56/60大西洋フィステラ巡礼証明書、カミーノはいつも思いやり
6/10(木)→フィステラ 消防署内で朝食 14km/€30 公営 親切オスピタレラ @5×2人分
昨日は、32㎞とがんばったので、今日は朝寝坊をすることにしました。
他の巡礼者たちは、みんな出発していました。Koreaのお姉さんテレサも、8時には行ってしまいました。
部屋でサクランボ、チーズ、パンの朝食をとりました。ソファの上に、置き去りになっていたファンタもいただくことにしました。
外の通路のヒモに、干しておいた洗濯物を取り込みに行きました。
そこは通り道だったようで、ヒモは取り払われ、靴下やシャツ、パンツが、近くの椅子に申し訳なさそうに置かれていました。
あら~、消防士さんの通り道に靴下、パンツ…、悪かったわぁ。すいませ~ん。
消防署を出発
9時に消防署を出発しました。
消防士さんにご挨拶をすると
「がんばれよ!」とエールを送ってくれました。
道なりに歩き出したのですが…
どこなの~?黄色い矢印が見つからないわ~。
おまけに、雨が降ってきました。慌てて雨支度、レインウエアを着込みました。
結構、強く降って来たね~。
スペインでもアジサイは同じだね。雨が大好き!
一人で買い物する頼もしさ
軒下でワンコがしっぽを振っていました。
遊びたいけど、雨がヤダわんっわんっ!
途中、ディア・スーパーマーケットを見つけました。
おやつのチョコビスケットを買っていこうよ!
それは、ChaiとDenの一番お気に入りでした。
しかし、お店に入るにも、このザーザ降りの雨の中、私とChaiは雨カッパのポンチョを脱がないといけません。それは、なかなか面倒なことでした。
裾がめくれないように3か所留めた洗濯バサミを外し、ビショビショのポンチョを脱いでバックパックを降ろすのでした。
また、買い物をしたあとは、バックパックを背負い、ビショ濡れのポンチョを着てから、洗濯ばさみで再び裾を留めるのでした。
その点、Denはレインウェアの上下を着ていました。そのまま、バックパックを降ろし、水滴を払いさえすれば、お店に入れるのでした。
Den、お願い~。待ってるから買ってきて〜。 えぇっ~!、Denが?一人で?
だってポンチョ、脱ぐの大変~!
わかったよ~!
5分ぐらいして
Denは、ディアビスケットを手にして戻ってきました。
中で、ちょっと迷ったけど、パンの近くだった。
Den ナ~イス! サンキュ~!!
ただビスケットを買ってくる、というだけのことなのですが
スペインの言葉の通じない、初めて入る大きなスーパーマーケットで、一人で品物を探し出して買ってくるということは、なかなかの冒険でした。
Denもこの国に慣れてきたというか、成長したというか! イイね~。
私の中で、ささやかな感動がありました。Denも雨の中、足取りも軽く嬉しそう歩いていました。
自分で道を探す頼もしさ
セーの町の教会を通りました。
古いけれど、海辺らしい屋根の飾りがステキな教会でした。
しかし私たちは、教会付近で完全に迷子になってしまいました。行ったり来たりして、黄色い矢印を探しました。
すると3人で、立ち話をしているおばちゃんたちがいました。
道を聞くと「あっちよ、あっち~。」
と、皆大きな声とゼスチャーで方向を指してくれました。
グラシアス!
分かる所まで道を戻ろうとするのですが、途中でおばちゃんたちが
「違う、ちがう!あっち~!!」と大声で言われ、ブロックされてしまうのでした。
は~い!グラシアス!!
すると、Chaiが小走りに他の通行人を呼び止め、道を聞き始めました。
ドンデ エスタ カミーノ?
な~んだ、ここ入るのかぁ!
こりゃ、わからないわ!この路地の入口、何度も通り過ぎたね~。
迷子になりかけ、とにかく何とかしなきゃ!と、ついに道を見つけ出したChaiの姿に、目が細まる思いがしました。
巡礼が始まったころ、私があれこれ聞いて回る後ろで、臆していたChaiの姿を思い出しました。 ずいぶんと、たくましくなったわぁ。
ペケーニョ攻撃
山道に入ったとたん、雨が上がりました。
木々の途切れた先に、セーの町が広がりました。
また、道は細い路地になりました。
アスファルトの道に出ました。雨はあがりました。
この見慣れたホタテマークの道標、あといくつ見られるのだろう…?
