55/60サンティアゴ大聖堂の先、大西洋が見えた!! 複雑な気持ち
6/9(水)→セー マットレスで熟睡 32km/€34 消防署の無料宿泊所 @0×3
昨日はマットレスで寝ました。落ちる心配がないせいか、ぐっすりと眠ることができました。
この地下室は、電気がありませんでした。
朝6時ですが、外はまだお日様が出ていないので、窓から光が入らず部屋は真っ暗でした。
手探りで、ドア向こうにある階段下のトイレへ行きました。
それから、洗濯物を取り込みました。それは、この地下室の椅子と椅子のあいだにロープを張り、干したものでした。
あら〜、ぜんぜん乾いていない。そして、、くさ~い…。仕方ないわ〜。
ここまでやってから、DenとChaiを起こしました。
今日は季節が逆戻りしたようでした。涼しいというよりも寒いぐらいでした。寝袋の中はうくうくと温かいので、ChaiとDenは起きられないだろうと、少しでも作業を進めておいたのでした。
おはよう!起きて~。
なんとか目を覚ました2人の足にクリームを塗り、マッサージをしました。これは、ずっと続いている足にマメが出来ない秘訣でした。
昨日、この地下室の二人組お兄さんの巡礼者は
「足のマメが痛くて困ったよ。」と言いながら手当をしていました。
ChaiとDenは、一度もマメが出来ませんでした。これも、出発前の保湿クリームマッサージのおかげかな。
それから、寝袋を出ておもむろに動き始めました。
乏しい食料
ChaiもDenも荷造りを済ませ、出発するだけになりました。
さあ、朝ごはんにしようか~。
と言ったものの、食料が乏しいのでした。
小さなパウンドケーキ2切れとパン一切れ、チョコ6かけ。
これが持っている食べ物の全てでした。ゆっくり、ちびちびと食べました。
あとは水を飲みました。
上の階のバルはまだ閉まっていて、温かい飲み物をたのむことはできませんでした。
あ〜あ、今日も雨だ〜。
しかも寒いね。でも行かなくちゃね…。
雨カッパを着て歩き出しました。6時50分でした。なんとか7時前出発の予定をクリアしました。
連日、ChaiとDenの後姿を見てきました。 この飽きるほど見た光景も、いつしか記憶の中から引き出すものになるのだわ…。淋しいナ~。
平凡で綺麗な里の景色でした。
「思う存分、目に焼き付けておいてね。お母さん。」と言いたげに、犬が見ていました。
ストック杖を拾う
ねっ!あれ、海じゃないの?
ざんねん~!どうも湖みたいね…。
な~んだ…。
大西洋は、まだまだ先でした。
あ、杖が捨ててある!Den欲しいな。二つ持って歩く人、カッコいいと思ってたんだ!! あら、そうなの?いいんじゃない。
Chaiが長さを調節してくれました。
終わってしまうカミーノ
雨の日は、道でカタツムリによく遭遇しました。
うろうろしてると、食べられちゃうよ!
巨大カタツムリを草むらに逃がしてやりました。
ケルト式石造りの穀物倉庫がありました。
この石造りの壁も、ガリシア地方になってから、よく見かけるものでした。
「大西洋を目指しているのかい?でっかいぞ~。そして、まだまだ遠いぞ!」と言っているようでした。
雨だし、寒いし、今日のアルベルゲは遠いし、お腹もすいてるけれど大丈夫だよ。だって、もうすぐカミーノは終わっちゃうから。歩くのが貴重な気がするの。
スペイン墓地の裏側が見えてきました。天使の後ろ姿がみえました。
こちらが正面側でした。
犬がChaiとDenを発見したようです。タッタッタ~と走ってきました。
「撫でて~!なんかちょうだ~い!」
ごめんね~、今日はパンのかけらも何も持ってないんだ。
橋を渡り、アスファルトの道をしばらく行きました。
カミーノでナンバー1のボカディージョ
オルベイロアの町の入り口でバルを見つけました。やっと、食べ物にありつけました。
ボカディージョ(バケットサンド)ひとつ 1.8ユーロは安いね! サラミハムサンド2つとチーズサンド1つお願いするね。
バルの中には、気のいいお兄ちゃんが一人、留守番のような雰囲気でヘッドフォンをかけ音楽を聴いていました。
注文すると
「OK、はいよ~っ!」とノリノリの気さくな感じで受けてくれました。
出てきたボカディージョに、私たちはびっくり!
