37/60カミーノ最高のアルベルゲ・水・電気・トイレ無しのマンハリン
5/22(土)→マンハリン/枕元に手紙とりんご 20.9km/€22 寄付€3
朝早く起きるという約束で、昨日Denにアルベルゲのコインパソコンのゲームを20分、お小遣いの1ユーロでやらせてあげました。
そのせいか、まぁ何とか6時半には起き、荷造りと身支度を素早く済ませることが出来ました。
下のカフェの椅子で、朝のパンをかじりました。
まだ寝ていたクリスチーナの枕元には、Chaiがリンゴとメモ書きの手紙を置いていきました。
「マンハリンへ行く」と書いて。
多分、また会えるよね…。
追いかけてきたオスピタレロ
さあ出発!
今日は山道の20㎞越えです。アルベルゲを出て歩き出しました。
すると、バルのオスピタレロが玄関の外まで追いかけてきました。
「待ってー!」
と私たちに追い付くと、キンダーサプライズ、たまご型のおもちゃが入っているチョコレートをDenとChaiに手渡し
「頑張ってな!」と励ましてくれました。
ムーチョ・グラシアス!
オスピタレロでバルのマスターは、この新しい民間アルベルゲを切り盛りし、いつも忙しく働いていました。私たちと会話する余裕もありませんでした。
私たちは、バルで飲みものしか頼まない、ベッドも2つしか頼まないしで、ちょっと申し訳ないな…、と思っていました。
けれど、追いかけてきて、応援してくれるなんて!
何気なく気にしてくれていたのね。嬉しいわあ!
朝焼けと歩く
朝焼けがキレイでした。
朝日を浴びながら歩くのって気持ちがいいね~!
町を抜けました。
今日も暑くなりそうな気配でした。
道は歩き易く、サクサクと4㎞ほど行きました。
小さな町が見えてきました。
ニャンコがお出迎えです。この町で休憩を取りました。
早速、キンダーサプライズチョコ!
これ、食べたかったの〜!
これ、入ってたよ、ラケット持った人形!
卓球好きのDenにピッタリ!
山道の途中に、松ぼっくりで作られた矢印を発見しました。
こんな、素敵な矢印を作っていく人がいるんだね!
木の枝に吊るされたブランコを発見!
もちろん!
遊んで行きました。
アディダスのスニーカー
ラバナイの町に入りました。
ね、見て!あのおばあちゃん、ママと同じアディダスのスニーカー履いてるよ!
へ?どれどれ。
私は歩速を上げ、おばあちゃんの後ろ2メートルに近付きました。
4つのアディダスがテケテケと動きました。
なんだか妙に親しみを感じました。
うひゃひゃ、同じ。全く同じだ〜!
私は、おばあちゃんのアディダス靴の横に、私のアディダス靴を並べました。そして
「アディダス〜!」と言うと互いに笑い声が起きました。
アッハッハッハ!
それからおばあちゃんは、Denに
「ペケーニョ(おチビさん)、えらいねぇ~」と言い、一緒に歩き出しました。
この町で食料を仕入れておいた方が良さそうです。
おばあちゃんに聞いてみました。
「ドンデ・エスタ・ティエンダ」=「ティエンダ(お店)はどこですか。」
と聞いてみると
「こっちこっち!」
と、お店まで案内してくれました。
歩きながらの途中
「ほら、荷物貸しなさい!」
とDenの荷物を持ってくれました。
Denはいったんは、断ったのですがおばあちゃんの優しい強さには、逆らえませんでした。
計算機なんて要らないよ!
坂を登りきるとティエンダがありました。
次のアルベルゲ、マンハリンは山の中にあるのでした。どうも周りにお店は無さそうでした。
キッチンがあればいいなぁ~。
その時のためにパスタやビスケット、ジュース、チーズ、オレンジ、パンなどを買い込みました。
食料雑貨屋のおじいさんは、計算機なんて使いません。
紙に書いて計算をしていました。
超アナログでした。
品物の値段を全部書き出すと
「ペケーニョ、計算してみろ!」
とメモを逆にして渡されました。
Denが計算し鉛筆で合計を書くと、うんうん!と頷きました。
どうやら合っていたようです。
それから、おもむろに品物を袋に入れてくれました。
スローライフでエコライフ。いつまでも脳が活性化していいわね。認知症予防になるね!
