カミーノ鍼灸マッサージ院予約・お問合せ

カミーノを母子3人・60日間・930㎞を歩いた日々・旅ブログ

48/60サンティアゴ巡礼宿最後のベッド争奪!素敵な仲間のヘルプ

WRITER
 
602 サンティアゴ巡礼 差別 カミーノ 芝生
この記事を書いている人 - WRITER -
「中学校に行けないなら、スペインをひたすら歩く旅に出てみない?」と15歳の次女と10歳の弟を連れ、スペインのサンティアゴ巡礼(カミーノ)へ行くことにしました。初日にガイドブックを失くし、スマートフォンも使えなくなるという状況に陥り、私たちはまるで中世の巡礼者のように道にある黄色い矢印だけを頼りに歩きました。かかった日数は60日、歩いた距離は930kmでした。その後長女と夫と2回ほどカミーノの一部を歩きました。
詳しいプロフィールはこちら

6/2()→パラス・デ・レイ 眠れない夜 24.5km/€32  公営宿@€5×3

 

昨日の朝みたいに、また朝焼けが見たいね!

Kumi3

前の晩に相談し、朝5時に起きる予定にして早めにベッドに入りました。

3人とも二段ベッドの上の段しか取れませんでした。

柵があるから大丈夫だよ!

Den

二段ベッドは4つ、十字の仕切りのようにくっ付いていて、ChaiDenが隣同士、私が一人で寝るようでした。

私の隣は、女のひとが来るといいな…。

Kumi3

ドミトリーのベッドでは、いつも思う事ですが、確率は50%なので

だっだらいいなあ…、程度の望みでした。

しかしその望みはあっさり消え、私の隣は、国籍は分からない西洋人の太った大きなおじさんでした。

お互いに「ハーイ!」と軽く挨拶を交わしました。

親切そうな人でよかった!

Kumi3

後はそれぞれ、いい意味の無視をして、終始それぞれ自分の支度をするようでした。

 

その夜は、再び暑さで寝苦しい夜でした。ChaiとDenは枕の向きを変え、3人の頭が十字の中央に寄るように、寝ていました。

暑い、あつ~いよ~...

Den

と、寝付けずにもがいていました。

暑がるDenの顔にむけ、ノートをウチワがわりにしてあおいでやりました。それでDenは、なんとか寝入ることができました。

Chaiはわりあい、どんな状況でもスーッと入眠できるタイプでした。

Chaiはお得よね~。

寝顔のほうを見ながら思いました。

そして私はこの晩、カミーノで最も眠れない夜を過ごすのでした。

それは、暑さで寝苦しいだけでなく、隣のベッドのおじさんのいびきが

半端ない爆音なのでした。

んがあ~おお~

ボリュームは、未だかつて経験したことの無い大きさでした。

眠っている人が、こんなに大きな呼吸音を出すのだろうか

叫び声に近い

かなりのショックを受けました

うう~!耐えられな~い!

Kumi3

しかもおじさんは、私のすぐ隣

暗闇の中、私だけでなく数人がおじさんのいびきで眠れなくなっていることが伝わってきました。

爆音ボリュームのいびきの狭間に

「はぁ~...。」残念な気持ちのため息が部屋のそこここから聞こえて来るのでした。

私は耳をふさいだり、寝袋に頭から入ったりしたのですが、どうしても耳に障ってしまうのでした。

気分転換にトイレへ行ってみたのですが、それでまた目が冴え、寝付くのが出直しになりました。

まずい…、眠らないと。明日歩けない!でも眠れない…、ああ~焦ってきた…。

Kumi3

どんどん、どつぼにハマっていきました。寝返り打って、寝返り打って、、。朝方まで、寝苦しさを記憶していました。

ガサゴソした音で、ハッと気付くと5時半になっていました。まわりの大半の人は起き、出発の支度を始めていました。

もう、おじさんたらっ!

と目を向けると、ベッドはもぬけの殻でした。

もう行っちゃったんだ。あ~ん、ろくに眠れなかった〜!

