31/60 サンティアゴ巡礼「国家」歌う、映画は万国共通語!また卓球
5/16(日)→レオン 一緒に歩いてもいいかい?
20.3km/€18 公営 古い修道院 寄付€3
マンシージャのアルベルゲのキッチンは、居心地が良すぎ、朝ごはんの時間をのんびりし過ぎてしまいました。もう、8時半でした。慌てて支度をしていると、ベイサンがまだ、玄関にいました。
ベイサンは私たちを見るなり
「一緒に歩いていいかな?」
と声を掛けてくれました。
あら、嬉しいお言葉! もちろん!
ダメ! えっ?Denなにっ??
僕たちはオシッコ休憩が多いんだから!
するとベイサンは笑いながら言いました。
「僕もしょっちゅうピーピー(オシッコ)だよ。」 あはは!それなら一緒に歩けるね。
ベイサンという名前はフランス語読みで、英語読みだとビンセントと言うのだそうです。
ベイサンと一緒に歩き出しました。
宗教はなに?
「Kumi3はカトリック?」とベイサンに聞かれました。
ううん、違うの。
「僕もだよ。巡礼に来てるけれど、カトリックじゃないんだ。じゃ、Kumi3は仏教徒なの?」 う~ん、まあ、そうね~。時々、母のお墓参りは仏教徒になって祈り、お正月は神道になって祈り、時々クリスチャンのようにクリスマスを祝うみたいな。日本はそんな感じの人、多いのよ。 お寺にも神社にも行くよ。
ベイサンは
「へえ~...。」
果たして、ベイサンはこの説明を理解したかしら…。きっと外国の人は、日本人の季節行事の中に宗教が組み込まれているような生活を、不思議に感じることでしょう。
時々、英語でChaiが言い換えたり、補足したりして、おしゃべりは続きました。
輪廻転生あると思う?
ベイサンは
「Kumi3は輪廻転生の考えってどう思う?」と言いました。
そうね、私は、犬やカエルに生まれ変わるっていう輪廻転生のイメージは考え付かないなけれど、人の魂が、生まれて死んで、その魂がどこかの時代で再び生まれて来る、その繰り返しっていうのパターンは、有ると思うナ。
ベイサンは
「つまり、前世があるってこと?」と言いました。
カミーノに来る直前に、そういう本を読んだの。『ソウルメイト』(ブライアン.L.ワイス著)アメリカの心理療法家のワイズ医師が、前世らしき記憶を語り出すクライアントの症例をあげているの。それを読むと、そのクライアントの言葉は作り話には思えないな~って思ったの。
「それは、どういうことなの?」
例えば、前世で洪水で溺れ死んだとすると、いまの人生で何故か水恐怖症になっていたりするんだって。それを癒すセラピーを前世療法というんだって。
「へえ~、面白いね!」と答えました。
日本人の心
ベイサンは言いました。
「全てのものに魂があると思う?」
それは、そこの石や木にってこと?
「うん、僕はそう思うんだよ。」とベイサンは答えました。
あのコウノトリはもちろん、巣、レンガの壁、屋根の瓦、うしろの木にも魂があるのかもしれない…。
日本古来の宗教は、自然の全てに神が宿るって考えだよ。(八百万の神・やおよろずのかみ) ベイサンは前世のどこかで日本の心を持った人なのかもしれないね。
カミーノに来た理由
ベイサンは
「僕が、このカミーノに来たのはね、60歳の友だちが5回もこの道を歩いていてね、是非、行ったほうがいい!って勧められたんだ。それで来たんだよ。」 5回も歩いた人いるのッ!すげっ!!
ベイサンは
「ところで、故郷の石を持ってきた?」 えっ?それ、なんのこと?
古い自分を捨てて新しい自分になるっていうやつさ。
それをやりに、この巡礼に来たんじゃないの?」とベイサンは言いました。
ええっ!それ、知らないわ…。
ベイサンは
「えっ、ほんとに?・・・(^^;)」
と驚いた顔になりました。
知らなかった~。クロス・ザ・フェローの丘、まだ通り過ぎていないよね。石は持って来ていないけど 何か自分の持ち物でもいいのかな…。
「丘の上で考えたらいいさ!」
カミーノで君が代を歌う
ベイサンは言いました。
「日本の国歌は、どういうの?」
歌ってみてくれないかい? あ、うん。オッケー。
そいいえば普段の生活で国歌なんて歌ったことがありませんでした。学校や何かの式典で
「国歌斉唱〜!」
と、号令が掛かった時に歌う、といったものでした。
増して、親子だけで歌ったことなんてないわ。
というか、Chaiはもちろんのこと、Denは歌えるのかな…?
