41/60魂の授業、チョコが甘いの知っていると信じるの違い
5/26(水)→セブレイロ 残り物の朝食 11.4km/€56 紙シーツ配布 €5×3
エリカといっしょに朝食を食べました。昨日のポテトサラダの残りに、野菜を足してアレンジしました。
後片付けはDenとChaiです。お皿を運び洗ってもらいました。
曇り空の下、歩き出しました。
おととい会った犬、また会えたね!
町はすぐに終わってしまいました。
しばらくの間、田舎道になりました。水玉模様のビニール風呂敷は、お赤飯が包んであったものでした。持って来て重宝しました。
歩きながら魂の授業
歩きながら昨日に引き続き、私の質問は続きました。
私が聞き、エリカが答える…。
それは、まさしく問答の授業でした。
ね、雲やコウノトリといった、パッ!と目についた事象に感じたことがメッセージだって、昨日言っていたけれど...。 パウロ・コエーリョが『星の巡礼』の本の中で、自分のガイドと対話をしていたでしょう。 心の中のもう一人と声というのか、まわりにいる守護神?、御先祖様?とでもいうのかナ。私も自分のガイドと話がしてみたいな。声がしたらいいのにな。
すると、エリカは言いました。
「それはエゴ(自我)が邪魔していると、出来ないことなんだ。エゴが心の入り口で門番をしていて、損得を考えてしまう。それを取り払わないと、ガイドの声を聞くのは難しいのだよ。」
とっ散らかった気持ち
ね、私、あれこれ気持ちが、とっ散らかっているからダメなのかな?
山道を歩きながらエリカは言いました。
「とっ散らかっていることに、気が付かない人ばかりなんだよ。気が付いて変えようとしているのは、かなり進んできている事だよ。」
何でとっ散らかっているかと言うとね、こうしたいっていうものがいくつもあって、どれもやりかけなんだ。 カミーノに来たことで言えばね…。
印象を残す
ひとつはね…
子どもたちは、近い将来、親から離れていくだろう。または、不意に私が居なくなる事もあるかもしれない。そんな時のために、深く印象に残ることを一緒にしておきたかったんだ。それがこの巡礼なんだ。
まあ、それは現在進行中だね。
自分の健康
そして、もう一つはね、私は腎臓の機能が、ちょっぴり弱くてね。
この巡礼で、病気が治ったっていう人いるよね。そういったことに、期待をしているんだ。
Chaiの健康
中学二年生になってから、学校へ行くと頭痛、腰痛がして授業を受けられず、保健室のベッドで休むようになってね。欠席が徐々に増えてきてね。
でも、それは体調ばかりではないと思うんだ。
Chaiは、とても生真面目、キチンとやりたい人で、無駄や遊びを禁じてしまう心が強いのね。
もっと、気楽に構えればいいのに…、と思うことが、このカミーノでもいくつかあったよ。
でもこの頃は、巡礼中でも公園で遊んだり、手でリンゴ割りをしたり…
ちょっとした無駄や、遊びを楽しめるようになってきたのね。
これも、現在進行中だね!
カシャ!
Chaiは、歩きながら自分で感じた景色を、カメラに収めていました。
ゴッドハンドになりたい!
そしてもうひとつ、考えることはね。
ゴッドハンドになれたらいいなって。
仕事で鍼やマッサージをしているとね、患者さんの痛いところ、調子の悪いところを察知して、触っただけで症状を改善していくような力があったらいいのにナ〜ってホント、思うんだ。
肩凝りとか腰痛といった外側だけでなく、内側からもね。
肝臓が疲れているな、心臓が弱っているな、
痛みや疲労を取ってやれぇぇ〜!
なんてさ。
そういった力が欲しいな、なんてさ…。
それ霊能者になりたいってこと?
エリカは言いました。
「それ、霊能者になりたいってこと?」
私は答えました。
あ、そうなるのかな。ヒーラーって感じのが合ってるかな。そういった感性って、生まれつき持っている人いるでしょ。
私は、ぜんぜん無いからダメなのかな?もしトレーニングで、自分自身の能力を開発できるというのなら、やってみたいと思うな~。
するとエリカは言いました。
「世の中、自称ヒーラーっていうのはね。ごまんといてピンきりあるんだよ。
本当に力のある人は、金品を求めない。エゴがないから。」
エゴって何?
また言ったね。エゴって何なの?