うひゃ、すご~い!ハムが10枚も入ってるっ!
マジ?と聞きたくなるほど、具の量が多いのでした。
留守番のお兄ちゃんが
「いっぱい入れちゃえー!」
という、いい意味でのテキトーで作ってくれた感じでした。
チーズは1㎝の厚切りのものが5枚重なっていました。
これまた何かの間違い?と思わせるボリュームでした。
一度に、こんなにチーズを食べていいものだろうか…。
1枚づつChaiとDenに分けました。
空腹の3人は、ムシャムシャパクパク。いっきにエネルギーを身体に取りこみました。
カミーノでナンバー1のボカディージョだね!
ああ〜!フルチャージしたね!
予定変更、次の町へ行こう!
雨も上がってきました。歩き出してすぐオルベイラの町に着きました。
道の途中、アルベルゲを見つけました。
アルベルゲ発見。やった ~!
しかし、そこが開くのは17時からでした。
今、12時少し前でした。
ここで5時間も待つなら、次の町に行っちゃおうよ!
17km先だよ。大丈夫?
さっきのボカディージョ・パワーが効いていました。
まだ歩けるよ!次の町へ行くの賛成!
そうと来たら、この町で食料を調達しておこう!とお店を探しました。しかし、どこにもみつかりませんでした。
町の終わりに小さなバルを見つけ、そこでを食料を調達しました。
なるべくカロリーの高そうなものを選びました。チョコパン、チョコロール、チョコドーナツ、チョコサンド…。チョコが好きなのよね、結局は…。
そして、意気揚々と次の町へ向かいました。
ブタと他の動物、羊・馬・牛
途中、ブタが柵から顔を出していました。
「ブーブーッ、ブーブーッ!ブヒッ」鼻を広げて啼いていました。 か~わいい~!!
わあ、ベイブだ!
『ベイブ』というのは、牧羊犬になりたかった子ブタの物語映画でした。ChaiとDenは、その映画が大好きでした。ビデオを何回も観ていました。
ブタってかわいいだけに、見てると切なくなっちゃうわ~。
なんていうか…、牛や羊や馬とは、少し違った感情で見てしまうのでした。
それを示唆するように、この日はいろんな動物たちが登場しました。
羊が野っぱらで、のんきに仲間と休んでいました。
羊は年に4回、毛が刈り取られるのでした。
自由に草を食んでいる馬がいました。
スペインで馬は、交通手段として活躍中でした。車やバイク、自転車と同様に人を乗せ、道路を闊歩していました。
うわっ、来た!
「なによっ!何にもしないわよっ!! モーッ!」
牛はお乳を搾られるほかは、牡牛も牝牛も昼間は草っぱらでのんきに過ごしていました。
牛はミルク、羊はウール、馬は乗り物としての役目、それらがあるので長く生きていられるのでした。たいてい、草っぱらで自由にすごしていました。
それに比べてブタは、柵の中にいました。草が主食ではないので草っぱらにいる訳にもいかないのでした。同じ家畜の中でも、ブタは損をしているように見えました。
ブタちゃん、食べられちゃうんだね…。
すぐに太っちゃダメだよ。
「ブヒッ~ブヒッ!」
憧れの杖2本歩き
午後3時、さすがに疲れが出て来ました。
山から流れてくる水が川になっていきました。
橋を渡りました。
しばらく、アスファルトの道を行きました。
再び雨が降ってきました。
道標は、左がフィステラ、私たちの目的地でした。
右がムシア、ヤコブが流れ着いた伝説の海岸を指していました。
私たちは、すでに20km以上歩いていました。Chaiは、歩く勢いに衰えを見せませんでした。 今日はいくらでも歩けるよ!
それとは対照的に、Denはしゃべりっぱなしでした。 ヤコブは白馬に乗って戦ったんだって? スクイズってどういうこと? 牛は食べてすぐウンチする?
雨はあがったのですが、道はぬかるんでいました。
林の道になりました。
田舎道が広い道に開けてきました。
クロスのモニュメントがありました。
この花はデジタリンだね、毒があるから触らないようにしなくちゃね!
おやつ休憩にしました。チョコパンおいしい~!
ママ、遅いよ~!
あ、ハーイ!