とにかくリクエストにお応えしよう。
「君が代」歌うよ。せーの! ♪ き~み~が~あ~よぉ~わあ~…
♪ コケの~む~す~う まあ~で〜♪
アハハ!ちゃんと、歌えた!
3人は、なかなか声が合った歌いっぷりでした。
カミーノで「君が代」を歌うなんて!
思い掛けないことでした。
ベイサンはとても感激してくれました。
「ワーオ!素晴らしいよ!」
「君が代」って美しいメロディね、厳かな雰囲気があるね。日本の国歌なんだ!って胸張って言えるね。 うん!
「君が代」の良さを、カミーノであらためて認識したのでした。
カナダの国歌を教わる
ベイサンは「カナダの国歌はこうだよ。」
「♪ オ~ カナダ~...」ベイサンは、歌ってくれました。
そして「Oh freedomこの歌好きなんだ。知ってるかい?一緒に歌おうよ!」
「♪ オ~、フリーダム オ~、フリーダム〜...♪」
ChaiとDenはサビの繰り返しを覚え、一緒に口ずさみながら歩きました。
♪ オ~フリーダム オ~フリーダム オ~フリーダム~
♪ オ~フリーダム...♪
ハーモニカを吹きながら歩く
ベイサンは、ポケットから何かを取り出ました。
あ、ハーモニカだ!
ベイサンは、ハーモニカを吹きながら歩きました。
歩きながら音楽があるっていいね!
貸して、貸して~!
♪きしゃ きしゃ しゅっぽ しゅっぽ ...
スペインの田舎道の空に、ハーモニカの音が溶けていくようでした。
『イントゥ・ザ・ワイルド 』映画で語り合う
『イントウ・ザ・ワイルド』という映画は観た?、旅の映画だよ。
ベイサンは
「うん!観たよ~!」
うちは日本で3人とも観たの。アラスカを目指して旅する青年の話よね。文明や富を捨てて、どんどん北の山の奥へ奥へと行ってしまって…。 おなかぺこぺこで、やっとトナカイを捕まえたのに、食べようと思ったら、もう、うじ虫がわいて食べられなくなっちゃたんだよね、悲しいよね。
「そうだよね。川の流れが強くて渡れないんだよね!」
毒の草を食べちゃったんだよね!
「あれは、実話なんだよね!」
うん。最後に本人の写真出てくるよね! 主人公の人、ちょっとベイサンに似てる!
「ほんと?アハハハ!」
みんなで一つの映画を、始めから最後までストーリーを語り合いました。
映画ってすごいわ!国境を越えてこんなに話せるなんて!
つたない英語に、時には身振り手振りのゼスチャーを加え、会話は続きました。
ボール投げボーリング大会観戦
天気がよく、景色が鮮やかに映りました。橋を渡りました。
途中、橋から見下ろした原っぱで、スペインのおじさん、おばさんたちが大勢集まっていました。
何だろう?
原始的ボーリングとでもいうのかしら。
木の柱を9本+2本立てて、10mぐらい離れたところから球を投げ、倒した数を競っていました。周りの人たちからかなりの熱気が感じられました。
ときどき歓声が聞こえてきました。
おお~!
わあ~!!
大会?試合?なのかしら。
天気のいい日、土手の原っぱで、このシンプルなスポーツに興じる姿は実に楽しそうでした。
私たちは橋にもたれ、しばらく観戦しました。
ロビン・ウィリアムスで会話が弾む、映画ってすごい!
さらに映画の話は続きました。
ベイサンはロビン・ウイリアムスが好きなのだって。うちも観たよね。
『ジャック』や『パッチアダムス』の話をしながら歩きました。再び映画の話で会話が弾んだのでした。
年齢や国籍を越えて、共に話せる映画ってすごいナ~と
再確認したのでした。
暑さでバテ気味のDenですが、ベイサンとおしゃべりがしたくて、時々遅れながらも頑張って付いて行きました。
ベイサンはChaiにも、Denにも、それぞれにわかりやすい話を、わかりやすい英語で話してくれました。
他の巡礼者が追い越しざまに
「おー!ベイサン‼」と何人も声を掛けていきました。年配の巡礼者たちでした。
ベイサンは、子どもとも楽しく話せて、年配者とも気さくに話せるって、素敵~!ベイサンは人気者だわ~。
わあ、サンティアゴまであと307㎞だね。
のんきな放し飼いの鳥たち。ガチョウとニワトリたちがカミーノも後半ですよ~、と言っているような…。
石の橋が見えました。
歩道橋のような鉄橋を渡れば、もうすぐレオンの街でした。
きょうはペースが早いこと。20㎞をいつのまにか歩き、ついにレオンの街に着きました。
時間は13時半でした。
しばらく歩くとアルベルゲはすぐに見つかりました。RRMMというところでした。
早くチェックインしないと、いっぱいになっちゃうかもね!