スペイン家庭訪問
お店を出ると、さっきのアディダスのおばあちゃんが、ドアの外で待っていてくれました。
けっこう迷って時間が掛かったのにね..。嬉しい!
そして、なにか言っていました。
「コメコメ=うちで食べていきなさいな。」どうも、そんなことを言っているようでした。
「ついていらっしい!」という、ゼスチャーに続きました。
そこから100mぐらい歩いたところに、おばあちゃんの家がありました。門を入ると中庭がありました。
テーブルとイスに腰掛けるように言われました。
わあ~!地元スペイン人のお宅に入るなんて初めてね!わくわくしちゃう。
3人はキョロキョロしながら待っていると
おばあちゃんは、リンゴジュースとコーラを持ってきてくれました。さらにバナナと砂糖掛けパイ菓子、そして
「1つしかないからペケーニョだけね!」と言ってチョコレートをくれました。
暑さの中を歩いてきた身体に、冷えたジュースはしみ込むように吸収されていきました。
ウ~ン、おいし〜い!
私たちは「ムーチョ・グラシアス!」とお礼を言うと、おばあちゃんは
「ア・リ・ガ・ト・ウ!」と日本語でおちゃめに答えてくれました。
ああ、嬉しいな~、有難いなぁ。
なんてお礼の気持ちを示そうか…。
すると、Denはリュックの底をごそごそと探っていました。
すると、10円玉が出てきました。
これを記念にあげようよ。日本のおみやげに!
クレデンシャルにサインもらおうよ!
うん、二人ともグッド・アイデア!
おばあちゃんは、クレデンシャルに日付けと名前をサインしてくれました。
おばあちゃんからのお願い
そしておばあちゃんは、少し考えて
「お願いがあるのよ。私の名前はアンヘリネス。サンティアゴの大聖堂に着いたら、私の名前を呼んでくださいな。」と言いました。
わかりました。アンヘリネスさんですね。きっと!約束します!
アンヘリネスおばあちゃんは、ニッコリと笑っていました。
別れ際にChaiの顔と両腕に、どっさりと日焼け止めを塗ってくれました。
「お肌、大事にしなくちゃダメよ!」そんなことを言っているようでした。
次にDenの顔、
「はい、じっとしてて!」
そして最後は、私ににじり寄ってきました。
「あなたもね!」
「あ、ハイッ!」
まるでお母さんのように、私の顔にもたっぷりと日焼け止めを塗ってくれたのでした。
そしてDenのあげた10円玉を手にして
「ペケーニョ、大きくなったらまたおいで!」と言い、ハグをしてお別れをしました。
おばあちゃんは、嬉しい、そして優しい時間をプレゼントしてくれました。
ありがとう!アンヘリネスおばあちゃん!名前覚えたよ!
縁があればきっと又会える
おばあちゃんの家の門を出ると
なんと、クリスティーナが目の前にいました。
別々に出発し、20kmぐらいの距離を歩くとなると、再び会えるというのは、なかなか難しいことでした。
クリスティーナは
「ハ〜イ! Chai! Den! リンゴ、朝ごはんに食べたよ。ありがとう〜。」と言いました。
よかった、また会えたね〜。
私たちは、一緒に歩き出しました。
あ~、買い物して、食材が重〜い!
天気が良くて見晴らしばっちり!
これ、プールじゃないよね?
広がる大平原。暑いな~!
ピンクの花、山の景色、きれいだね~!
オタマジャクシが水たまりでちょろちょろしていました。
この暑さで大丈夫なのかしら…。
元気な生き物ばかりではありません。ムクドリの亡骸がありました。
ああ!、どうしたんだろう…。
3人は、思わず手を合わせました。
カミーノで見つけた石
マンハリンの4km手前の村で休みました。
14時でした。素朴で素敵なアルベルゲがあり、空いているのか聞いたところ、
フル=満員ということでした。
まあ、私たちはマンハリンを目指しているのでいいのだけれど。
バルがありました。クリームパイとチップスを食べました。
犬トリオ!