ワンコがあいさつに来ました。
ギャハハ!かじらないでよ。
何、なに?おいらも入れて~、ワンッ!
しばらくの間、左手に大西洋を見ながら歩きました。
後ろから賑やかな声がしました。4人組のおばちゃんグループでした。
フィステラを目指して歩くショートトリップでした。荷物が小さいのでわかりました。ずっとおしゃべりをしながら楽しそうに歩いていました。
私たちと4、5回にわたる抜きつ抜かれつとなっていました。
一人のおばちゃんが、ひょうきんでとてもフレンドリーでした。
Denを見ると「ペケーニョ!チャンピョ~ン!」などと言い、必ず頭をポカっ!と叩いていくのでした。
まわりは見ていて楽しいのですが、当のDenはそれがたまらなく腹立たしいのでした。
もおおっ!あのおばちゃんヤダ~!!
まあまあ、かわいいんだからイジられることもあるのよ~。
青空が広がってきました。
左側に海があるのは分かっているのだけど、なかなか近くに寄れないのでした。
オレンジ通信「プ!」
すぐそばに会いたい人がいるのに、なかなか会えない、そんなストレスを感じながら海岸沿いの道をいきました。
はやく、海の水に足つけたいナ。
上り、下り、アップダウンをいくつか越えると、大きく海が見渡せる場所に出ました。
「やっほ~!大西洋~!」と思わず叫びました。
わは~!嬉しい~!ついに来たね!!
うふふ!ひと休みしようか。
私は、バックパックからオレンジを取り出し、ChaiとDenに一つずつ渡しました。
すると二人は、妙なことをしました。
オレンジのヘタとヘタをコツンと合わせ
「プ!」
と同時に言いました。
それはオレンジを食べる前の当然の儀式といった感じでした。
なにそれ? 「オレンジ通信」だよ。こうするとオレンジが甘くなるの。 ほんとかな〜?? それから、両手でコロコロしてから皮をむくと、さらに甘くなるんだよ。 そうなの??不思議ね…。
まあ、面白いからいいか…。
二人は、アラン先生に教わったオレンジの皮のむき方を始めました。
ナイフの使い方も上手になりました。
Denはサンティアゴの街で、巡礼の記念に買った丈夫なナイフを上手に使いこなしていました。オレンジは水分補給にもってこいでした。
日焼け止めクリーム
さっきの雨がうそのようでした。晴れてきたとなると、日焼け止めクリームを塗っておかないといけません。スペインの日差しは強烈でした。
さて、疲れが取れたね。日焼け止め塗って出発~!
これは、スペインのスーパーマーケットで買った日焼け止めでした。(左側)
ショルダーバッグに入れ、いつでも使えるように持ち歩いていました。
(ちなみに、右側のオレンジ色のボトルはシャンプーです。カミーノではこのシャンプーひとつで、頭、身体、そして服の洗濯まで使いました。石鹸類を数多く持つと荷物が重くなるのです!)
ChaiとDenの手のひらに、それぞれ日焼け止めを絞り、私自身も顔や手に塗り込みました。
ママ~、ヘンだよ~!
ギャハハハ!ほんとだ。
ええ?なに何が?なによ?
日本から小さな鏡を持って来ていたのですが、バックパックの洗面用具に入れてありました。わざわざ出すのも面倒でした。
それで、たいていはお互いの顔を見て「歯に何か付いてるよ。」とか「目やにが付いてるよ。」などと伝え合っていました。
じゃ、写真を撮るから見て!
Chaiが写真を撮ってくれました。そして、デジカメのファインダーをのぞきました。
あ…。日焼け止めが瞼にたまり、変な目になってるってことねっ!
それから大西洋は、ちらちらと顔を出すようになりました。
海、きれいだね。透き通ってる!
大西洋の砂浜を歩く
再び林に囲まれてた山道になりました。
うっそうとした木が途切れました。
不意に目の前に、砂浜がふわあっ!と広がりました。
ああ~、やっと砂浜だ~!