エリカは答えました。
「いろいろあるよ。
親が喜ぶから?
社会に認められるから?
お金になるから?
世の中の基準て何?
お金持ちだと幸せで安心?
貧乏だと不幸で不安?
もし倒れても、隣の人が助けてくれる。
チーズがなければ、友だちがいくらでもくれる。
そんな社会だったら、保険会社なんて要らない。
信用して助け合えない社会だから、お金を頼るのだ。
保険会社とはユダヤ人が安心を、お金で与えるシステムを売り出したのだよ。
人間の歴史上、始まってたったの600年のことなんだよ。
お金がなくても信用して助け合える社会…、
そんなことは、夢や理想でしかなくなってしまった。
それに乗せられたまま
欲得に埋もれたままでは、
次のステージには行けないんだよ。」
うーん、難しいね。そんなにお金お金ってわけでもないんだけど…。でも思えば、親が喜ぶこと、社会に認められることって、自分が本当に好きなことじゃなくても、やってしまっているんだよな~。けれど、何であっても出来なかったことが出来た時は、とにかく嬉しいよ。ああ~、分からなくなって来た~。
うう~、寒いね!
ChaiとDenと牛たちが、今日の「魂のレッスン」に聞き耳を立てていました。
チョコが甘いの「信じる」と「知っている」の違い
エリカは続けました。
「けれどね、Kumi3、なりたいものに誰だってなれる。
100点なんて誰でも取れる。取れないのは自分の中で、これぐらい取ればいいや、というガードを自分で作っているから。
そして、そういった能力は、やり方を信じて教わったらできる、というものではないのだよ。
例えば
「チョコレートが甘いのを 知っています。」
というのと
「チョコレートが甘いのを 信じます。」
というのは、大きな違いがあるよね。
ここはカトリックの道、宗教だってそう。
「神がいるのを知っています。」
というのと
「神がいるのを信じます。」
というのは、違うよね。
多くの人が真実を知ろうとしないで、人が体験したものを信じますって立場で満足している。
知るってことは、体験すること、チャレンジすることだよね。
かじってみて
塩辛いチョコレートだってあるかもしれない。
行動して傷ついたり、がっかりしたりすることもある。
けれど、たくさんのつらい思いや経験を経たことによって、人生に深みが加わるんだよ。それは生きている生き方なんだよ。わかるかな。そうした経験が、人の気持ちを癒すヒーラーに繋がっていくのだよ。
親しい人の死を経験したことのない人は、やはり話していて届かないものがある。
それは、仕方のないことでね。
Kumi3は、だんだん時がくるよ。
焦らないでも大丈夫!」
亡くなった母のこと
エリカにそう言われ、母が亡くなった時のことを思い出しました。
悲しみで全身に力が入らなくなったあの時のこと…。
私が初めての出産で入院した時、母は風邪で熱を出し、他の病院に「2,3日、点滴入院をしましょう。」と言われました。
そして…、
病院で2日目の朝、母は帰らぬ人となっていました。
60歳になったばかりでした。
亡くなる直前まで、おしめを晒し布で40枚も縫ったり、産着を準備したりと、元気いっぱいの母でした。
私が新生児を連れて退院した時は、もう会えませんでした。
残された家族で医療過誤を疑いましたが、そういった裁判を起こす気力もありませんでした。
あまりにも突然だったので、母が亡くなったことを受け入れるのに時間が掛かりました。どこにいても、思い出すと瞬時に涙が出て来ました。
こんなことになるのだったら、もっと母と一緒に料理や買い物、着物の着付けなどを教わっておきたかった…。
当たり前にいると思っていたので、母のことなどまったく気にしないで暮らしていました。居なくなって初めて、その存在の大きさに気付かされ、打ちのめされました。
あんなに元気だった母が死んでしまうなんて、、、。
自分にだって起きるかもしれない。
と漠然とした不安をも感じてしまいました。
しかし、しかし...