Kumi3

おじさんは自転車チームのようでした。 今頃、さっそうとカミーノを駆け抜けていることでしょう。

私は、ベッドに横にはなってはいたので、

休まった、睡眠した、睡眠した…!と

自分に暗示をかけました。

 

目覚ましの儀式

 

DenChaiを起こし、足にクリームを塗りました。これはもう起きるよ〜!という目覚ましの儀式で、カミーノ初日からずっと続けていました。足にマメを作らないための対策でもありました。

何とか6時には出発することが出来ました。

 

ピーコック色の空。

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう ポルトマリン教会

四角い教会がとてもきれいに映えました。

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう ポルトマリン朝焼け 建物

川を渡りました。

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう ポルトマリン朝焼け 木々

町が終わっていきます。

朝の静かな空気と、夜明けの蒼い暗さが、どこか知らない世界に冒険に出るような気分になりました。

(十分、毎日が冒険ですが、、、。)

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう ポルトマリン朝焼け 木二本

朝焼けが始まりました。

 

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう ポルトマリン朝焼け ピンク

雲と朝日がピンク、紫、水色、、、ドラマチックに展開していきました。

すごくきれいだね~。早く出てよかった。

Den

こんな素敵な朝焼けショーを観れるなんて『早起きは三文の徳』ってこのことね。三文て、昔のお金のことなんだけどね。早起きしたらちょっと小銭が儲かるぐらい、お得なことがあるよ!っていう諺があるのよ。

Kumi3

6時前には、アルベルゲの半分以上の人が出発してたね。STおじさんも行っちゃったよね…。

Chai

 

昨日の夕食の時のSTおじさんとの話を思い出し、心が元気になってくるのを感じました。子どものころから新幹線の運転手になりたいじゃなくて、

なる!って決めていたという

「信念を強く持ち続ければ叶う!」というシンプルで強力なメッセージでした。

 

ライ麦パンの朝ごはん

 

1時間ほど歩くと、空が明るくなってきました。

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう 田舎道夜明け12

お腹すいてきたね。

Den

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう ポルトマリン朝食

バックパックに座り、朝食をとりました。

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう ポルトマリン朝食ライ麦パン

日本では見向きもしなかったライ麦パンにチーズを挟んで食べました。

シンプルで美味しいね。日本でもこういうパン食べたいな。

Chai

ホントね!でも日本では手に入りにくいのよ~。もっと手軽に全粒粉や、ライ麦のパンが売っていたらいいのにね。

Kumi3

 

 

サリアから先のたくさんの人

 

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう 田舎道夜明け12並ぶ風景

わりあいに開けた田舎道をしばらく歩いていきました。

途中、サンティアゴまでの残りのキロ数が、道標上にしばしば出てきました。

道標を見ながら、計ってみたらね。750歩500m進むことが分かったよ!

Chai

ということを発見しました。

私は、68㎞の道標をみて

え~、あとそれだけ…!!

Kumi3

と、カミーノに終わりが来ることへの寂しさを感じていました。

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう ポルトマリン朝焼け 2

これ見て~!

Den

と足元をみると

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう トカゲ

こんなトカゲがいました。タッタッタッター!

カワイイー!

Chai

黙々と歩くとき、こんなカラフルなトカゲは気持ちを和ませてくれました。

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう 田舎道12一列

あっ、あれは牛の糞!気を付けて~。

Kumi3

サリアから先は歩く人が増えてきたのを感じました。10時過ぎ、後ろから話し声が近づいてきました。

振り返って見ると、スペイン人の15人ぐらいの団体でした。遠足のようないでたちで小さなリュックを背負い、楽しそうなおしゃべり声が聞こえてきました。

ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ〜

それは絶え間なく続き、声のボリュームがどんどん大きくなり、迫ってきました。

うわ、たくさん来た~、抜かされたら大変だよ~!