わ~、また山だ。先が見えないね…。
行き先は、まだまだ見えないけれど、道に陽が射してるね。
未来は明るいよ!
Chaiちゃん早いなぁ~!追いつけないよ。
いま4時半でした。この地点で27,8㎞歩いていました。
Chaiは、あい変わらずペースが落ちることなく歩いていました。カミーノと歯車がうまいことかみ合い、軽快に回り続けているようでした。
Denは、憧れの杖2本歩きでしたが…。
杖を2本使っても、疲れるのは変わりないんだね…。
大西洋に感激!
私の疲れもピークに達してきました。と、そんな時…
ああ~っ!、あれ 海じゃない?大西洋だよ‼
やった~!
わあ~大西洋!
海だと分かった瞬間、カラダがフワッ!と浮き上がりそうでした。それから血管の中の血が、ふつふつと沸き立つような感覚が起きました。
スペインの果てまで来た~!
フランスの山から、ここまで歩いて来た〜!
感激の声が次々ともれました。
あははっ大西洋!
タイセイヨオォ~!
全身が歓んでいました。
私はそのあと、嬉しいような、悲しいような複雑な気持ちにさせられました。(日に焼け、風雨に晒され、もはや国籍・性別・年齢不詳な私…。)
あ~、あと2、3日で本当にカミーノの日々が終わってしまう…。
1日の流れで思えば...
雨、風、雪の中を重いバックパックを背負いカミーノを歩くことは、決して楽ではありませんでした。
いつも心は、早く今日の宿に落ち着いて、休みた~い!温かいシャワーを浴びた~い!と切望しながら歩いていました。
けれど今
巡礼全体で思えば...
この日々は、まだまだ続いて欲しい~!と心の底から願うのでした。
これは、以前アラン先生が教えてくれた人生の大切な4つのことが詰まっている日々だったわ。愛する事、尊敬する事、働く事、歩く事…。
仲間に助けられ、家族を思い、自分を大事にし… そこに愛があった。
自らではどうにも出来ない天候や道、動物に畏敬の念を抱き… 尊敬の心。
重い荷物を背負い… 生活の荷物を運ぶのは生きていくための仕事。
カミーノは… ひたすら歩き続ける。
カミーノのシンプルな日々は、それらがどれも濃く詰まっているのでした。
ここにずっと居れば、何かをきちんとこなしているといった安堵感がありました。
大西洋、見えてからがけっこう遠いんだね~。
坂を下ると、いよいよ海が迫ってきました。
ああ大西洋、見たかった~!嬉しい!
アルベルゲが見つからない
だんだんとセーの町の全体が見えてきました。
私は、足のマメは相変わらず痛いのですが、海辺の町に入ると思うとワクワクして来るのでした。
あれが今日、泊まる町、セ―だね。
やっと来たね~!
ママおそいよ~、早く!
ハイ~ッ!
疲れてへとへとですが、この町はきっといい!
なんだかそんな予感がしました。
道端にカトリックのモニュメントがありました。
ここでも墓地の横を通りました。やはり天使の像がありました。
セーの町に入りました。看板や矢印が無く、アルベルゲがどこだか見当がつきませんでした。
地元のおじいさんが、向こうから歩いてきました。アルベルゲがどこにあるか聞いてみました。
ドンデ エスタ アルベルゲ?(アルベルゲはどこですか?)
「付いて来い!」
というジェスチャーをしました。私たちはホッとして、おじいさんの後ろをカルガモの親子のように、一列に連なり続きました。
長い登り坂を5分ぐらい歩いた途中、おじいさんは振り返ると、軽く手をシュタッ!と上げ、そのまま左側にあったドアに入ってしまいました。
えっ??
そこは、どう見てもアルベルゲではありませんでした。
どうやら、
ただ自分の家に帰る道の途中…だったのでした。
アルベルゲ探しは降り出しに戻る
私たちのアルベルゲ探しは、振り出しに戻りました。
時間は夕方6時でした。
朝7時から歩き始め、11時間、32kmを歩いていました。
もう、クタクタ~!でも、最後の力をふり絞って頑張ろうね!、アルベルゲが見つからないと休めないものね…。
ここは、スペインの田舎町でした。そのせいか、若い人になかなか出会いませんでした。つまりは、英語を話す人にも出会う機会がありませんでした。そもそも、通行人が少ないのでした。
向こうから老夫婦が歩いて来ました。
チャンス!