赤ちゃんのいる生活は、目が回るほど忙しい日々でした。
長女はおっぱいが欲しいと昼夜2時間おきに泣き、おむつを取り替えてる間にもオシッコがピュ~!っと飛んだり、たった今取り替えたばかりのシーツにゲボを吐き…、また洗濯、また床を拭くといった、やることがいっぱいの毎日が待っていたのでした。
それで気持ちが紛れ、全力で目の前のことに向かっていけば、悲しみも忘れて過ごせたのでした。
そうして母が亡くなってから3年ぐらい経て、ようやく涙が出ないようになりました。
しかし、急に消えてしまうという恐怖は、二十数年経った今でも、心のどこかに地味に貼り付いているのでした。
それで、いつも忙しく過ごしてしまうのかしら~。何かをやっていないと気が済まないような…。ヒマになると不安になっちゃうのよね。残された時間は少ないのかも… なんて思ってしまって…。
私は、カミーノを歩きながら、さまざまな想いの棚おろしをしていました。
Made in Morocco=メイド・イン・モロッコ
途中、センスの良い小物を売っているお店がありました。
私とChaiは、テンションが上がり、ワクワクして店内を見て廻りました。
エリカとDenは、外で待っていると言いました。
私は、待たせて悪い気持ちと、今、話しの中で聞いたばかりの「物欲」というエゴの塊になったようで、買い物のスピードをいつもより速くしてお店を出ました。
ほら、Denはアクセサリーとか買う楽しみないでしょ。ちょっと奮発してカミーノの思い出になるようにと、革のお財布を買ったよ!
へー!かっちょいいね。
すると、手にとって見ていたエリカが
「これ、メイド・イン・モロッコって書いてあるよ。」
え〜っ‼︎ うっそ~、スペイン製じゃないの?カミーノの思い出に買ったのにぃ〜!!
エリカは声をあげて笑いました。
「あっははは〜!モロッコに縁があるのかもしれないね。」
(そして、それは本当でした….。)
アルベルゲが満員だった場合
休憩をしていると、クリスティーナが追いついてきました。
昨日、先へ進んだクリスティーナは、アランの言った通り、次のアルベルゲも満員でした。
そこで仕方なく、民家のドアを叩いたそうです。
すると「今日、仔犬が生まれて、部屋の中にお母さん犬と一緒にいるのだけど、そこで寝るのでよければ…。」と民家のおばさんは言ったそうです。
クリスティーナは「わお、喜んで!もう、そんなの願ったりです〜!とね。そこに泊まらせてもらったのよ!」と嬉しそうに話してくれました。 わああ、イイナ〜‼︎ Denも、そこがよかった〜‼︎‼︎
お互いにプレゼント
山道を登って行きました。
天気は良くないのですが
山の景色が、眼下に広がりました。
途中、食料品店がありました。
犬が「かまって〜!」とお腹を出してきました。 うりゃうりゃ~!かわいいワンコ!
パンとチーズとチョコのランチ休憩をしました。
そこでエリカとクリスティーナの腕に、アストルガで買ったミサンガを付けてあげました。
すると、クリスティーナもお返しに、Chaiの腕にミサンガを付けてくれました。
わあ!かわいい。ありがとう!!
私たちは言わなくても、
今日でお別れになるかも知れない…、
と、お互いに感じていたのでした。
速足のエリカ、そしてクリスティーナも、私たちの歩く速度に合わせてくれているのを知っていました。
そう、カミーノは人に合わせなくていいのだから。
セブレイロ峠で新聞の取材
セブレイロ峠に着きました。
セブレイロの教会を通りました。
そこで、私たちはスペイン地元の新聞記者に呼び止められ、取材を申し込まれました。足を止め、受け応えをしているうちに
エリカ、クリスティーナは、大きく手を振って、先へ行ってしまいました。 ああ、待って!一緒に写真を撮ってハグして、ちゃんとお別れがしたかったよ〜!
記者の女性は、私たちにインタビューを始めました。
「なぜ巡礼に?」
子どもたちと沢山過ごす時間と、チャレンジがしたくて来ました。
「子どもたちの学校は?」
休んでいます。
「疲れていないですか?」
大丈夫です。
「スペインはどうですか?」
楽しんでいます。食べものは、特にオレンジが甘くて美味しいです。
最後に記者と一緒に、写真を数枚撮りました。
私は、英語力も乏しく、ごく当たり前のことしか言えませんでした。
エリカとクリスティーナと、流れで別れてしまったことが残念で、気持ちが少し上の空になっていました。
ベッドバグ対策に紙シーツ
雨が降ってきました。
私たちは、セブレイロ峠のアルベルゲに泊まることにしました。そこは大きくて、市民会館のようでした。
クレデンシャルにスタンプを押してもらうと、紙のシーツと紙の枕カバーをもらいました。
「これはベッドバグ対策なのだよ。」ということでした。
ポンフェラーダあたりから、ベッドバグを注意喚起するポスターやチラシを見かけました。
やっかいな虫らしく、刺されると尋常じゃない皮膚のかゆみや貧血、アレルギー反応を引き起こしてしまうのでした。
また、繁殖力が半端なく、ネズミ算的に増えるそうです。持ち物に1匹でも見つけたら、卵を産みつけている可能性があり、バックパックの中の物、全てを洗濯&煮沸しなければいけないというのでした。
恐ろしい〜!