Den

 猛ダッシュで歩き始めました。

うん、それに、このあたりの景色はイマイチだから早く抜けようよ。

Chai

と、それに続きました。

私たちは、競歩選手のように、腰をくねくねしながら、超特急で歩きました。

それで、11時には15km以上進んでいました。

バルを見つけ、ひと休みしようと入っていくと、そこにSTおじさんがいました。

STおじさんは、すごく早いペースで歩くと聞いていたので、追いついたなんてびっくりでした

やった!追いついた〜!

Den

STおじさんも目を丸くして

「この時間に、よくここまで来れたね!」と驚いていました。

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう ランチ

バルの外テーブルで、カフェラテと一緒に、ランチをとりました。あいかわらずいつものメニュー(リンゴ、パン、チーズ、サラミ…)なのですが、いつもお腹すいて食べるので、飽きることなどないのでした。

少しするとSTおじさんの休憩は終わったようで

「じゃね!あとでね〜!」と出発して行きました。

そして私たちも

はい、またどこかで〜!

Kumi3

と答えました。

縁があれば、きっとまた会えるね!

 

どうしてカミーノにきたの?定番の質問

 

私たちもバルから歩き出しました。

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう 田舎道石造り家 12

田舎道を行きました。

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう 田舎道おじさんとロバ

わあ、ロバに荷物を持ってもらってるんだ。犬も一緒、しかも逆行してる…。

Den

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう 犬モニュメント

家のワンコを思い出しちゃったよ…。

Chai

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう 墓

これは、スペインのお墓だね。

 

30分ぐらい歩くと、バルに日本人らしきおじさんがいました。

その人はSNおじさんといいました。STおじさんと同じぐらいの年齢でした。

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう 田舎道犬 12n

ちょうどカフェを出るタイミングだったようで、一緒に歩き出しました。

SNおじさんも、なかなかの速足でしたが私たちに合わせ歩いてくれました。

 お互い、巡礼で出会ったもの同士の質問は、たいてい決まっていました。

 『どうしてカミーノに来たの?』でした。

挨拶がわりの答えを歩きながら話しました。

私は、カトリックではないのですが、いつか、サンティアゴ巡礼に行きたいと思っていたのです。娘が体調を崩したのをきっかけに学校を休んで来ているのです。でも、学校では教わらないたくさんのことを、子どもたちはカミーノで教わっていると思います。

Kumi3

SNおじさんは、同年代の友人が、ここ数年で3人も亡くなってしまったそうです。いつか行ってみたいと思っていたスペイン巡礼を

「もう、今いかなくていつ行く?と思い立ってね。」という訳で、ここに来たのだそうです。

SNおじさんは、仕事で住んでいたこともあり、スペイン語、英語、フランス語、イタリア語が話せるのでした。

わあ、すご〜い!

Chai

 

カミーノ仮家族

 

私たちは、行く先々でファミリーに間違えられました。

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう 田舎道林 12n

すれ違う人々やお店やバルで

「あら、家族でカミーノ?いいわね〜!」と挨拶がわりに声を掛けられました。

始めはその都度

「違うんですよ〜、たまたま会った同じ日本から来た仲間で〜」と説明していたのですが、途中で面倒になり

「そうなのですよ〜。」と返しながら歩きました。

SNおじさんもChaiDenも、ニヤニヤ笑いながら

「ウフフ、まあ、いいやね。カミーノ仮家族ってことで!」

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう 田舎道牛 12n

牛がよく太ってるね!

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう 石造り倉庫

SNおじさんは「この細長い建物は、オレオと言う穀物倉庫なのだよ。ガリシア地方特有なんだ。」と教えてくれました。

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう 田舎道12並ぶ森

途中から日差しが強くなってきました。

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう 田舎道石造り家 赤い花12

SNおじさんは「ガリシア地方の石造りの壁はケルト人から伝わっているんだよ。」と教えてくれました。

 

2時頃、やっとアルベルゲに着きました。

暑かったね〜

Chai

アルベルゲのすぐ向かいのバルに、STおじさんが休んでいました。だいぶ前に到着し、既にチェックインを済ませていました。

あ~、STおじさん!また会えたね!