紙とペンを用意しました。もし言葉が通じなくても、アルベルゲの場所を地図に書いてもらおうと思いました。
オラー! ドンデ エスタ アルベルゲ?
ピルグリム、カミーノ…、アルベルゲ。
おばあさんは、ニコニコしながら紙とペンを受け取りました。
そして、何やら書き始めました。
私たちは、息を飲んでおばあさんのペン先を見つめました。すると
“A l b e r g u e”
と震えた文字を書いて、渡してくれました。そしてニッコリと笑ってくれました。
ガクッ...。 うーん、惜しい…。アルベルゲ、知ってる?って字のことじゃないんだな~。
いったい、ここはどこなんだろう。見当がつかないわ~。
矢印や看板といった情報が、見つからないのでした。そして、人に聞きたくても歩いている人を見つけるため、探して移動するようでした。
体力も限界に達し、ヨロヨロしていました…。
救世主・Koreaのお姉さん
すると、坂の下のほうから不意に日本語が…。
「コンニチハ!ダイジョウブデスカ~?」
聞き覚えのある女性の元気な声でした。
「アルベルゲが見つからないのです〜!」と言うと
「この先にあります。一緒に行きましょう。」と先頭にたち案内してくれました。お姉さんは簡単な日本語が話せるので、とても心強く感じました。 昨日に引き続き、今日もアルベルゲを教えてくれるなんて!ほんとに救世主だわ。
困った時に、タイミングよくバッタリ出会うのでした。
3人が付いて行った先は、消防署でした。中に入ると巡礼者用のマットレスがある部屋に案内されました。
費用のことを受付の人に聞くと
「このアルベルゲは消防署の慈善事業だから、費用はとらないよ!」ということでした。
え、無料⁉
やった~!
すでに9人ぐらい、各国の巡礼者が荷物をほどき、寝るためのマットレスを確保していました。
私たちも邪魔にならないように、一角にバックパックをまとめました。 不思議だね。Koreaのお姉さん。困った時に必ず現れるよね。名前も知らないよね。
今日は、名前を聞こうね。
それから荷物を置き、シャワーを浴びました。
おや?、Chaiの足の皮がハート型にむけていました。
アハハ!何これ?
ケバブで乾杯!カミーノご褒美ディナー
今日は良く歩いたね~。ご褒美に外食しよう~。
イエーイ!
腹ペコをやっつけろ~!
と町へ繰り出しました。
シャワーを浴びた身体に、海風が心地よく当たりました。
ぷらぷら歩いているうちに、トルコ料理店を発見しました。
ケバブが食べたい!というので、その店に入ることにしました。
ケバブが来ました。
ガブッ!かぶりつきました。
フライポテトもヒヨコマメのコロッケも美味しい!
このバルのおじさんは、とても陽気でフレンドリーでした。私たちのテーブルに励ましに来たついでに、Chaiのジュースを飲んじゃったり
「イェ~イ!」と乾杯の音頭をとってくれました。
おじさん、すでに酔っぱらっている?
まあ、いいやね。
乾杯!サルゥー!!
大西洋が見えた今日は、お腹の底が常にケタケタと笑っているような爽快な気分でした。
トルコレストランを出て、町を気の向くままに散歩をし、メルカドを見つけました。
好きなデザートを買おうよ!
わーい!
Chaiは大きなバケツプリン。私とDenはサクランボにしました。
外のベンチに座り、夕涼みをしながら食べました。
あ~、おいしい~!
写真撮るよ~、ハイ、チーズ!
カシャッ!
お姉さんの名前はテレサ
消防署のマットレスルームは、みんな思い思いにごろ寝をするようでした。
Koreaのお姉さんの名前はテレサと言いました。 いつも、困ったときに助てくれて、ありがとうございます!
テレサは
「とんでもな~い!」と言いながら笑顔で受け取ってくれました。
マットレス部屋の夜は蒸し暑く、寝苦しさがありましたが、文句は言ってはいられません。
何しろ、消防署の心意気ある無料提供なのですから。
寝袋の中で、海が見えた瞬間の
身体が浮き上がるような感動を思い出し
カミーノはテレサの姿になって私たちを助けてくれたのかしら。今日のトルコ料理のディナーも美味しかったわ。アルベルゲも無料だなんて!この町は予想通り、最高~!