崩れた石壁に、ロバがいました。いつの時代の風景?という感じ…。
建物の裏手のほうは小高い丘がありました。そこに馬がいました。今まで何回も馬を見掛けましたが、ここの馬は、とても美しく綺麗でした。
毛並みがピカピカに光っていました。白い馬と黒茶の馬が、おいしそうに草を食んでいる姿を目の前にし、ハッピーな気持ちになりました。
もっと近付いてみようと歩みを進めると、
あたッ!
軽くつまづきました。
足元を見ると
わあ、水晶?
透き通った大きな石の塊を発見しました。
グレープフルーツ大もありました。
軽く岩にぶち当ててみました。すると小片が欠けて飛びました。その破片を拾いポケットに入れました。
ズボンの左側のポケットに自分で発見した水晶が入ってる!
なんだか、心がウキウキして歩きながら時々ポケットに手を入れ、その小片を確かめながら歩きました。
膝が痛ーい!
山の見晴らしが素敵!
こんな暑いのに、向こうの山は雪をかぶっていました。
石の壊れかけた壁を横目に歩きました。
ダラダラとした下り道を歩いていきました。
膝が痛い〜。
ちょっと、そこ座って!
荷物が重いのかな…。山道で膝にきちゃったかな?
Denの荷物の3分の1ぐらいを、持ってあげることにしました。膝の負担を減らすために。
うわっ重~い、けれど仕方な~い!
Cruz de ferro、鉄の十字架
ついに見つけました!
Cruz de ferro、
鉄の十字架です。
丘に登ろうとした、その時…。
一台の車に呼び止められました。
「こんにちは〜!」
えっ日本語?あ、はい。こんにちは!
「歩いてるんだね~、頑張って!」と励ましの声を掛けてくれました。
ありがとうございま~す!
Cruz de ferro、鉄の十字架の丘を登り始めました。
ここのことだわ、以前ベイサンが言っていたのは。
「すべての古いもの、心の荷物がなくなって、新しく生まれ変わる」という言い伝えの地でした。
柱には、様々なものがくくりつけられていました。
私は、今までしていたトルコ石が付いたブレスレットを、十字架の柱に結びつけました。自分の国の石は持って来なかったけれど、石には違いない…よね。
Chaiは髪飾り、Denは神社の御守りを結び付けました。
十字架のてっぺんに、ちょうど太陽が掛かりました。
丘から見下ろすと
いま、カミーノに来ているんだ!
という気持ちが胸に迫ってきました。
DenもChaiもクリスティーナもそれぞれに何か、
生まれ変わりという言葉の意味を感じていました。小さな丘の柱のぐるりを歩き、てっぺんを見上げ、お互いに写真を撮り合いました。
カミーノ日本人バスツアー
すると、
「ちょっとそこ、どいてくださる?」
ええっ?
日本人のバスツアーでした。
「まあ、巡礼しているの?
学校は?いつから?
どこの出身?クリスチャン?」
ChaiもDenも私も質問攻めに合いました。
そして
「おーい、本当に歩いている人がいたよ。しかも小学生と中学生!学校休んでるんだってさ〜‼︎」とおじさんが仲間を呼び寄せました。
クリスティーナはびっくりして
「先に行くね…。マンハリンに行くよ。」と出発してしまいました。
私たちは、それからバスツアーの皆さんと記念撮影大会になりました。順番にと10組以上と写真を撮る事になりました。
「ハイチーズ。ハイチーズ。ハイチーズ… 」
やっと終わりました。
ツアーはおおむね中高年の方々でした。私たちが、孫や娘と被るのかもしれません。皆、お煎餅やカリカリ梅、飴を手に手に持って来ては
「頑張ってね!」と応援してくれました。
わあ、有難い、嬉しいです~!頑張ります~!
最後は、ツアー会社のおじさんが
「巡礼のお邪魔をして申し訳なかったですね、頑張ってください!」と恐縮しながら言ってくれました。
いえいえ、いろいろお土産ありがとうございました。日本の味、久しぶりなので子どもたちも喜びます!
