10/60カミーノで救いの神!! プラスマイナス・プラスのメッセージ!
4/25(日)→ロス・アルコス / 猛暑の日 22km/€30 公営アルベルゲ @€5×1
エステージャアルベルゲのオスピタレロは、朝ごはんにコーヒー、ホットミルク、パン、ジャムなどを出してくれました。
寄付なのに、有難いわ~!感謝感激!!
7時半過ぎには出発することが出来ました。
エステージャの教会。
中世そのままの姿の聖墳墓教会をあとにしました。
私は、朝起きた時からずっと、Chaiが元気が無いナ~と感じていました。
昨日の10ユーロ紛失事件で元気が出ない
昨日の夕方、ChaiとDenに買い物をお願いしました。
「明日の分のパンと水とハム買ってきて。今日は頑張ったから、2~3日分のお菓子を買ってきていいわよ~。」
Chaiに10ユーロ札を渡しました。
Chaiは、それをジャージのポケットに入れました。
そして2人は
「ワァーイ!イェーイ!」と歓声をあげ、道向こうのお店へと向かいました。
すると10分ぐらいして、二人は戻って来ました。
見ると…
Chaiの顔が真っ青になっていました。
ごめんなさい!。道の途中で10ユーロ落としちゃったみたいなの。お店でお金を払おうとして、無いってわかって。大急ぎで来た道を戻って探したのだけど、無かった…。ごめんなさい。
いいよ、いいよ。気にしないでさ。誰だって、たまにそんなことあるんだから。
無邪気にアイスをうひゃうひゃと頬張るDenとは対照的に、Chaiは自分の失敗を許せない様子で、落ち込んだままでした。
そして朝になっても、昨日の10ユーロ紛失事件を引きずったChaiの足取りは重いのでした。いつも先頭をスタスタと歩くというのに…。
今日はあまり距離を歩けないかな…と感じました。
『距離と町名とアルベルゲのプリント』を見て、10km歩いたところにある山頂のアルベルゲに向かう計画にしました。
町を通り抜けました。
あれ?ペコちゃんみたいね?ここではパロミタちゃん?らしい~。
ぎゃはは!パクッてない?
けれど、Chaiはウケていませんでした。
屋根の上のバイオリン弾き猫!
素敵ね~!
Chaiは「かわいい~!」とか言いそうなのですが、静かに通りすぎました。
朝8時半から、すでに猛暑となっていました。
公園の神様
歩き出してから2時間ぐらいして、通りがかった公園で休むことにしました。
公園にトイレは無いかしら?う~ん、無さそうだわ…。ここは、座ってひと休みするだけにしようね。
3 人は、一つのベンチにお互いに寄りかかって座りました。今日は暑さが厳しく、より荷物が重く感じられ、早々とへこたれていました。
公園の中には、向こうのベンチにおじさんが一人、座っているのが見えました。
すると突然...
おじさんが、トコトコと私たちに近付いてきました。
な、なんだろ?ここ座っちゃいけないのかな?
おじさんは、私たちの前に来て、取れ、取れというジェスチャーをしているようでした。 え?あの、、、もらっていい?のですか?
おじさんは、そう言って私に紙袋を持たせました。そして
おじさんは「★×♪◯×~☆×@#●~」
スペイン語で、何か言っているのでした。 わわわ、スペイン語、わからないのです。全然ダメなのです~!
落ち着こう。アタフタしていないで、しっかり聞かなくては!
「わしはサンチャゴの大聖堂に行けないけれど、わしの代わりに巡礼をしておくれ。大変だろうけど頑張ってな!」と。
Chaiが受け取った袋の中を見ると、パンとチーズとハムがはいっていました。
グラシアス!(ありがとう)嬉しいです。わかりました!
ChaiもDenも同様に
「ムーチョ・グラシアス!」と喜んで言いました。
おじさんはニコッと微笑むと、スタスタと行ってしまいました。
巡礼中、初めてお布施をもらう
私は感激して興奮しながら、ChaiとDenに言いました。
「こういうのをお布施というんだよ。
もらう側がありがとうという気持ちを持つのと同じように、
あげる側も貰ってくれてありがとうという気持ちを持つのだよ。
お互いに感謝する気持ちのやりとりのことでさ…。」聞いてるんだか…。
わははっ、うれしいっ!食糧しょくりょう!
