オビディオの紹介です。」と言って一緒に写っているデジカメの写真をオスピタレロのおじさんに見せました。
するとおじさんは
「オ~!アミーゴ(友達)」と、大歓迎してくれました。
定員が20人のアルベルゲに無事チェックインできました。
ヨカッタ~!
私たちは荷物をほどき、ひと息つきました。
すると、昨日このアルベルゲのことを教えてあげたリアが入って来ました。続いて、子どもたちと遊んでくれたセルジュも入って来ました。
二人とも
「ここいいね、落ち着くね!」と気に入ってくれました。
ギター演奏をバックに昼ご飯
皆のクレデンシャルの手続きが終わると、手が空いたオスピタレロは、スパニッシュギターを弾き始めました。
わあ!本場、素敵なメロディ!
ギターの生演奏をバックに、ランチをすることができました。スーパーマーケットに寄ったばかりなので、食料が豊富でした。
ブルゴス大聖堂に行きたいけれど、外は雨が本降りになってきました。今日の天気は雨が降ったり止んだりでした。もう少し待ってから外に出ようと、ダイニングテーブルで、お茶を飲んだり日誌を書いて過ごしました。
なかなか雨が上がらず、アルベルゲの住人はみなさん、ヒマでした。
ChaiとDenは、チュッパチャプスキャンディーを
味で分けるという重大な仕事⁉に真剣でした…。
リアが似顔絵を描いてくれた
アルベルゲ、トサントスのディナーで素敵なギターの演奏を披露してくれたリアはドイツ人でした。そこから3日間、一緒のアルベルゲになりました。手袋をくれたり毛布をわけてくれたりと、私たちをさり気なく助けてくれました。
リアも、雨で足止めをくっていました。
退屈していたChaiとDenに声を掛け、似顔絵を描いてくれました。
アハハ!そっくり~!
「似てる似てる~!」アルベルゲの他の人たちも、通り掛けに声を掛け、ニコニコ笑い楽しんでいました。
もっと英語が話せたら!
「Kumi3は絵を描かないの?」とリアに聞かれました。
えっ、あ、あの…、絵は描かないわ!
実は絵本を描いて上野の美術館で賞を取ったこともありました。もう10年ぐらい前のことです。
カミーノに来たら、絵が描きたくなるかな…。
と思って水彩色鉛筆を持ってきましたが、画材が重たく、使う時間も無かったので、パンプローナの街から日本へ送り返してしまいました。
「ここ数年、絵やイラストに全く興味が持てなくて。どうしてかな。忙しいからかな。頭にアイデアが浮かばないからかな…。何が描きたいのかわからないのよ…。」
そんなことをリアと話してみたかったのですが
自分の英語力の低さのせいで、私は黙り込むことを選んでしまいました。
あ~、もっと英語が話せたら‼と この時、痛感しました。
ブルゴス大聖堂に入る
雨が上がってきました。
さあ、ブルゴスの街と大聖堂を探索に出かけよう!と外へ出ました。
ブルゴスの大聖堂に入りました。
正面に、細かい彫刻が施されていて圧倒されました。
クレデンシャルを見せると巡礼者は入場料が半額になるという事でした。
大人5ユーロの入場料が2.5ユーロ、子どもは2ユーロの半分、1ユーロで入場することが出来ました。
高い天井、星型に透かし彫りがありました。
キラキラしたヤコブ像がありました。
廊下には、いくつものカトリックの絵画が飾られていました。それはマリア像に抱かれた子どもといった幸福なものばかりではなく、むしろ血を流したリアルな戦いの絵なども、かなりの数ありました。
舌を切られる、胸をえぐり取られるシーン…など…。 うわわ、けっこう怖いね…。
ステンドグラスは、絵本のようなストーリー性を持って連なっていました。
二人は、真剣に観ていました。
石柩の部屋です。教会の中は神聖な雰囲気が漂っていました。
ChaiとDenは、長きに及ぶ展示に飽きてしまうかな、、、と思ったのですが、最後まで興味を持って観ることができました。
中から見上げたブルゴス大聖堂です。
展示された模型で、ブルゴス大聖堂の全貌がわかりました。
大きいね。一番下から数えると7階建てぐらいになるね!