カミーノを歩けるラッキー
嵐のような時間が過ぎ去り、私たちはまた、石ころゴロゴロの山道を歩き出しました。リュックの隙間に、たくさんのお菓子を詰め込みました。
しかし、日本人てやはり豊かなんだね。こんな山奥に、あんな観光バスで来ることが出来るなんてね。
そういえば、昨日もアストルガのガウディの教会前で、日本人のバスツアー見掛けたよね。
実際に今まで一か月以上この巡礼路を歩いて来て、遭遇したのはスペイン人の地元バスツアーと日本人のバスツアーの2台でした。
日本人の経済力と好奇心を感じました。(これは2010年の事です。現在は中国のバスツアーにとって変わっているかもしれません。)
Cruz de ferro、鉄の十字架で、ほんの5分到着が遅れたら、自分たちだけで静かに、丘で写真を撮り、佇むことはできなかったことでしょう。
タイミングの神様に感謝しました。
ここをこうして歩いていることは、ラッキーなのかもね。
みんなに、うらやましがられちゃったね!
そうね、楽なことばかりじゃない、大変なこともいっぱいあるけれど、ここを歩くということは、皆んななかなか出来ないことなんだよ。仕事が休めなかったり、お金が集められなかったり、足が悪かったり、アンヘリネスおばあちゃんのように、歳を取って体力に自信が無かったりね….。
わあ、今日はなんて青空!雪山が美しいなぁ~!
この道を歩いていることの貴重さを噛み締めているようでした。
もらったアメ、食べちゃおう!っと。
ママ~、遅いよ~!
ハーイ!
5/22、222km マンハリン着
山道をしばらく行くと、古い石造り、色とりどりの旗が賑やかにはためいている建物を発見しました。
近づくと『MANJARIN/マンハリン』という文字がありました。
サンティアゴまであと222kmと書いてありました。
お菓子と飲み物をごちそうしてくれたアンヘリネスおばあちゃんは、マンハリンへ行く予定ですと言うと
「変人がいて大変不便、行くのやめなさいよ!」と言いました。
しかし、クリスティーナは
「マンハリンはベスト・オブ・カミーノだと聞いたから、私は行くわ!」と言っていました。
どっちが本当なのだろう??
クリスティーナの情報を頼りに、入ってみようよ!
そうね、自分たちで確かめよう!
レセプションは、お土産屋さんのような小屋でした。
クレデンシャルにスタンプをもらいました。オスタピレロが何か書き込んでいて、少し時間がかかりました。返されたクレデンシャルを見ると…
日付の横に「天使」と書いてありました。 あ~ん、泣ける、頑張って漢字を書いてくれた~!
それから「ついておいで〜!」と案内されました。
山道を2、3分歩いた所に、別の小屋がありました。
ルイスという大柄で優しそうなおじさんが、そこのオスピタレロ、世話人でした。小屋の入り口のソファに座り、何人かがくつろいでいました。
そこにクリスティーナがいました。
あ、クリスティーナ‼︎
私たちは、お互いニッコリ微笑みました。
カミーノでインドのガネーシャ
部屋は2階でした。梯子で上がるようでした。
2段ベッドではなく、普通の厚いマットレスのベッドでした。落下の心配がなくホッとしました。
枕元にインドのお香とろうそくがありました。
更に壁には、インドのガネーシャの絵が貼ってありました。
へー、ここはカトリックじゃないのかしら…?
ちょうどその時「お茶が入ったよー!」と声が掛かりました
私にはカフェレチェ、ChaiとDenにはコラカオをいれてくれました。チョコとクッキーも添えてありました。
わ〜い、嬉しいなぁ、いっぱい食べちゃおっと!
ルイスが声を掛けてくれました。
「お茶のお代わりはいかがかな~?」
入口の但し書き
ふと見ると、入口に但し書きがありました。
「水道はない。シャワーもない。電気もない。それがイヤな人はサンチャゴまで進んでください。」と。どうする?みんな平気~?
大丈夫!小さい犬もいるし。名前はチースピーだって。かわいい子〜‼︎
すぐに、お腹さすって〜と転げ出す、人懐こいワンコがいました。
カミーノ絶叫シャワー
ルイスが
「シャワーはこっちだよ。」と声を掛け案内してくれました。
へ~、一応あるんだ?別のところ⁇
ルイスとチースピーが道の先を行きました。
山道を5分ほど歩くと道が開け、草原になりました。その奥に水の音がしました。
そこを下っていくと、山の崖の壁から雨どいが突き出ていました。
そこから、水が絶えずジャバジャバと流れ出ていました。足元は、水たまりでした。
ルイスがお手本を見せてくれました。
板の上に立ち、服のまま
ジャバジャババーッ!