Den

「はやく、アルベルゲにチェックインしておいで。それから一緒にランチしよう。」と言いました。

SNおじさんは「不眠症気味なので、この近くのペンションに、すでに予約をとってあるんだよ。」ということで、このアルベルゲにはチェックインしなのでした。

STおじさんとSNおじさんは、テーブルを囲み

「私たちは先にビールを飲んで待っているからね〜。ベッド確保しておいで~。」

ハイ、了解で〜す!

Kumi3

と、私たちはおじさん二人に送り出され、向かいのアルベルゲに入りました。

 

アルベルゲの受付の列に並ぶ

 

アルベルゲの受付から続いている、列の最後尾に並びました。

見ると受付けの大きなおばちゃんが、一人で手続きをしていて、なかなか列が進みませんでした。

そんな中、SNおじさんが「まだか~い?」と様子を見に来ました。手にはバルで出されたグラスのビールを持っていました。

「おーい、ひと口!今日は暑かったね。お疲れだ~!」

私はぐび~っ!

うわぁ、なんて美味しいビール!この最初の一口が最高!!

Kumi3

と、グラスをSNおじさんに返しました。

「まだ、時間かかりそうだね。STおじさんとランチ食べないで待ってるからね~!」

SNおじさんは、ニコニコしながらバルへ戻っていきました。

そうやって、ひとくちの幸せを運んで来てくれた粋な計らいに、大感謝でした。

ずる~いっ、あとでコーラねっ!

Den

ハイハイ。

Kumi3

 

アルベルゲのチェックイン待ちの列は、その後も人がどんどん増えていきました。振り返ると、15ぐらい並んでいました。

わあ、いつの間に!列が外まで伸びてるよ~!

Chai

受付の大きなおばちゃんは、一人5ユーロを受け取りクレデンシャルにスタンプを押したあと、ベッドチケットを切って渡していました。

私たちの前に、小さなデイパックを背負ったスペイン人のマダムグループがいました。その一人が、受付のチケットの番号をチラ見しに行き、戻ってきました。その人が並んでいる人を数え始めました。

「あなたたちで終わりじゃないかしら。

ラッキーね!

と言いながら振り返り、かわいいハイタッチをしてくれました。

チョン・チョン・チョン!

そうですか、良かった~!

Kumi3

後ろから、今歩いて着いたばかりのお姉さんが、わしわしと受付まで番号を見に入って来ました。ベッドチケットの残りの番号並んでいる人数を数え出しました。

そして、私たちのすぐ後ろの人に

「この辺から無理かもよ!」と声を掛けました。

お姉さんはそのまま道に戻り、歩き去って行きました。

私たちのあとに並んでいた15ぐらいが

「オ~ッノ〜!」一斉に溜め息やガッカリした声を上げ、よろよろとバックパックを背負い、アルベルゲから出ていきました。

うわぁ、ヨカッタ~!ぎりぎりセーフだったね!

Den

 

並びながら見回すと、アルベルゲの玄関奥の階段下に、ニコニコした顔が見えました。

ChaiDen

あ、ホセがいる〜!

Chai

二人はピョンピョン跳ねながら喜びました。

オラ~!

Den

というと

「こんいちは~!」

ホセは、ちょっとあやしい日本語で返してくれました。

私たちがチェックインするのを待っている様子でした。

 

ベッドをめぐるバトル

 

もうすぐ私たちの受付の順番でした。クレデンシャルを広げ、お金をおつりが無いようにして待っていると

おばちゃんは、まさかの…

「フル!」(満員)と言いました。

そして、ついさっき入ってきて後ろに並んだ2人のスペイン人を入れようとしました。

えっ?泊まれないって、なんで~?

Kumi3

「ノ、ノ、ノー!」おばちゃんがダメ!と言っているのがわかりました。

強いネガティブな響きが伝わりました。

そして、なにやらおばちゃんが

○○!×××□△~!!」と言った

その瞬間!