別名:トコジラミ、南京虫とも呼ばれています。
紙製のシーツと枕カバーは、使い捨てでした。もったい無いようですが、ベッドバグの恐ろしさを聞いてからは、その必要性を十分に納得しました。
しおれた風船
近所に食べ物を、買い出しに行きました。
お店は、電気が暗く品数が薄く、パンだけ買うとすぐに出てきました。
小雨と寒さも重なったせいか、どんどん気持ちがダウンしていくのが分かりました。
エリカが居なくなり、先生を失った生徒みたいで、心細くそして寂しく感じました。
クリスティーナも、マザリフェで出会ってから9日間一緒でした。
もとの3人に戻っただけなのに…。
なんだか私たちは、しおれた風船 のようでした。
浮き上がる力がどこにも無いないような…。
アラン先生
セブレイロ峠には、遺跡がありました。
アランがセブレイロの古い住居の説明をしてくれました。
フランス人のアランは、民族学者のようでした。
歴史や地理、民族、風土に実に詳しく、このカミーノを歩き、レポートを書いてはフランスへ送っているのでした。
それらの探索の帰り、一緒にバルに寄りました。
アランは、みんなが手にしたい巡礼証明書には全く興味がなく
「サリアから先は人が多いので、フランスへ帰るよ。」と言いました。
あら~、もったいなくないのかしら…。
バルに入りました。
今日は寒かったね〜。
ChaiとDenはコラカオを頼みました。
私はアランに、この地方のアラックというお酒があるから試してごらん、と勧められました。
キヒ〜ッツ!
アルコール45度だそうです。
私たちが話している間、お土産コーナーをみていたDenが嬉々として
ね、ね、これ、どうしても欲しい!
Denはパチンコを見つけ、興奮していました。
うん、いいけど、絶対に人に向けて飛ばさないでよ!
アランは、空手を習っていたそうです。
「レイ!センセ アリガトウゴザイマシタ!」
と、早口で言うことができました。
センセイの意味がわかるんだね。それじゃ、アラン先生と呼ぼうよ。
賛成~!
それピッタリだね!
その呼び名の通り、アラン先生は様々な知識を持っていました。
夕食後の長い時間
アルベルゲのシャワーは、熱いお湯とぬるいお湯との個体差がありました。
先にシャワーを浴びていたお姉さんが「ここがイイよ!」と教えてくれました。
それから、洗濯を済ませました。
夕飯は、簡単にいつものハムサンドイッチでした。
アルベルゲのキッチンで、カモミールティーを飲みながら、アラン先生がChaiに、フランスのことを地図に書いて教えてくれていました。
Denは大学生のYu-kiという優しいお兄さんに、卓球の相手をしてもらい、そのあとカードゲームをして遊んでいました。
いつもなら、一緒に聞いて、一緒に遊ぶはずの私…なのですが、今日はどちらにも、あまり関わりませんでした。
3日間一緒に歩き、互いにしゃべり通しだったエリカの言葉を、ゆっくり噛み砕いて考えてみたいと思ったのでした。
毎日がレッスン、早速レッスン!
そして、ここカミーノは
「必要なものは現れて、必要でないものは消えていく道」なのでした。
エリカはきっと、私たちに必要な授業をすべて終えたのです。
「さあ、実践してごらんよ。」
と声が聞こえそうでした。
その夜、Chaiと話しました。
ママね、エリカとクリスティーナと離れてしまって、とても淋しく感じてね…。
私も。全く同じ気持ちだナ…。
2人は、ため息をつきました。
ハアアァ… でもさ、こんな私たちを見たら、エリカは何て言うだろう。「誰かが居ないことでアンハッピーな気持ちになるとしたら、、、それはどうして? 私に何が必要?私はどんなレッスンが与えられている?さあ、考えるんだよ!」と言うだろうね。
そうだね…。