私たちは、くたびれた靴を脱ぎました。
それから裸足で、砂浜を歩いてみました。
水が冷たい!気持ちいい~! わははは!膝の下までぬれちゃった~!
目の前の大西洋は、五感に迫ってきました。しばらく裸足で歩きまわり砂の感触を楽しみました。
途中クロックスに履き替え、海外通りの巡礼路に戻りました。
海沿いの道を幼稚園のちびっ子たち20人ぐらいが、お散歩をしていました。その中に紛れ一緒に歩きました。
私たちは、大西洋に来た嬉しさがこみあげてきて、笑い浮かれながら歩いていました。
ちょうどよい道連れでした。
海だ~大西洋だ!
うひゃひゃ~!
やっほ~、僕よりペケーニョだね!
みんな、お昼ご飯の時間かな?
フィステラの巡礼証明書
フィステラの街に入りました。
フィステラは、お店が多く海辺の明るい雰囲気を感じました。
しばらく歩いていくと、公営のアルベルゲがありました。
入ると、費用は一人5ユーロでした。
ここの女性のオスピタレラは、とても親切でした。
「あら、小学生?この子の分はいらないわよ。」と宿代を2人分におまけしてくれました。
ベッドチケットは、3人分を渡してくれました。
そのあと、一人分のチケット代5ユーロを、自分のお財布から出して、レジに入れてくれたのでした。
私は、そのことに気が付きませんでした。
そのちょっとした瞬間を、Chaiは見ていました。
オスピタレラ自身も、お子さんが居るらしく、その後チラッと子どもがふたり来ているのを見掛けました。
クレデンシャルを見せスタンプを押してもらうと、オスタピレラは巡礼証明書を発行してくれました。
フィステラで手にした巡礼証明書。
わあ、うれしいなぁ!
絵がステキ~!サンティアゴの巡礼証明書とデザインが全然違いうね、
ちなみにこれは、サンティアゴ・デ・コンポステラの巡礼事務所で発行された巡礼証明書です。
懐かしい顔に再会
バックパックをほどき、シャワーを浴び、洗濯を済ませました。
思いがけず、アルベルゲの玄関で懐かしい顔に再会しました。
ホセ!
イニゴ!
ChaiとDenは2人の姿を見るなり、飛びついてハグをしました。
また会えるなんて!!
ケニアは?
「もちろん、いるさ!」とイニゴが答え、一緒に写真を撮ってくれました。
ホセに会うのはパラス・デ・レイで別れて8日ぶり、
イニゴに会うのはアストルガで別れて20日ぶりでした。犬のケニアも元気そうでした。
カミーノ が終わったあと、ホセの住むメノルカ島へ行く約束をしました。
赤ワイン尻もち事件
雨があがり青空が見えていたのですが、いきなり激しいスコールが降りました。けたたましい雨音で、いっきに道路がびしょ濡れになりました。
しかし、それも束の間、気が付けばピタリと止んでいました。
さて、夕食の買い出しに行こうか。
スーパーマーケットは、アルベルゲの4、5軒先にありました。
肉と野菜、果物のほか、ホセやイニゴも飲むかもしれないと思い、少し良い赤ワインのボトルを買いました。いつもの巡礼路では、紙パックの赤ワインばかりを買っていたのでした。
レジでお金を払い、買った品々をビニール袋に入れて歩き出すと
Denが持つよ!
あら、けっこう重いよ。だいじょうぶ? うん、大丈夫!
Denを先頭にして、Chaiと私はニコニコしながら後ろに続きました。
すぐにアルベルゲに帰りつき、玄関に入ったとたん
わあっ!
ガッシャーン‼︎
Denは勢いよく、床に尻もちをついて転んでしまいました。
さっきのスコールでか床が濡れ、サンダルの底が滑ったのでした。
袋は床に叩きつけられ破け、赤ワインのボトルが割れました。赤い液体が床にみるみる広がりました。割れたガラスのかけらも飛び散っていました。
いま、まさにたどり着いた7~8人の巡礼者が並んでいる目の前でした。
Denは ごめんなさい、ごめんなさい~。
ビンの割れた音にびっくり…。
血のように流れ出たした赤ワインが恐ろしい感じ…。
床に打ったおしりが痛み…。
みんなの目の前で恥ずかしく….。
せっかくのいいワインを無駄にして申し訳ない…。
いろんなことが、
どうしょうもなくDenを悲しくさせました。
すると
その場に居合わせた巡礼者たちが
It’s OK! (平気さ~)
Don’t cry! (泣かないでいいよ!)