ウインドショッピングの幸せと憂鬱
ブルゴス大聖堂を出て、街の繁華街に探索に出ました。
午前中の探索は、バックパックを背中に背負っていたので、スーパーマーケットぐらいしか行けませんでした。
さあ、荷物無し!、ぶらぶらとウインドショッピングにと出掛けました。
日本で好きなグッズのお店を、ブルゴスで発見しました! この本、持ってる!ここで見るなんて、なんか嬉しいな。
街を歩きながら、私たちは
「わあ、素敵なシャツ!このバッグも見てよ~。かわいい!」
と、何度も声を上げました。しかし欲しいものがあっても、買えません。荷物が重たくなるからです。
アクセサリーなら、なんとか持っていけるかしら…と、Chaiはヘアピンを探して買いました。Denが耳が寒いというので、ヘアバンドを探すことにしました。
いままで田舎道、原っぱが続いていたので、久しぶりの街探索、ウインドショッピングにエキサイティングしました。
ヘアピンやヘアバンド一つを買いたいと思いました。たったそれだけのものを買うのに何軒もお店をまわり、選び過ぎて、終いには目が回ってしまいました。
そして、やはり私とChai が買い物モードに入ってしまうのでした。
Denは目が三角になっていきました。 ねえ~早く~!ねえ~早く~!ねえ~早く~!ねえ~早く~!ねえ~早く~! 今、終わるから、ね。もう、すぐだから!
私たちは、カミーノの田舎道を連日歩き、雨、風、雪、泥ですすけていました。服も着回し洗い回しで、ヨレヨレしていました。
たまに、ヨーロッパのおしゃれで華やかな街をフラフラ見てまわる事できると、心がウキウキ、キラキラしてくるのでした。
子どもが自由に遊べるっていいなぁ
途中、小学校の前を通りました。
子どもたちがスケボーで遊んでいました。時間は夜の8時半でした。スペインの夕暮れは9時半過ぎでした。
スペインは、このぐらいの時間でも子どもたちが外で遊んでいる姿をよく見かけました。夕食が10時過ぎなので、日本であてはめて考えてみると夕焼けチャイム(16時半ぐらい)の時間なのでしょう。
うらやましいな、と思ったのは
スケートボードやボールで自由に遊べるということでした。
公園の遊具は、ブランコや滑り台の他に、スケートボードのスロープ、バスケットのゴール、卓球台、バーベキューのかまどなどがありました。
日本の公園は、スケートボード、ボール遊びは禁止です。まして小学校にスケートボードを持って行くなんてことも、もちろん✖️です。
日本の子どもの遊びは なんだか窮屈だなぁ、と感じました。
さあ、アルベルゲにもどろうか。
スペインのチュロス
アルベルゲに戻り、入り口のドアを開けようとすると、直ぐ隣にバルがありました。
店頭のボードに
「Coffee and Churros」(コーヒーとチュロス)と書いてありました。 あ、チュロスだ!食べたいっ!
いいね。ちょっと冷えたし疲れたしね。コーヒーと本場のチュロスを食べて、休憩しよ~う!
バルに入りました。
バルのおじさんは
「油が温まるまで時間が掛かるよ~、いいかい?」と言いながら作ってくれました。その間、雑談をしました。おじさんは英語は少し話せる感じでした。私と同様でした。お互い、出来るかぎりの能力を駆使して英語でおしゃべりをしました。
日本から来たこと。
フランスのサン・ジャン・ピエ・ド・ポーから歩いてきたこと。
ブルゴス大聖堂のステンドグラスが素晴らしかったこと。
おじさんはチュロスを油から取り上げ、 最後に
パッパパ〜と、お砂糖をかけました。
熱々の、揚げたてのチュロスです。
うわぁ!美味しそう〜。
私たちは寒い中を歩き回り、腹ペコでした。ナプキンで挟み、アツアツのチュロスにハフハフしながら、かじりつきました。 うっ…!え? うあっ!え? えっ…?!
「塩っぱい〜!」
すっかり
チュロスは超甘いもの!
と信じて疑わずに、かじりついたので
塩味にビックリ!してしまいました。
日本ではチュロスは甘い!と決まっていました…。
私は思わず席を立ち、おじさんのところへ行きました。
チュロスを指さして
チュロス…、スタンダード?
もしかして、甘いチュロスがあったのかも…?
おじさんはニコニコして
「イエ〜、チュロス、ビエン?(おいしい?)」と答えました。
「シ、シ(はい)」と返事をし、
それ以上、つっこむことも出来ず、席に戻りました。
「なんかスペインのチュロス、塩味みたいよ…。」
「ふ~ん…。」
みんな甘〜い揚げ菓子を想像していたので
意表を突かれビックリ!してしまったのでした。
甘いものが欲しかったのでシーンと静まり返った三人でした。
でも、頭のチャンネルを切り変えれば、熱々のフライドポテトよ!美味しいじゃない!
アルベルゲに居るリアとセルジュにも、この塩っぱいチュロスを分けて、一緒に食べることにしようと、残りを包み、バルを出ました。
持ち寄り夕飯でドライソーセージを知る
アルベルゲに帰りつくと、食べものを持ち寄っての夕ご飯が始まりました。
パン、ハム、ツナペースト、ドライフルーツ、ナッツ、アボカド、キウイ、オリーブ、梨…。
1リットル60円の 紙パック赤ワインを開け、リアとセルジュと乾杯しました。子どもたちはプリンでした。
セルジュが、ドライソーセージを薄く切りわけてくれました。
うわッ、これ何だろうっ?
