43/60カミーノ奇跡、靴を願えば与えられる!サリアから先の注意
5/28(金)→トリアカステーリャ いびきで眠れない 15㎞/€32 原っぱのアルベルゲ @€5×2
夜中、トイレに起きてから、隣のおじさんの呼吸音が気になって眠れなくなってしまいました。
ンゴーンゴーッー..
爆音なのでした。
それは、よくあることなのですが、そのおじさんのイビキは突然止まるのでした。 えっ…?息してない?
しばらくすると
ぐひい~ふっひい~!
そしてまたンゴー、ンゴーッ..
睡眠中の無呼吸状態ってこれなのね…。
一体、何秒止まるのだろう、、と腕時計の秒針を見ながら図ってみました。
26秒間、呼吸が止まっていました。長いっ!
もう一度、呼吸が止まったタイミングで計ってみました。
23秒間でした。
なるほど、誤差は3~4秒か。これがおじさんの限界なのね…。
などと、調査をしているうちに、いつのまにか眠りにつきました。
二度寝は危険!
5時に目が覚めました。周りには、もう起きてそろりそろりと支度を始めている人が何人かいました。
私たちも6時半には起きて7時には出発したいナ。まだ早いわね。
そこで、まだ日誌に書いていないエリカからもらった言葉のいくつかを、忘れないように思い起こしておくことにしました。
「誰もがみんなダイヤの原石なんだよ。そのままでは、ただの石ころだけれど、カットして磨けば必ず美しい輝きを放つ。それをするか、しないかだよ!」
これはエリカが歩きながら、ChaiとDenに話していた言葉でした。私が門前の小僧となって聞いていたのでした。
私はもう、人生の半分くらいを来たけれど、そんな言葉、間に合うかしら?
生きてる限り間に合うのよね…。
他の言葉も忘れ無いようにと、一つひとつ思い出していたところウトウトしてしまい、いつの間にか深い眠りに落ちてしまいました。
気が付けば、8時を過ぎていました。
わあ!寝坊しちゃった〜。アルベルゲはもう誰もいないわ!
多くの巡礼者たちは、次のアルベルゲが満員になってしまうため、早朝に出発するのでした。
完全に出遅れた~!
開き直り、ヨガをして、ゆっくりとカモミールティーを飲みました。
今日、アラン先生は「先にに行くよ。」と言って、アルベルゲの玄関で別れました。
昨日、借りた鍋の持ち主には、タバコ一箱とピパス(ひまわりの種のお菓子)をお礼に渡して返したそうです。
昨日は、アラン先生には本当に助けられたね、居なかったら泊まれなかったよね~。晩ご飯も食べられなかった~。 そうね。本当に!そして近所からお鍋を借りて来るなんて、思い付きもしなかったね!
おかげで、自炊が出来て素敵なディナータイムを持つことが出来ました。
サリアから先で注意すること
巡礼のゴール、サンティアゴ・デ・コンポステラまで残り150kmを切りました。
巡礼証明書は最低100kmを歩いた人から、受け取ることができます。
朝食の時に、アラン先生は言いました。
【サリアから先で注意すること】
●サンティアゴ・デ・コンポステラが近づくと、巡礼者の数が驚くほど増えてきて、宿が取りにくくなる。できれば予約をするといい。
●お店が観光客価格になり、物価が高くなっている。スペイン人価格と外国人価格を設けているところもある。
「よく値段を確認して買わないといけないよ。」とアドバイス。
●貴重品に今まで以上に注意すること。
アラン先生はカミーノの文化、建築物の調査が主な目的でカミーノに来たのでした。人が多くなった巡礼路のラスト100kmは、宿を取るのも歩くのも忙しくなるからリタイヤすると言いました。
アラン先生はフランスに帰り、本の執筆に戻るのでした。
(アラン先生の本は2018年に出版されました。主にルーマニアの木の文化を基調にヨーロッパの民族、歴史、建築について記されています。数多くの写真とイラストと現地のフィールドワークで得た情報で驚くほど内容の濃い一冊です。)
『La-civilisation-des-clairieres( 清算文明)』: Alain Bouras
カミーノは約束しない
9時20分、出発しました。
霧がかかってるね。
向こうが見えないくらいの霧でした。
アラン先生が居なくて寂しいね。いろんな事教えてくれたよね!
そうだね、ヨガも面白かったよね!
巡礼で知り合った人同士は、出発の時、再び会えば一緒に歩き、歩幅が合わなかったら離れ、それでそれきりの場合もあれば、また次のどこかで会える場合もありました。
それは、すべて縁があれば…です。
約束などしないのが暗黙のルール…。
増してや私たちは、子どもたちのペースで歩いています。大人の足には遅過ぎるはずでした。
ベイサン、クリスティーナ、エリカ、アラン先生、、、
今まで皆んな、よく付き合ってくれたなぁ~!