それらは、おそらくおじさんが自分のために買った食料品でした。
私たちの姿を見て、自分の分の食料を惜しみなく渡してくれたのでした。
多分、おじさんの朝ごはんだったのにね…、優しいね。
神様の姿
あれれ?さっきのおじさんがまたこっちへ来るわ…。どうして?まさか、お金を請求されるのかも?
ChaiとDenも警戒し、緊張が走りました。
ところが…
おじさんは、なんと!
「これも持って行なさい!」と
お札を二枚、手に持っていました。
それを、私たちに手渡すために戻ってきたのでした。
え~!いやっ、それは申し訳なさ過ぎます。ハート♥だけで十分です。ありがとうございます!
ところがおじさんは、
私をじっと見て、子どもたちを指さし
「大変なんだから。受け取りなさい‼」と
ChaiとDenの前に立ち
Chaiに10ユーロ札、Denに5ユーロ札をそれぞれの手に持たせました。
そして
「うんうん。」と、
うなづきながら、ニッコリと笑いました。
ChaiとDenは、驚いて息を飲みました。
えっ、あ、あの…、ムーチョ、グラシアス!(本当にありがとうございます。)
わあ!ムーチョ、グラシアス!
おじさんは、手をあげて
「じゃあな!」と
再びスタスタと行ってしまいました。
ああ、嬉し過ぎて泣ける~!
食料だけでも、十分嬉しいのに
お金まで…
神様の姿ってこんな感じなのかな??
そしてそして…、
おじさんを疑ったりして、本当にごめんなさい。
おじさんが手渡してくれたパン、ハム、チーズ、そして10ユーロ札と5ユーロ札でした。
カミーノからもらったメッセージ!
Chaiがニコニコして言いました。
昨日10ユーロ無くして、今日 15ユーロもらったね。プラスマイナス・プラスだね!これカミーノのメッセージかな!
本当に!なんとまあ、不思議なこともあるものね!
何があっても、いつも見守っているから!。悪いことはないのさ。だから安心して、ひたすら歩いていけばいいんだよ!
カミーノからそんなメッセージを貰ったようでした。
私たちはカトリックじゃないけれど、このサンチャゴ・デ・コンポスーラに続く道800㎞を、聖地まできっと歩き抜こうね。そして巡礼に行けない人たちに代わって、気持ちを運んであげよう。わたしたち巡礼者は、そんな役割もあるんだね。
アルベルゲを通り過ぎてしまった…らしい
どこに今日のゴールの町があるんだろうか?
街らしきものは、遠くにかすんで見えました。
あひ~、暑いよ~!
道が二股に別れていました。どちらにも矢印が付いていました。左が山のほうに行けそうです。今日の目標のアルベルゲは、山の上にありました。
ガイドブックもスマートフォンGPSなどもありません。
矢印とカンだけが頼りでした。
左の道を歩き出しました。しかし、かれこれ3時間歩いても、山頂にあるはずのアルベルゲに着きませんでした。
小高い丘から視界に町がみえました。
きっと、あの町がゴールよ!
ハア、フウ~、オッケー!
今日はアップダウンが、かなりありました。
あ、家が見えてきたよ~。あの町かな!
ふ~、やっと着いたね。
今日は日曜日なので、お店はどこも開いていませんでした。キョロキョロ見て回りましたが、アルベルゲも見当たりませんでした。
やっと一軒、開いているBar(バル)を見つけました。 ここは、モンハルディンの町ですか?アルベルゲはどこですか?
すると…
「もう、その町はとうに過ぎてしまったよ!」と言うのでした。 え~、いつのまに??
そして「この町には、アルベルゲはないんだよ。次の町までは10キロ以上はある。3時間ぐらいかかるだろうよ。」と言うのでした。
うひゃ~ん。 ええ、ここから10㎞以上⁈今13時だよ~!
とにかく、そこのバルで休憩することにしました。
このバルは、町の人々の日曜日のいこいの場でした。
オリーブのピクルスと出会う
周囲を見渡すと、お客さんはみんな、オリーブのピクルスをつまんでいました。
私もお皿を指して
「あれあれ。」と頼んでみました。
日本で食べたオリーブは、好きでもなんでもなかったのですが、ここスペインで食べた「オリーブのピクルス漬け」は、程よい酸味と塩味で、パンやチーズ、ワインにとてもよく合うのでした。
このバルで食べてから これ、パンの友だわ。病みつき~!