しかし、入り口のすぐ前に
怪我をしている犬がいました。足に包帯がみえました。呼吸が荒く、辛そうでした。
あ、大きな犬!どうしたんだろう。怪我してるね。後ろのほうで点滴もしてるよ…。
ChaiとDenは犬が心配になり、アルベルゲに入るのを、しばし忘れました。
カミーノ憧れのチョコレートクッキー
アルベルゲのRRMMは、大きな修道院で寄付のうえに朝食が付くという所でした。 わあ、ありがたい!
あ~、お腹ぺこぺこ~。
私たちは、あり合わせのものでランチを作りました。
いつものように、バケット、サラミ、チーズ、オレンジでした。
ベイサンは
「何か買ってくる。」と行ってしまいました。
戻ってくると、途中のパン屋さんのショーウインドウで見た大きなチョコクッキーを買って来てくれました。
あ~っ!、あれだっ、食べたかった!!
ChaiとDenは 大はしゃぎでした。
これ、食べたかったんだよね~!
ありがとう、ベイサン!気にしてくれていたのね~。
RRMMアルベルゲの中庭
一階の屋根のある中庭スペースにテーブルとイスがありました。そこは居心地が良くて、ランチが終わってからも、しばらく休んでいました。
ChaiとDenは手遊びの『CCレモン』と
『ビームフラッシュ』をベイサンに教えてあげました。
中庭から駐車場のほうを見ると人々がおしゃれをして集まっていました。
どうやら親戚一同が集まって記念撮影のようです。
お誕生日かな?あの子、素敵なドレス来てるね!
漢字の勉強会
それから 中庭のテーブルは、漢字の勉強会になりました。
「木」は =「Tree」 もっとあると「林」=「Bush」 もっと沢山あると「森」=「Forest」だよ。
ベイサンは「へー、面白いね!もっといっぱいは?」と聞きました。 「地球?」「Earth」かなぁ~、わかんない。
これみて!こうなるんだよ。
へえ~、Denもいい授業をしているわ…。
私もノートと鉛筆を出し、漢字でベイサンの名前を考えてみました。
「ベイサン」→「米山」
いや、違う!ヨネヤマになってしまう…。
英語読みのビンセントの読み方で考えてみることにしました。
「美賛斗」と書いてみました。
うん、こっちのがイイ!
ベイサンは、とても喜んでくれました。
レオンの街探索
アルベルゲRRMMのシャワーは、ボタンを押すと1分ほど稼働するというものでした。止まってはまた押し、止まってはまた押しを繰り返しました。ちょっと面倒ですが、終始、温かいお湯が潤沢に出ました。
あ~、ハッピー!
シャワーを浴びた後、荷物を整えました。
それから、レオンの街探索に出ることにしました。
レオン、レオン、どんなところだろう~。
まえに会ったドイツ人の巡礼仲間が、足のトラブルでブルゴスの後に巡礼を止め、途中の町をバスで飛び越えて、レオンの街へ行ってしまいました。
限られた休暇の日々を、なるべく長くレオンで過ごしたいから…、と言っていました。美しい大聖堂をスケッチしたいから、と。
それが、このレオンの街でした。ワクワク! あ、でも、今日は日曜日だよ!お店はお休みだよ~。
ホント、お店がみんな閉まってるね…。
裏道も歩いてみました。
けれど、なんとか日曜日でもお店が開いている、賑やかな通りに出ました。
アイスクリームにありつけました。
あ、エンパナーダが売ってる!
Chaiとエンパナーダのハム入りを買いました。
Denはお菓子屋、キコスを発見し、グミ、チュッパチャプスを買いました。
私はバケットを買うことが出来て、ちょっと安心しました。パンはいつでも必ず一本は持っていることにしていました。
ガウディのカサ・デ・ロス・ボディーネス
背中にバックパックのない街歩きは
なんて楽しいのだろう~。
こんな城壁がありました。
街のベンチの銅像がユニークでした。マネしちゃおう!
うろうろしていると、ガウディの作ったカサ・デ・ロス・ボディーネスの建物の前に出ました。
わ~!ステキ! 素晴らしいね!ガウディの建物って物語を感じるね~。
おとといのアルベルゲで一緒だった四人組のおばちゃんたちと再会し一緒に写真を撮りました。
ずっと、見て居たい気持ちになりました。
卓球ラケットを買う?買わない?…
町はずれに、0.7ユーロショップがありました。日本で言うところの100円ショップでした。店主は中国の人でした。
どこの町にも一軒は、中国人またはトルコ人の安売り屋さんがあるのだな〜と、スペインの商店街のしくみが、何となくわかってきました。
その店になんと、卓球セットが売っていました。ラケット2つにピンポン玉2つ。 あ~!卓球のラケットだ!欲しい‼︎
が、しかし!