と脳天から水を浴びました。
その時、ルイスは
「うわあ~!」と大声で叫びました。
みんな目を丸くしてビックリしました。
次は、Denが服を脱いで挑戦しました。
ぎゃあああ~っ!
なんと、雪解け水だそうです。今日みたいな暑い日差しの下でも、身を切るように恐ろしく冷たいのでした。
クリスティーナも、私に見張りを頼み、冷水をものともせずザバザバ~ッと浴びていました。
けれどやはり
「オーマイ・ゴ~ッド‼︎」と叫び声をあげました。
まるで滝打ちの修行みたいで笑いました。
そして うわあああ〜!
Chaiも無事、叫びながらさっぱりとしてきました。
私は、やめとこうかな…。冷え症だしね…。
皆んなが私に勧めてきました。
「シャワー浴びないの?」
おなかに全財産を巻いているし…、遠慮しとくわ〜!
するとみんなで
シャワー浴びないのおお~?
あっ、ハイッ~!
うぎゃああ~!
もう、冷たくて絶叫!!
けれど、そのあと爽快!身体中がリフレッシュしたようでした。
そして、再びDenは裸になり、水浴びを始めました。
冷水をものともせず
ギャヒ~、わっはっは~!
私は野原に寝転り、日誌を書くことにしました。
黄色い小さな花がそこらじゅうに咲いていました。日差しがポカポカと暖かい素敵な時間を過ごしました。
トイレは屋外アトラクション
トイレはどうしたらいいの?
すると
「どこでも!」と言うのでした。
へ?なるほど!この山道の好きなところに…か。了解!
スパイ大作戦のようにお互いを見張りに立て、用を足しました。
「あ、人が来る!」
「え〜!ストップって言って〜‼︎」
「わかった。ストップ!」
「もう大丈夫!ミッション終了。」
「ハ〜イ。OK!OK!」といった具合でした。
アルベルゲ小屋まで山道を戻る途中、私たちの歩く音に
「Stop! Wait Wait!!」
(止まって、待って!!)という切迫した叫び声が聞こえました。
「OK!」と答え、そこに動かないで待っていてあげました。
お互い様でした。
歩きながら、今度は雪解け水のシャワー場から叫び声が聞こえてきました。
「うぎゃ~!」
さっき、すれ違った男の人だ…。
こんな風に、時々誰かの叫び声が聞こえて来るのでした。
その度に、プフッ!と笑いながら小屋に戻りました。
なんだか、アトラクションのようなシャワーに続く山道でした。
長い剣の舞・十字のクロスミサ
ミサがあるというにで、最初のレセプションのお土産屋さんのような小屋へ行きました。
そこには、白地に赤い十字のクロスの衣装をまとったおじさんたちが居ました。
長い剣を持ち、舞のようなパフォーマンスをしました。
合間に、私たちも祈りました。
カトリックの枝分かれした宗派なのかしら…。
それはミサというよりは、独特の儀式のようでした。
猫も飛び入る素朴な食事
そうこうしているうちに、お腹が減ってきました。
ここはディナーがでるらしいよ。
わおっ、寄付なのにね‼︎
マカロニ入り野菜サラダ、もちもちのデカ丸パン。ありがた〜い!!
テーブルに付いた人々は20人足らずでした。皆んな気さくで、食事の時間は楽しくワイワイと賑やかに過ぎていきました。
素朴な食事、それが巡礼者にとって、一番!なのでした。
明日を歩くための最高のディナーでした。
時々猫が飛び入りし、まだまだ!と叱られていました。
食事の後、やっと猫たちの出番です。残り物を片付けに寄ってきました。
サラダの残り、トマトとレタスを競うようにしてハグハグと食べていました。
猫ってトマトも食べるんだね‼︎
わあ!猫、抱いてみようかナ…。
Denは、おっかなびっくり猫を抱えてみました。
うれしドキドキ~!