Está bien! (大丈夫だよ!)
と、口々に声を掛けてくれました。
Chaiと私は、手伝ってくれた周りの人と一緒にガラスのかけらを集めました。 Denのせいじゃないよ。さっきの雨で床が濡れいて滑りやすかったんだね。ママでも転んでいたよ。持ってくれるって言ってくれて嬉しかったよ~。ありがとう!
うっうう、うん…。
お手伝いしたのに、失敗して怒られる...。
子どもの頃の悲しい思い出は、そういったシチュエーションでした。悲しくて悔しくて、とてもやり場のない気持ちでした。
そんなシーンが目の前で起きたなら、気持ちを汲み取ってやらねば…と思いました。
自分が子どもの頃嫌だったことは、しないようにしたいと思うのでした。
まわりの皆の協力もあり、床はササッ〜と片付きました。
Denの表情も、次第に明るくなっていきました。
キッチンで和食ディナー
キッチンで夕ご飯の支度を始めました。買ってきたものは、牛肉、玉ねぎ、茄子、マッシュルームでした。
肉と野菜を炒めてから、醤油と砂糖を加えました。
すき焼き風の味付けになりました。 おいし〜い!
マカロニがかわいいね!
3人は、バクバク食べてお腹いっぱいになりました。
道の途中で、Denの頭をボンボンと叩いたおばちゃんも、同じアルベルゲでした。
ここでも
「ほら、ペケーニョ!(ちび助)、食べカスが付いてるわよ!」と構ってくれるのでした。
チョコクッキーを焼く
6時過ぎには、夕ご飯を食べ終わりました。
スペインの夕暮れには、まだまだ時間がありました。9時半ぐらいまで、空は明るいのでした。
街を散歩し、再びスーパーマーケットへ行きました。
Chaiは、キッチンにあるオーブンが使えることをチェックしていました。使っていい調味料に砂糖がありました。
スーパーマーケットで小麦粉、玉子、バター、チョコレート、ピーナツを買いました。
アルベルゲに戻ると、すぐにキッチンへ向かい クッキーを作るね!
Chaiは料理好きで、お菓子作りなどは、カンで材料を配合し生地を作ることができました。
しばらくすると、オーブンからクッキーの焼けるバターと小麦粉の甘い香りが流れてきました。
ウーン、いいにおい!
何を作ってるの~?
キッチンの横を行き来する巡礼者たちは、みんなのぞき込んでいきました。
クッキーを作っているのです~!
わ~お!食べたいナ~!!!!!
みんな陽気に、声を掛けていきました。
そろそろ出来たころかな?と思い 張り切って作ってますね〜!
このクッキーね、オスピタレラさんにあげたいと思うの。自腹を切ってDenのベッド代を出してくれたんだよ!
クッキーが焼き上がりました。真っ先にオスピタレラさんに
「どうぞ。食べてくださ~い!」と差し入れをしました。
オスピタレラさんは、ワオ!と驚いてニコニコ笑いながら受け取ってくれました。
それから クッキー、どうぞ〜!
オオ、サンキュー‼︎
ヤミ〜!
無償の思いやり
時間は夜の8時半でした。
焼き上がったクッキーを食べていた時、
突然、目の前にテレサが現れました。 テレサ!会えた‼︎ テレサにも、食べてもらいたかったんだ‼︎
「どうぞ〜!」とクッキーを渡しました。
テレサのほうもビックリしたように眼を丸くして、Chaiの作ったクッキーを手にしながら言いました。
「いま、教会へ行ってきました。ちょうど、あなたたち家族のことを、祈ってきたところでした!」と言いました。 ええ~っ!なんて嬉しい…。いつも助けてもらってばかりだったのよ。私たちのために祈ってくれるなんて…。
クッキーをもらったからといって、お世辞を言うようなテレサではありませんでした。テレサはクリスチャンで、いつでも謙虚で誠実でした。
私たち家族のために祈る…、
その考えにとても驚きました。
たいてい祈る時って...
