2/60ロンセスバジェス深夜スマホ爆音!カミーノが私たちに課した課題

目次・Contents
4/17(土)→ロンセスバージェス ピレネー山越え 17km/€53 公営石造り@€8×3
オリソンアルベルゲの物干し越しに見た、朝焼けは燃えていました。
ピレネー山の中腹にあるこのアルベルゲは、いつでも風が強く、雲はスピードを上げて吹き飛ばされていきました。
今日は、山道を17㎞歩く予定でした。
荷物が重いと歩けない。
朝、アルベルゲの泊まっていた納戸で、バックパックを背負ってみました。
うーん、重い!まだ減らせるかも….。Kumi3
置いていったもの : Tシャツ一枚、洗剤とせっけん(シャンプーで代用できる) リップクリーム(ハンドクリームで代用できる)チェーン鍵、プラスティックのコップ、歯磨きチューブ(ビニールに必要な分だけしぼって残す)これで少しは軽くなりました。
ピレネー山脈越え、道しるべを頼りに歩く
3人は歩き出しました。
風が強いのでウインドブレーカーと手袋が必要でした。
山の空気って爽やか。気持ちいいね!Chai
清々しい牧草地の、なだらかな斜面を登っていくと
あっ!馬だ!Den
万年雪の残る道。
石ころゴロゴロの道。
誰かが矢印を作ってくれたんだね!
えっと…。ここを左に行くんだね。Den
言葉がわからなくても、スペイン語が読めなくても大丈夫でした。
サンティアゴ大聖堂、その先の大西洋まで、この『黄色い矢印』が導いてくれるのでした。
見晴らしがいいところで「ヤッホー!」と叫んだり、歌ったり、たわいのないことをおしゃべりしながら歩いて来たのですが、次第に3人は無口になっていきました。
途中、枯れ草に転がり、ひと休みしました。
あ~、つかれた…。Chai
深呼吸をして山のエネルギーをもらい、そしてまた歩き出す…。
その繰り返しでした。
山の上り下りの17㎞は、普段、山歩きなどをしていない私たちにとって、なかなかしんどい事でした。
スペインの水は飲める?
山道に、水道を発見しました!
これは、有名な奇跡の水が湧く「ルルドの泉」から100kmも離れていない場所でした。きっとカラダにいい水のはずです。
おいしい水だね!Den
その後もカミーノは、巡礼者用の水道が所々に設置されていました。
「さあ、もう少しだよ。頑張れ~!」木の家族が応援してくれているようでした。
フランスからスペインへ、国境を越える
今朝、朝ごはんの時オリソンアルベルゲで、テーブルにどんぶりが置かれていました。
何が出るのかな⁇Chai
そこには、並々とミルク入りコーヒー注がれました。
これがフランス流のカフェ・オ・レでした。
ピレネー山を登り切り、道が下りになってきました。
やっと建物が見えてきました。
ロンセスバージェスに着いたようです。
バルを見つけ、ミルク入りコーヒー「カフェオレ」を頼みました。
すると、大きいどんぶりのカップではなく、普通の大きさのカップで出てきました。
しかも「カフェレチェ?」と聞き返されました。
あらら?スペイン語かな?Kumi3
そう。いつの間か国境を越えていました。
それは海に囲まれている日本人のとって不思議な感覚でした。
ここはスペインになってるね!国境の柵やパスポートのチェックなんかも、無かったよね⁈。Chai
ユーロ紙幣やコインも、そのまま使えるのでした。
アルベルゲが開くまで並んで待たなくちゃダメ?
ロンセスバージェスにたどり着いたのが14時でした。
アルベルゲの前のベンチに座り、休憩しました。
アルベルゲがオープンするのは16時でした。定員は120名でした。
ずっと並んでいなくてはいけないのかな?…と思ったのですが、
バックパックを順番に並べて置けば、その場を離れても大丈夫でした。
スペインの結婚式を見る!
私たちは、近くを散策することにしました。
あらら?
ドッカーン、ドッカーンッ‼︎
古い教会のほうからと大砲の音がしました。
なんだなんだ~?