かわいい…。
Denは、日本で友だちが飼っている猫を見るだけの経験しかありませんでした。
しばらく、猫を追いかけて遊びました。
いいな、Denは。わたしも猫に触りたいけど、目が腫れたらヤダなぁ。やめとく…。
Chaiは、猫アレルギーでした。瞼がパンパンに腫れて目が開かなくなったことがあったので、用心して触りませんでした。
そして、夜8時。
まだ、日は暮れませんでした。
Denはルイスや他のお兄さんたちとサッカーをして遊びました。
Chaiもサッカーをしたり、女性のオスピタレラや他の巡礼者たちとおしゃべりをしていました。
外を散歩する人、本を読んでいる人、日誌を書く人….。
皆、思い思いに長い午後を過ごしていました。
マンハリンはクリスマスみたい
ルイスは9時半に、子どもたちにホットミルクを入れてくれました。
私はカモミールティーを飲みました。
外はようやく薄暗くなってきました。マンハリンは本当に電気が無いのでした。
ロウソクを灯す食卓でした。
わあ!クリスマスみたいだね。
2階に上がり枕元のロウソクを点け、明日の支度を終えベッドに横になりました。
寝袋に入ったChaiは
ね、ここ、最高のアルベルゲだと思う!
Denも、ここが一番好き!
うん!ここって自由よね。宗教も何もかもね。
夜10時、陽が沈みました。
星降るトイレの残念…
真夜中
トイレ~。
サンダルを履き外へ出ました。
あ~あ、熟睡してたんだけどね…。
うわあ!すごいよ、すごい!! ここも星だらけだよ〜‼︎ わ~、本当に星が降ってくるみたいね!
夜中のトイレツアーは、実は素敵な天体観測タイムなのでした。
外の壁にランタンと汲み置きタンクの水がありました。
ランタンを点けました。
Denは真夜中に「大」だというのでした。
野っぱらトイレは案外、場所探しが大変でした。
夜とはいえ朝になっった時、皆さんの目にとまる所はダメ!と思うと、少し離れた所へ行きました。
小屋の裏の斜面へと降りました。
足元はちょっとガタガタしていましたが、人目に付かず、ランタンの明かりがかろうじて届く所でした。
斜面をヨタヨタとDenが降りていきました。
私は後ろを向いて待っていました。
終わった~?
終わったよ〜!
ああ〜っ‼︎
用を足したあと、ヨロけてしまい、自分の「大」の上にしりもちを付いてしまいました。
ああ~っ!なんてこと~!!!! 足場が悪かったのね…. ざんねーん。
おもむろに半ズボンを脱いでもらい、汲み置きタンクの水でごしごしと洗いました。それを干してから、星降る中をしおしおと部屋へ戻りました。
誰にも見つかってないよね?
うん、大丈夫だから!
Denは、パンツ姿で寝袋に入ると安心したように、すぐに寝息が聞こえてきました。
無いことを楽しむマインド!
私は、1階からこぼれてくるろうそくの明かりで、壁のガネーシャを見ながらウトウトしていました。
入口の但し書きを思い出しました。
「水道はない。シャワーもない。電気もない。それがイヤな人はどうぞ、サンチャゴまで進んでください。」と。
こんなに不便なのに、居心地がいいって不思議だな…。
あの但し書きを見て
この不便さをいとわない人だけがここにいるからかな。
雪解け水の絶叫シャワーですら、誰一人文句を言う人は居ませんでした。
なんと、宗教もこだわりがありませんでした。
カトリック、長い剣教?ガネーシャ、ヒンディ?...
自由でした。
質素な食事とベッドも、私たちには充分でした。
そして、何よりもオスピタレロ、オスピタレラが、
彼ら自身、楽しみながらのもてなしをしてくれました。
そうそう、更にまた
何も無いと分かっているから、
カメラの充電コンセントを探したり
それが盗まれないかを心配したり
アルベルゲ備え付けのコインパソコンをやる・やらないで揉めたり
洗濯のできる所、冷蔵庫、キッチンを探したり
町に出て食料の調達しなくては…といった
「しなくちゃいけないこと」が
マンハリンは皆無でした。
無いことを楽しむマインド
今日は、そんな体験をした日でした。
マンハリンは何も無いけど、人間らしい時間が有ったナ。居心地がいいって、一見、設備がそうしてくれそうだけれど、そうとは限らないんだ!
その裏付けは、寝る前のChaiとDen、二人の言葉からも分かりました。