神社で、パンパンと手を叩き手を合わせ目を閉じる。
お墓の前で、お線香をあげ手を合わせ目を閉じる。
今まで、通り過ぎて来たいくつものカトリック教会の祭壇の前で、手を組み目を閉じる。そして…
自分と家族の健康、成功、その時どきに心に掛かる問題の解決や、うまくいったことの感謝などを心に浮かべ祈るのでした。
それらの祈りは、自分に直結していることばかりでした。
ここ、カミーノ で出会った巡礼者は約束でもしない限り、アルベルゲに泊まるタイミングが違えば、二度と会えないのでした。
テレサは多分もう会えない私たちのために祈ってくれていたのでした。
Chaiの念の強さ?で、ナイスタイミングでテレサに再会し、クッキーをあげることが出来ました。そしてたまたま、テレサの祈りの言葉を知ることができました。
思いがけず知った、その無償の思いやりに圧倒されたのでした。
その後、Chaiとテレサはあれこれおしゃべりをしていました。そして最後に
「巡礼が終わってしまうなんて、本当に淋しいよね~。」と頷きあっていました。
そう、カミーノは見返りなんか気にしない思いやりがいっぱいだった…。それが終わってしまうことが淋しいわ…。
今日だけでも
オスピタレラのお財布、ワインの瓶の破片を片付けてくれた巡礼者たち、テレサの祈り…。
たくさんの思いやりに出会っていたのでした。
真夜中にママはどこ?
外も陽が落ち、ベッドに落ち着くことにしました。
ここのベッドは、一部屋に2段ベッドが20台ほど並んでいました。
ChaiとDenは上の段、私がひとりだけ下の段でした。ここは柵があるので落下の心配がなく、安心できました。
夜10時に消灯すると、部屋の中は真っ暗になりました。鼻をつままれても、まったくわからないぐらいの暗さでした。
今日は、夕方から料理を作り、再びスーパーマーケット探索、ワイン事件、クッキー作りと、楽しく忙しく過ごしました。
日誌を書く時間もなく、あっという間にアルベルゲの消灯時間になってしまいました。
何がなんでも、大西洋の砂浜が広がった瞬間、波の感触を、今日のうちにノートに書き付けておきたいわ!
いったん、ChaiとDenと同時に、二段ベッドの寝袋に入り眠りました。
夜中、トイレに起きたとき、洗面の薄暗い電気の下でノートを広げました。
思い浮かぶことを、何でもかんでも忘れないようにと、大急ぎのなぐり書きで、ノートに書きつけました。
お、誰か来た気配?
邪魔にならないように、隅に寄りました。
ゆっくりと洗面のドアが開き、のぞくように ママ~?
Denでした。
いま、午前2時でした。
よく真っ暗闇の中、ベッドから降りてここまで来れたね…。
ママが居ないから、探しに来たんだよ。はやく戻って寝ようよ〜。 うん、もう少しで今日のこと、書き終わるから。ちょっとだけ待ってて。ママは、日誌に書き留めておかないと、すぐに忘れちゃうんだ。だけど、こうやって、旅の一日を書いておくとね、何十年経っても、その言葉を読むと、そのまわりに起きたこと、会った人、泊まった宿のことなんかが、びっくりするほど鮮やかに思い出すことができるの。このノートは宝物になるんだよ。
Denは、聞きながら洗面の台に寄りかかり、立ったまま半分眠っていました。
それを見て、日誌に書く項目が増えました。
夜中、Denが目を覚まし、ママをが居ない!と探しに来てくれた。こんなこと、この先いつまであるのだろうか…。
Denの膝がガクッ!と軽く折れそうになった時、私は日誌を書き終えました。
お待たせ!戻って寝よう。
寝息といびきが真っ盛りの、真っ暗な部屋に入りました。
私は小さなペンライトで足元を照らしながら、ベッドへとたどり着きました。
Denを2段ベッドのはしごに押し上げました。ペンライトの灯りで隣でChaiがスースー眠っているのが見えました。横になったDenを見て
「おやすみ~。」
と、ひそひそ声でいいました。私も寝袋に入り横になりました。