エリカと別れた時みたいに、寂しくもあったけれど、そもそも自分たちでやっていくためにここへ来たのです。寂しがって物足りない気持ちを引きずっていたら、大事な日々を見逃してしまいます。
アラン先生の自然教室の授業を、思い出しながら歩いていきました。
カミーノの自然教室
歩きながらアラン先生が教えてくれた自然教室の一コマを思い出しました。
チェスナッツ・栗の木は長生き
この辺の栗の木は、樹齢300年以上のものがいくつかありました。栗の木は実がおいしいので、他の木よりもとりわけ人々に守られて来たのだそうです。それで、栗の木は長生きなのでした。
樹齢800年の栗の木!
どれだけ大きくて太い幹だか!
家畜が通る道
道の両側が地質がむき出しの5~6mの土の高い壁に挟まれていました。
それは、何百年も家畜が通った道でした。このあたりでは、羊や牛の放牧をよく目にしました。
一日の終わりに、放牧が終わり、家畜を誘導して通ったこの道は、ウンチがボタボタと落ちました。
人々は、それをスコップですくい集め、肥料としていたそうです。それで、いつのまにか道がこんなにも、掘れてしまったのでした。
イラクサとハコベラの関係
シソを小さくしたような茎と葉のつき方をしているイラクサは、小さなとげが付いていて、うっかり触るとかなり痛い、ヒリヒリしてくるのでした。
野っぱらトイレの時など うわ~ん、触っちゃった〜、ヒリヒリイタイよ〜!
「イラクサのすぐ近くには、必ずハコベラが生えているはずだよ。」と言いました。
そう、そのとおり!でした。
アラン先生はハコベラの葉をちぎってクシャクシャに揉み、イラクサのとげが触った手に草の汁を揉み込みました。
すると、なんとまあ!ヒリヒリが治まるのでした。
カミーノの毒草・デジタリン(ジキタリス)
巡礼の後半、リンドウを大きくしたような赤紫の美しい花を、見掛けるようになりました。
日々、そこかしこに揺れていて、慣れ親しみを感じていました。かわいらしいピンクの釣り鐘状の花の中はどうなっているんだろうと手を伸ばしました。
ダメだよ!
アラン先生に止められました。
これはデジタリン(ジキタリス)という植物で、花も葉も根にも毒があるから、触ってはいけないよと教えてくれました。
ヘビに咬まれないためには?
トカゲがいる石の壁には、昼間の暑さでヘビが隠れている可能性があり、近くを歩くと危険なのだそうです。
蛇のジャンプは30㎝ほどだから、石の壁から 50㎝ぐらい離れて歩けば大丈夫だよ、ということでした。
ほんとうに、博学だったアラン先生でした。
エリカは心のレッスン。アラン先生は自然のレッスン。
次々と私たちの前に、師匠が現れては消えていくようでした。
それぞれ心配なこと
昨日、雨が降ったからね、寒いね。
ここは、標高1300mでした。
しばらく歩くと お腹が痛い~
と、しゃがみこみました。
イテテテ…。
でも、もう大丈夫!
しかしまたすぐに
うーん、お腹痛い〜。
歩き出すと30分もしないで、また道に転げてしまいました。
昨日より、今日のほうが辛そうでした。今日一日を歩けるのか心配になりました。
そして、今日は標高1300mからいっきに600mまで、下りの山道でした。普通の体調でもきついというのに…。
ほら、向こうは晴れてきたよ!
石ころ、土ころ、草っぱらの道が続きました。
Den、大丈夫?顔色が冴えないね…。
実は、私自身も顔色が冴えないのはでした。2.3日前から心配なことがありました。
靴が壊れているのでした。両足の靴底の外側が、三日月のように穴が開いてしまいました。そこから小石が入ってくるのでした。
水たまりなど、踏んだら大変!いっきに浸水してしまうのでした。
この辺りは食料品店ですら、なかなか見つかりませんでした。 靴屋さんなんて、さらにないわ~。ああ~、この靴じゃサンティアゴまで、無理だわ…。
何度も小石が入った靴をひっくり返しては、振っていました。
カミーノの靴選び
カミーノ出発前、前日まで靴をどうしようかと悩んでいました。
山用の靴は持っていました。何年か前に買って一回しか履いていなかったので革が固く、しかも重く、靴擦れしそうでした。
いつも履いているアディダスの革のスニーカーは、軽くてすっと履け、とても気楽に思えました。
けれど、800kmの田舎道の行程に持ちこたえられるだろうか…。
やはり、しっかりした作りの靴がいいのかな。
でも、靴擦れしたらつらいしなぁ…。
うーん…。こっち、いや、こっち。迷って決められな~い!