行ってみると、結婚式の真最中でした。
美しい新郎新婦とその家族、友人たちが、おしゃれをして集まっていました。音楽が流れると、皆んな踊りながら声を上げ、たくさんのリボンや小さなキラキラした色紙をまき散らしました。
見ている人も手拍子をはじめ、お祭りのような大騒ぎでした。
わあ!結婚式って見ているだけで、こちらもハッピーになっちゃうね!Kumi3
Bar(バル)からパンを買う。
散策だけでなく、買い物もしなくては…。
明日のパンを手にいれなくてはいけません。
朝のスムーズな出発のためにも、前日に食料を調達しておくことは、大事なミッションでした。
アルベルゲの回りを探索したのですが、ここは2、3軒のBar(バル)しかありませんでした。
食料品店は見当たらず、バルで分けてくれないかしら?と試しに パンだけを売ってくれませんか?Kumi3
「OK!」でした。
よかった〜。
バルのおじさんは、カウンター越しに渡してくれました。パン一本€2は割高だけれど、この状況ならぜんぜんオッケー!でした。
この先も、バルというのは本当に便利な存在でした。レストラン、カフェ、居酒屋、ミニスーパー、トイレ…いろんな役目を果たしてくれました。
ロンセスバージェスは、他にお店はないけれど、飲み物やチョコレートぐらいなら自動販売機で買うことができました。
自動販売機でりんごも売っていました。コインを入れるとリンゴがジグザグにころころと転がってくるのが面白くて3つ買いました。
1つ、1ユーロでした。
ロンセスバージェスのピルグリムディナー
アルベルゲの受付が始まりました。
クレデンシャルにスタンプを貰い、パスポートを見せ、宿泊費を支払いました。
その時に「ディナーは頼みますか?」と聞かれました。2人分お願いしました。Denは食が細いから、Chaiと分ければ十分でした。
7時に集合、と言われ、指定されたバルへ行きました。
メニューは、ポタージュスープ、フィッシュ&チップス、パン、ヨーグルトでした。
ウェイターとウェイトレスが、私たちのテーブルを通り過ぎるときに、ヨーグルトやポテトを余分に置いていってくれました。
スペイン語で
「コメコメ!」(食べな食べな!)と、ささやき声で言い、ウインクをしながら。
嬉しいね!Chai
ありがたくいただきます‼︎
おなかいっぱい食べた後、Chaiがナプキンの紙に
“Thank you so much! “
と、書き置きを残していきました。
置いてきます貰いますコーナー
ロンセスバージェスのアルベルゲの地下に
『置いていきます・貰いますコーナー』がありました。靴からパンツ、水着、眼鏡、ゴム草履、お弁当箱…いろんなものが置いてあるリサイクルコーナーでした。
そこでDenは、ヌテラというチョコレートクリームを発見しました。800gガラス瓶入りで中は、ほとんど残っていました。
「うわーい!」と喜んでいる横で
「重くて持っては、行けないよ」と釘を刺しました。
絶対、持って行ける!
Den
けれど、持って歩くとすぐに
重い…やっぱり無理だ~。Den
それで、仕方なく考えたようでした。
その場で、そのままアイスクリームのように、食べ始めました。
しかし、途中で気持ち悪くなったらしく、残りは全てパンに塗っていくという作戦に出ました。
さっき買ったバケットのあいだに、チョコクリームを特厚に塗りこんでいました。 わあい、明日のランチが楽しみ〜♫Den
私は『置いていきます・貰いますコナー』のえんじ色ジャケットに目が釘付けになってしまいました。
羽織ってみたら、まあ、ぴったり!
あ~、欲しいなぁ。でも、重くなるわぁ…。Kumi3
神さま、荷物を軽くするため、Tシャツ、折り畳み傘、せっけん歯磨き粉まで置いてきたこの私が、このジャケットを貰ってもいいのでしょうか…。
と自分の胸に聞いてみました。
「いいのだ!」神様か欲張りの声かは、わからないけれど…。
もらうことにしました。
ああ~、重くなるのに…。
深夜2時の怖ろしい事件
ロンセスバージェスのアルベルゲは、古い大きな石造りの講堂に、120台もの2段ベッドが並べられていました。
あまりに大人数だと、なんだか映画の中で見た収容所のような感じがしました。
深夜2時過ぎ…。
事件は起こりました。
ポンポラーン、ポンポラーン、
ポンポララーン~…。
誰かの携帯の目覚ましが、鳴っていました。 ううん、誰かのアラーム?、早く止めて~。Kumi3
それは、深夜の静寂をぶち壊しました。
しばらく鳴り続けていました。
迷惑ね~!
と眉間にしわをよせ、耳をふさぎました。
それは、まだ鳴り続けていました。
そのうち、120台のベッドで眠っていた巡礼者の多くが
暗闇の中、ざわめきはじめました。
「誰だ?」「うるさい~!」「どいつだ?」「止めろ!」
「バカ野郎!迷惑だぞ!」
いろんな国の言葉で怒りだしました。
STOP IT !!
私もいい加減にして~!と思いました。
明日、朝早く出たいのに安眠妨害~。すると ママのケータイじゃない?Chai
ええぇ~っ?