行くか戻るか作戦会議
さて、私たちは作戦会議をしました。
どうする?アルベルゲ、通り越して来ちゃったらしいよ。この先のアルベルゲまで、あと10キロ以上はあるのだって。行く?もう、1時半を過ぎてるよ。戻ってモンハルディンの町を探したほうが、宿は近いかもね。どうする?どうしたい?
戻るのは絶対にいやだ! せっかくここまで来たのに‼︎ 私もやだ! そうよね、ママもイヤだわ~!
戻ることは、気持ちが許さないのでした。
暑い、重い、肩が痛い、喉が乾いた、疲れた、休みたい… 全てを抱えながら、それでもなお、足を前に出して前進して来た歩きの苦労の履歴があるのでした。それを無駄にすることなんて、出来ないのでした。
心の中でいつでも がんばれ自分!と励まし
やっとここまで来たんだもの!
そうだ!前進あるのみ!
前進あるのみ!とは言ってみたものの…
14時、一番暑い時間になって来ました。
ここからの10㎞は、相当きついことが予想されました。
けれど食料はバッチリ。
おじさんに貰ったパンとチーズとハムがありました。
作戦会議で「しんどくても前に行こう!」という共通の想いで、三人がひとつになった瞬間を思うと、心が強くなりました。
小さな橋を渡りました。
金網越し、白犬さんにご挨拶「オラー!」
「へいへい、おいらのことも忘れるな~!」
しばらく、藪の道が続きました。
古い廃墟の建物の横を通り過ぎました。
どこまでも広がる麦畑…。
木が一人ぼっちだね…、寂しそう。
いやいや、麦畑の農作業の人々が、あの木の下に集まって座って休むのさ。
どこまでも田舎道が続きました。
バックパックで肩が痛いな~。
トンネルを越えたら町がある~??。
ああ…何もなかったね…。
トイレ探し、干し草の向こう側
そして、 わたしはトイレが近いのでした。うまい具合にバルがあれば、拝借するのですが、どこまでも続く田舎道はそれなりに、そこなりに…でした。
ムムム、この辺にお花畑はないだろうか…?
大きな建物のような干した草のブロックがありました。
あら!、この干し藁の向こう側はいいじゃない!
ずっと大平原だったので、チャンス無かったしな~と思い、2人に「休憩!」の号令を掛け、干し藁の向こう側へ行きました。
すると、そこは青空トイレ化していたのでした…。
やはり、人って考えることは同じなのね…。
アルベルゲに早く着きたいのに…、ママさ~、ロスタイム!
だよね…。
町が見えない失望感
バルから出ての歩き始めは、くだらない話で盛り上がりながら歩きました。
歌える歌を思い出す限り熱唱しました。
「あ」が付くことで思い出すことある? えっとね~。
それから アンタたちが小っちゃい頃はね…。
家の犬、プちゃんに会いたい〜。
そしてだんだん、会話が途切れ途切れになり、
しまいには、誰もなにも話さなくなりました。
なんにもないね…。
「歩く歩く休む歩く/〇〇✖〇」が、「歩く休む休む歩く/〇✖✖〇」に。
そしてだんだんと「休む歩く休む休む/✖〇✖✖」になっていきました。
休みながらお腹が減ると、今日、公園でおじさんからもらったパンやチーズをかじりました。
暑いよ~。肩が痛い~。足がつらい!
どこまで続くんだろう?
朝の7時半から歩き出し、今、夕方4時でした。
この暑さの中、もう水が無くなってしまったわ。子どもたちの体力がもつかしら…?
歩いても歩いても、町の気配がないのでした。
あてもなく頑張ることって、ホントつらいんだね。
せっかく踏んだ一歩が、報われた気がしない...。
そんな失望感が、積み重なっていきました。
あまりにも先が見えない不安が、怖さに変化してきました。
いつまでたってもアルベルゲに着かないよ~。
道を間違ってないよね⁉
戻ってみることも有りだったのかしら?