悩みに悩んだ末
履きなれたアディダスで行くことに決めました。
しかし、巡礼初日から、通りすがりの巡礼者たちに
「ハーイ!」という挨拶のあと、
私の足元を指さして「この靴で大丈夫?」とか
「何でこんな靴できちゃったの?」と、わざわざ私を呼び止めて言う人もいました。
その時は 楽だからいいんですっ!。ほっといてよ~!
がしかし、ここへ来て彼らの言っていた意味がやっとわかりました。
距離が長いことももちろんですが、連日続く石がゴロゴロしている道、登り下りで踏ん張る道、そしてアスファルトの道もありました。バックパックを背負っているので、体重と荷物が加算された重さがより強く靴底に掛かりました。ついには、両側の靴底に三日月のような穴が開いてしまったのでした。
まさに他の巡礼者たちの心配は、この事だったのでした。
あーん、どんどん穴が大きくなる~。
私は、アルベルゲにあったようなチラシ、パンフレットなどを固くたたんで靴の穴に詰め込み、何とかやり過ごしながら歩くほかありませんでした。
靴の奇跡‼
靴くつくつくつ、あ~、靴が欲しい!
ふと、道から外れたところに食料品店の看板がありました。
寄りた~い!チュッパチャプス買いた〜い。
けれど、少し前に見つけた食料品店でパンや水、チョコビスケットを仕入れてありました。今日はただでさえ出遅れ、休憩しまくりなのです。
それにその店は、コースからちょっと外れていて少し戻らないといけません。
せっかく次のアルベルゲに向かって、重い荷物を背負って、少しでも距離が近づいているというのに、戻るなんて気持的に許せないのでした。
お菓子はあるからね、却下! 早く行かないとアルベルゲが無くなっちゃうよ!
すると
「大」したいからどうしても寄りたいっ!
いつもなら「大自然の中でどうぞ!」と言う私なのですが、この時ばかりはDenもお腹の調子が今一つだったので そうね~、じゃ、寄ろうか…。
脇道に入り、少し戻ったところにティエンダ(食料品店)はありました。
Denがお店で用を足している間、Chaiはお店を探索、私は干しいちじくとヨーグルトを買い、外で待っていました。
ふと見ると、店の前の大きな木の枝に、靴が実のようになっていました。
お店の人に聞くと「しばらく前からそこにあるよ~。誰か置いていったんだよ。」ということでした。
手が届かない高さだったので、持っていた杖で
「よいしょっ!」と、はたいて落としました。
革のトレッキングシューズでした。雨ざらしだったようで、革がパサパサしていました。
持っていたハンドクリームを出し、その場でベタベタ塗り込みました。クリームが沁みていくと、皮はだんだんと弾力性を取り戻してきました。
ヒモを緩め、足を入れてみると...
うわぁ、ぴったり‼︎
靴はなかなかサイズや幅が合わないものです。この巡礼路でも、時折、置き去りになっている靴をいくつも目にしました。それらは、巨大な靴ばかりでした。
それが、木になっていたこの靴は、まるで私を待っていてくれたかのように、ジャストサイズでした。
Chaiのオムレツの奇跡に次ぐ、靴の奇跡でした。
カミーノは必要なものは与えられる…。
ホントにホントにそうなのねっ!
Made in Spainと書いてある丈夫でシンプルな靴でした。
(その靴は巡礼を終え、日本に帰った今でも履いています!)
これは、Denに感謝しよう。お腹を壊さなければここに寄らなかっただろうから!
新しい古い靴で歩き出しました。
お母さん、ヨカッタですワンっ!靴の奇跡だワンっ!
山道のアップダウン
セブレイロ峠付近から、屋根が黒いものに変わっていきました。
ひゃあ、どんどん下る~。
ちょっと、疲れちゃった~。
今日はChai も先を歩かず、Denの速さに合わせて歩きました。
さっきのお店で買った菓子パン、何味かな?
だんだんと陽が出てきました。
だけど、今度は暑いね~。
バス停をみつけ、座って休憩タイム~!
クレープおばさん
セブレイロ峠を越えてから、このあたりの村は寂しい感じでした。
過疎化が進んでいるのかな…。
犬がいっぱいです。
猫のように自由な犬たちでした。
たくさんいると、ちょっと怖いね….。
石造りの古い家の前を通ると、赤い毛糸の帽子をかぶったおばあちゃんが、お皿に何か持って出てきました。
ChaiとDenの前に立ち、
「食べる?」というようなクイッとあごを挙げる仕草をしました。
ChaiとDenはコクリと頷きました。
おばあちゃんはクレープに砂糖を振ってを四つ折りにし、DenとChaiに渡しました。
「グラシアス!」とお礼を言うと、2人はクレープにパク付きました。
すると、おばあちゃんは私のほうをくるりと向き
「2ユーロ!」と声を上げ、手を出しました。
えーっ?売るなら先に言って~。先にお値段も言ってちょーだい!