手探りで足許のショルダーバッグをたぐりよせると わっ、鳴ってる‼︎Kumi3
なんと、私でした!!!!!!
1時間以上トイレに閉じこもる
物凄い速さでショルダーバッグを抱え、裸足で寝袋を飛び出し、ラグビー選手のように走って地下のトイレに駆け込みました。
わらわらした大急ぎの手で iPhoneを止めました。
自分が顔面蒼白になっているのがわかりました。
ハアハアハア…、誰も来ないよね?Kumi3
そのまま1時間以上、トイレに籠っていました。
誰か追いかけてこないか、恐ろしかったのでした。
思えば、カミーノに出る1週間前に古い折り畳み式のケータイ電話から、スマートフォンに変えたのでした。インターネットを手元で見れたらいいと思ったからでした。
けれど、使い方をマスターできていないまま、スペインに来てしまいました。
アラーム音が自分のスマートフォンの音だと、認識していませんでした。
すっかり、他の人のアラーム音だと思っていました。
さらに、時差があるため、
深夜のド真ん中に鳴ってしまいました。
この事件の後は、スマートフォンを使うのが怖ろしくなってしまいました。
週に一回だけ家族に近況を連絡すると、すぐに電源を落としバックの奥底にしまい込むことにし、日常的にスマートフォンは使わないことにしました。
メールや様々な着信音も、夜中に鳴ったらまずいと思いました。
また、海外でインターネット料金を高額に請求された人がいる…という話を、来た時の空港で耳にしました。
それらも思い出し、スマートフォンの操作が良くわからない状態で、海外で使うことが、さらに恐ろしくなってしまったのでした。
結局、ガイドブック無し、スマートフォン無しで、カミーノを歩くことになるのでした。
子どもを2人、引率して歩くというのに…。
あ~、私、ダメダメだ…。Kumi3
3人は中世の巡礼者と同じになる
私たちは、
中世の巡礼者と同じスタイルで歩くことになってしまいました。
こだわって、文明に反骨心を持って、というわけではありません。
いろんなアクシデントが重なり、
そんな実験めいたことをすることになりました。
しかしそこでふと、サン・ジャン・ピエ・ド・ポーの町で一足先に出発をしたドイツ人の巡礼者、モニカの言葉を思い出しました。
起きることはカミーノの意志よ!
「あなたはカミーノに来たのではなく、カミーノに呼ばれたのよ。だから起きる事すべてが、カミーノの意思なのよ。」と言っていたことでした
この事件に意味があるとしたら、いったいどういう意味だろう…?
自分なりに考えてみました。
ガイドブックがあったなら…
毎晩、明日のルートは?
主だった建造物は?
名物の食べ物は?
お店は?とチェックを入れ、翌日はそれを探そうとするでしょう。
スマートフォンがあったなら
「あ、お姉ちゃんからメールだよ!心配してくれてるよ!」などと言いながらメールの返信を打つでしょう。
ChaiとDenが話しかけて来ても
「ちょっと待っててね、、。」と会話を中断し、返事のメールや写真を送るなど、スマートフォンに向かった作業を、毎日、何かしらするでしょう。
たとえ、短時間に済ませたとしても、
毎日、積み重なっていったら…?
貴重なスペインのカミーノの日々で…?
そうね…。
見方を変えれば、そんなに不安になることでもない…。
昔はこのような状態で、巡礼者は黄色い矢印を見ながらカミーノを歩いていたのでした。
現代の当たり前は、一番上の薄い皮一枚が剥がれて無くなったぐらいのこと。玉ねぎでもキャベツでも中身は何も変わらないんだ。
つまり、とことんシンプルに歩いてごらん。 子どもの全く先入観の無い目と一緒に! それが カミーノが私たちに課した課題 なのね!Kumi3
私たちのゼロからのカミーノ
ガイドブックや、スマートフォンを使わない事で、私たちは、情報が極端に少なくなりました。
けれど、必要以上に知る必要もないと開き直りました。
自分たちなりに感じて歩けばいいんだ!
★巡礼事務所でもらった一枚の紙「町名・宿泊所一覧コピー」があるじゃないか。
★道には黄色い矢印があるじゃないか。それを見ていけばサンティアゴ大聖堂まで歩けるんだ。
★たいてい誰かとすれ違う。困ったときはコミュニケーションを取って情報や知恵を借りよう。
そう思ってみると、急に気持ちが晴れてきました。
地下のトイレから忍び足で、ベッドに戻りました。
みんな眠っていました。ヨカッタ。
それに、真っ暗なので、きっと面が割れていないでしょう…。
私もあしたに備え眠らなくては…。
翌朝、ChaiとDen に、この考えを話しました。
すごいポジティブ・シンキングだね!Chai