美味し~い!塩味がパンに合うね!
しかも、乾燥していてヒモが付いているので、持ち運びが楽、一本30㎝ぐらいでお値段も€2ぐらいでした。この日から、お店で見つけると必ず買うようになりました。
とても楽しい、夕食タイムを過ごすことが出来ました。
アルベルゲの書き込みノート
今日は、アルベルゲに入るのが早かったので
3人とも2段ベッドの下の段が取れました。
寝相が悪くても落ちる心配が無く、安心安心~!
Chaiがアルベルゲの書き込みノートをみつけました。そこには各国の言葉で、メッセージやイラストが自由に書かれていました。
たいていがカミーノを歩く喜び、出会いに感謝!といった内容だったのですが、
あ、日本語発見!えっ、でも…この人は…。
やっと見つけた日本語の文字、その内容は
『これ以上、歩いても意味ない。あばよ!俺はここで帰るぜ。』
と、書いてありました。
ドキッ!としました。
また意表を突かれました。チュロスに次いで、今日2度目でした。
「歩いても意味がない。」なんて…。
なんだか、悲しくなるわね…。
カミーノをポジティブなチャレンジと捉え、歩いてきた私たちにとって、とてもショックな言葉でした。
なんで意味がないんだろう??
暑さ、寒さ、足の疲れ、荷物の重さ、雨、泥汚れ、シャワー、節約…
全てが我慢大会になってしまったのかな…。
『じゃあ、あんたは意味あるのかよ?』と聞かれたら、私はどう答えるだろう…。
消灯になり、寝袋に入りました。
※以下 『見知らぬ俺』と「私」の架空の問答です。
見知らぬ俺:『じゃあ、あんたは意味あるのかよ?』
私:「意味あるよ‼︎ だって…」 だって…の後がうまく続きません。
私:「こんな風に毎日、ひたすら歩くなんて初めてで…。体力的にも精神的にも自分を知るチャレンジだと思う…。」
見知らぬ俺:『それが何?知ってどうなる?』
私:「それだけじゃない。そうしながらも、足は痛いし、荷物は重いし、お腹は減るし、雨は降るし、、。時には道に迷うこともあるよ。
でも、その日の終わりにアルベルゲにたどり着いて、ベッドや温かい飲み物があるだけで、本当にハッピーに感じられるんだ。
なけなしのシャツを手で洗って洗濯して、翌日、シャツがきちんと乾いているだけで、幸せを感じるんだ。そんなことだけでもね。
いつもは、考えもしない当り前のことなんだけど…。そんな『自分の考え』が発見だったよ。そうじゃない?」
見知らぬ俺:『いや?別に。』
私:「そうして、ここで出会った他の巡礼者たちと不便さやどうにも出来ない自然に共感したり、助けたり助けられたりの旅暮らしは、いつも予想外で毎日何が起きるのかドキドキしたりで、ちょっと楽しくなかった?」
見知らぬ俺:『それって、わざわざ困ったこと見るの?意味あんの?』
私:「いや…、何かあった時、
国籍、性別、年齢、学歴、仕事、お金持ち、貧乏…、
それらの事は全く関係なく同様に感じることってあるんだなって。
言葉が通じなくたって
少ない食料の中で仲間が分けてくれた一切れのパン。
疲れて座り込み、もう動けないと思った時、どこからか聞こえてきたギターの音で、なぜか自分たちも周りの人たちも笑顔になって、しばし疲れが飛んだような一瞬。
万国共通に、シンプルに感じる気持ちってあるんだね。
それを確認する機会でもあったよ。疲れて不便だからこそね。
人間の基本の「歩くこと」をしながら、普段の生活では気が付かない、ささやかなことの喜びやシアワセを見せてくれるのが、カミーノなんじゃないかな…って。見知らぬ俺:『本でも分かるんじゃね?』
私:う~ん、本も良いけど…。
...私はいつしか『見知らぬ俺』を説得する言葉を探していました。
人は、それぞれの価値観でいいのに…。
頭でわかっているつもりが、私は『見知らぬ俺』に
せっかくここまで来たのじゃない!…。
もし、あともう一歩…。
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出会う世界があったかもしれないのに…。
きっと、学業?仕事?費用?予定?体調?を調整して来たはずだろうに…。
そう思うと、さらに残念に思ってしまうのでした。
ああ、私ったらおせっかいババアだわ…。
しまいには眠れなくなってしまい、ベッドの上の段の金網をじっと見ていました。