押し売りされたようで、不愉快な気持ちになりました。
(その後、着いたアルベルゲで他の数人の巡礼者たちも、途中でおばあちゃんにクレープ買わされた〜!と言っていました。)
3人が協力して歩く
お腹、大丈夫?
うううーん…。
いつもは速足のChaiが、ゆっくり歩いていました。
朝はあんなに霧がいっぱいだったのに、晴れてきたね!
二人はずっと並んで歩いていました。
大丈夫?ほら頑張って!
ChaiとDenが手をつなぐことなんて、ここしばらく見ていませんでした…。
もう少しだよ。
ふぅ~、OK…さんきゅ~。
原っぱの中のアルベルゲ
お腹が痛み、何度も休むDenをなだめながら、やっとアルベルゲに着きました。そこは、広い原っぱの中にありました。草の道を突っ切ると建物の玄関に続きました。
3時半でした。私たちと次の3,4人が入ったあと、スタッフが張り紙を看板に貼りに行きました。
『COMPLETO=満員』
うわっ、あぶなかった~!
クレデンシャルにスタンプを押してもらい、部屋は4人部屋でした。小さい部屋だと落ち着きます。 ああ、疲れた…。やっとベッドが取れた~、横になれる…
シャワーの当たり外れ
さあ、シャワーを浴びに行こう!
先にChaiがザーザーと浴びているので今日のシャワーは大丈夫なのか、、、と思いました。
すると出てきて、顔が青ざめ震えていました。
あれれ、冷たかったの?
ううっ~、うん。水!
え~っ。水だったの!
そして私に「そこは水でしょう、こちらはOKよ。」と私に入るように空けてくれました。
シャワーはときどき個別のアタリ・ハズレがありました。
お姉さんは、お試し済みだったのね。
それから、ルーティンワークの洗濯をしました。
ここは野原が広々として、気持ちがいいね~。
青空の下、物干し台を発見しました。洗濯物をヒモに干しました。ちょっと風が強くなってきて、まるで洗剤のCMのように、洗濯物たちが気持ち良さそうにはためいていました。
ピクニックディナー
今日のお楽しみ、町の探索タイムです。
Denはどうする?寝て待ってる? チュッパチャプスを食べれば元気になりそう!
ホントかいな?
かなり体調は怪しいのですでが、、、。
一緒に行動するに越したことはないので、一緒に歩き出しました。
スーパーマーケットは坂を上ったところにありました。割と大きく、ChaiとDenは大きなミートボールの缶詰、パン、チーズ、チョコレート、ヨーグルト、煮たうずら豆の瓶詰めを買いました。
それに私はつばの広い帽子を買いました。カミーノのホタテ貝マークが付いていました。
アルベルゲはキッチンがありませんでした。
野っぱらに座りピクニック晩ご飯にしました。
うずら豆ビン詰にお砂糖を入れ、かき混ぜると日本の煮豆のようになりました。
缶詰のミートボールは、あちこちのお店で目にしてChaiとDenはずっと気になっていました。ついに買ってみたのですが、味はイマイチでした。
時間は18時でした。私たちにとっては晩御飯ですが、スペインの人は昼御飯と思って食べるようでした。夕焼けが21時半過ぎなので、午後のまだまだ早い時間でした。
原っぱに寝転がり、のんびりを決め込むと うう、、寒気がする…。
そりゃ大変!と早々に部屋へ戻ることにしました。
アラン先生再び!
部屋に戻ると、エントランスの横にある机の上に
『Kumi3, Chai, Den.I found! I’m internet now.』
「見つけたよ! 今、インターネットカフェに行ってるよ。アラン」
という書置きとともに、タコの缶詰、パイの砂糖菓子と、パプリカのオリーブオイル漬けがありました。
わお!差し入れ嬉しい~!!
一緒にお菓子を食べ、タコ缶詰とビールを飲み、夕飯の二次会をしたようでした。
その夜 のどがイタイ〜、頭痛い〜。
おでこと首を触ってみると、かなり熱いのでした…。顔も真っ赤でした。
3日ぐらい前から体調が冴えないDenでしたが、遂に発熱しました。
ここのアルベルゲは一泊しか泊まれないようね。明日は、この町の他のアルベルゲに移動して、巡礼はお休みにしよう。 うん、そうだね。
たいてい、日本でも熱が出ると38度5分ぐらいに上がるのでした。
明日は一日中、Denを寝かせてあげなければ….。