これから先、リュックに入れて持って歩かなければいけません。 けっこう重いよ。この先、自分で持つんだよ?できるかな…。 大丈夫‼︎ そんなに重くない。うん大丈夫だってば。たぶん…。
絶対に自分で持って歩くから!
という約束でした。
私たち巡礼者は、靴下一足でも重たく感じます。今までもアルベルゲに、ちょいちょい服や物を置いてきました。
ほんとに大丈夫かしら~??
心配をよそに、DenはスキップギャロップでアルベルゲRRMMへ戻って行きました。
計画倒れにならないかな~?
作りかけで放置されたレンガの壁が、そう言っているようでした。
卓球大会再び、驚きの飛び入り!
さっそく、中庭のテーブルをくっつけて卓球台を作りました。
コン、コン、コン、カッコン!
こないだのアルベルゲでの8時間練習で、かなり上達していました。打ち合いが続きました。もう、楽しくてたまらないDen、付き合うChaiでした。
私は少し離れたテーブルで日誌を書いていました。
しばらくして、スペイン人のお掃除のおばさんがやってきました。 あ、まずい。「やめてください!」って言われるね、きっと…。
「卓球できますか?」と聞いてみました。
すると…
「あらっ、もちろんよ!」という意外な返事が返ってきました。
さらに
「家には卓球台だってあるのよ!」と言うと、おばさんはバケツを置きました。
ラケットを貸してと、手に取ると
Den を相手にサーブをし、3,4回打ち合いをしたあと、
スマッシュ!
カッコ~ン‼︎
おばさんが鮮やかに打ち勝ちました。
「ワッハッハ〜!」
と、笑いながらバケツを持って行ってしまいました。
ここで卓球をすることは、止められませんでした。
自由でありがた~い!
そして、又またびっくり‼︎
スペインの卓球熱のすごさ!
さらに中庭の卓球は続きました。
今度はベイサンが加わりました。
寝る直前まで
カッコンカッコンカッコンカッコン!
夜9時過ぎになりました。
さすがに私も
「もう、寝る支度だよ~!」と声を掛けました。
家族の写真
ラケットとテーブルを片付けると、ベイサンは家族の写真を見せてくれました。
ベイサンは
「12歳年下の妹がかわいいいんだよ~。」
ほんとうに優しいお兄さんだナ~。
さらに、お父さんの写真を見せてくれました。後ろに、カトリック色たっぷりの大きなキリスト十字架像が飾ってありました。 あれ、ベイサンの家、カトリックなの?
ベイサンは
「父だけなんだ。僕は違うよ。」と否定しました。
そう言えば、パンプローナの教会のミサに入った時、だだっ広い教会の椅子に、お年寄りの信者が7人、それに教えを説く祭壇側は、年配の神父様が9人だけでした。
また、ピレネー山脈で一緒に歩いたカナダ人の家族も、おばあちゃんが78歳でカトリックでした。
あとに続く娘さん夫婦、8歳と10歳の孫の女の子二人だったのですが、娘さんが私に言いました。
「おばあちゃんがカトリックでね。どうしてもこの巡礼に来たいっていうので、一緒に来たのよ。私たちはプロテスタントよ。」
家族でカトリック、プロテスタントと宗派が異なっていても、大丈夫なのね~。
真夜中の勘違いにブーイングの嵐!
ベイサンは、明日どれぐらい歩くの?
「明日は、30km以上は歩きたいんだ。」ベイサンは答えました。
それは、ものすごく速いペースで歩かないといけません。私たちは、のんびり歩きだから付いていけないでしょう。 じゃあ、ここでお別れになってしまうね…。
ベイサンは言いました。
「でも、朝ごはんは一緒に食べようよ。6時に食べ始めて6時半には出るよ。」 うんっ、早起きするよ!
「オッケ~!おやすみなさい。」とベイサンは言いました。
私たちは寝ぼすけだから、寝過ごさないかしら~。
夜中に不意に目覚め、腕時計を見ました。
ああっ!6時を5分過ぎてるっ!Chai、Den、起きて、起きてよ~、ベイサンと会えくなるよ〜!
「はやく、はやく~行くよ!」
と、急かしにせかし、ベッドから出て、サンダルを履いてもらいました。
しかし...
アルベルゲの大きな時計をよく見ると…
まだ、夜中の1時半。
1:30 と 6:05 の勘違い でした…。
時計の長い針と短い針を見間違えていたのでした。 もおお〜!ママったら~‼︎ もお〜!ねむいよぉ〜‼︎
ごめんねっ。おやすみっ!