気持ちの問いかけが、ポッカリと漫画の吹き出しのように空に浮いているようでした。
ずっと先に、町の形跡がちょっとでも見えれば、それだけで安心し、がんばることができるのでした。
今日は、ずっと先まで何も見えて来ませんでした。
なんだか、やる気が湧いて来なくなりました。
あ~ん、喉乾いた、暑い、肩が痛い、足が疲れた…、
暑くてたまらないのに、もう9時間も歩いてる!ぜんぜん着かないよっ!
うおおおおお〜! ママだって叫びたいよ!
脳が考えるのを止める
こういう時、脳は思考をストップさせるようでした。
いつのまにか考え事が、一切できなくなっていました。
見た景色が、そのまま自分の中を通過していくようでした。
それは、景色と自分の境い目が無いような感覚でした。
頭の中はカラッポで、呼吸と足だけを動かし続けました。
その時「無の境地に至る」ということが起きていたのかもしれません。
肩の痛みも、足の辛さも、のどの渇きも覚えがなく、
ただ私たちは、ひたすら歩いていたのでした。
水って何ておいしい‼︎
田舎道がだんだんと町になり、やっと水道をみつけました。
「わああ~!」
歓声を上げて掛け寄り、ゴクゴクと飲みました。
砂漠のカエルのように、生き返る~!
身体の隅々まで水分が滲みわたると、
生命力がみなぎってくるのを感じました。
しぼんだ気持ちも広がってきました。
急に笑顔と言葉が出てきました。
ねえ、水って何ておいしいんだろうね‼︎ もう少しだね。頑張ろう!
お互いに、そんな言葉が出て来るようになりました。
宿代、子どもたちはフリー
やっと町になりました。
ロス・アルコスの看板が出てきました。
アルベルゲを探そう!
町の古びた家の窓の柵ですが、デザインがさりげなく素敵でした。
6時頃、ロス・アルコスの教会の近くに、アルベルゲを見つけることができました。
公営のアルベルゲでした。オスタピレロは
「暑くて大変だったね、子どもたちはフリーだ!大人1人分だけでいいよ!」と言ってくれました。
やった~!グラシアス!!
クレデンシャルにスタンプを押し、ベッドが決まると、やっと休めるのでした。
それを噛みしめたとき
シアワセ感がダワワ~!と
全身に押し寄せてきました。
シャワーを浴び、洗濯を済ませ、フリータイムになりました。
今日はBar (バル)でディナーを食べよう!
3人は町の探索に出ました。バックパックを背負っていないカラダは軽くて、風が吹けば傾きそうでした。足がフワフワした、変な感じがしました。
疲れ過ぎて食べられない
教会の広場のBarで、イカのニンニク炒めを頼みました。空腹なはずなのに、Denはパンを持ったまま、料理を前にして、固まってしまいました。
疲れ過ぎて、お腹がすき過ぎて、食べられないのでした。
Chai が食べ始めました。 うわっ、おいし~!おいし~い!
しばらくして、やっとDenも目が覚めたようにエンジンが掛かりました。
遅れての うまっ、おいしい、おいしい~!
私も、今日二度目のオリーブを注文し、パンと一緒に食べました。
あ~、なんておいしい。パンとオリーブだけでも生きていけるかも!
みんな全てを出し切った充実感でいっぱい!になっていました。
そして、今日の公園のおじさんのことを思い出しました。
おじさんの食料がなかったら、大変だったね。おじさんのためにも頑張って歩かなくちゃね!
今日は脇道に入り込んでしまい、トータルで30km近く歩いてしまったようでした。
バルのテーブルが気持ちよいので、爪を切ったり、日誌を書いたり、アイス食べながらイラストスペイン語の本を見たりして、くつろぎました。
Chaiはヒト型のつぶつぶキャンディー、Denは手のひらサイズのカエルグミを大事にだいじに食べていました。
仲間と気持ちをシェア、言葉が通じなくても!
アルベルゲに戻ると、皆それぞれ、今日の暑さと果てしない道に苦労したようでした。
気持ちをシェアしたい気分だったのでしょう。
いろんな国籍の見知らぬ人同士、赤ワインで乾杯し、ワイワイと賑やかな夜を過ごしました。
21時40分、日が暮れました。
おやすみなさ~い!