階段の下に居たホセ

「なんだとっ~!(多分スペイン語で)

おばちゃんに突進して怒鳴りました。

おばちゃんも、負けてはいませんでした。

□×○!」と何やら怒鳴り返し

ホセの肩を突き飛ばしました!

ヒッ!こっ怖い~!!

Kumi3

私は、おばちゃんの迫力に、驚き怯えました。

ひっ!

Den

ChaiとDenも目を丸くして震え上がりました。

おばちゃんとホセの

突き飛ばし合い怒鳴り合いが続きました。

周りに居合わせた人が二人を引き離そうとしましたが、それから暴れ逃れつつ、激しい口論は続きました。

私たちは何が起きたのかが解からず、

オロオロとその場に立ち尽くすほかありませんでした…。

 

すると、ホセの友だちのお兄さんお姉さん3が、

「大丈夫、泊まれる。今のうちに行こう!」

と、私たちのバックパックを抱えて、階段を駆け上って行ってしまいました。

え〜っ荷物!あっあの…!

Kumi3


私たちは、靴をぬぎぬぎ、バックパックと彼らの後を追い掛けました。

 

アルベルゲの部屋に隠れる

 

3階の部屋に入る所で追い付きました。

部屋に荷物を置くと、ホセの友だちのお姉さん2人が

「こっちこっち!」と部屋の奥へと案内してくれました。

「私たちは、マットを持っているから、そこで寝るわ。あなたたち、このベッドを使っていいわよ!」

と、チェックインしたばかりの自分たちのベッドを差し出してくれました。

私たちにそんなことを言ってくれるなんて…。

その申し出に胸が熱くなりました。

「ムーチョ・グラシアス!」と答えたものの

でも…、でも…、いいのだろうか…。

Kumi3

あまりの急展開に頭が回りませんでした。

まだ、ホセとおばちゃんの怒鳴り声が聞こえてきました。

不意にお姉さんが

「隠れて!」というので、私たちは部屋の奥の入口から死角となる壁にぺったりと貼り付きました。

人は川の字になった立ちんぼで、しばらく息を殺していました。

おばちゃんは各階の部屋を探して回っているようでした。バタバタした足音と、怒鳴る呼び声が聞こえて来ました。

私たちはヒソヒソ声で話しました。

ううう、怖いよ~。

Den

ね、ChaiDenどうする?このまま彼女たちの申し出をありがたく受けて泊まる?それとも、おばちゃん怖いし

Kumi3

そうやって泊まると、タダで泊まることになるよね。まずくない?どうしよう

Chai

お姉さんとお兄さんたちが、入り口に見張りに立ってくれていました。

今はここで息を殺し立っているしかないのでした…。

 

あ~ん、お腹すいた〜。

Den

ああ、待たせている!私たちがなかなか来ないから、きっとSTおじさんとSNおじさんは心配しているはずだわ。

Kumi3

...

んん…??

怒鳴り声がおさまり、外が静かになりました。

入り口で見張ってくれているお姉さんに言いました。

向かいのバルに行きたいのです。友だちが待っています。心配しています。この状況を説明しないといけません。

Chai

Chaiの英語と私の身振りを加えて一緒に言うと

「オッケー!でも、今おばちゃんに見られるとマズいね、付いてきて!」とお姉さんが先頭に立ち、階段まで誘導してくれました。

おばちゃんは、この4階建てのアルベルゲの中のどこかにいるのでした。不意に出てくるかもしれません。

私たちは身をかがめ、忍者のようにぬき足さし足で移動しました。

これは遊びではなく、本気のおそろしく緊張したものでした。隠れて様子を窺いながら、お姉さんに付いて進みました。

階段まで来ると、お姉さんは

「オッケー、大丈夫そうだよ!4階に行ったみたい。今のうちにGo!」とささやき声で私たちを送り出してくれました。

 

叫びながら強行突破!

 

階段は学校のように広く、半分降りるとUターンをするようでした。

私たちは階からそろりそろりと降りて行きました。

一階までもう少しのところで

ひっ!

Kumi3

息を飲みました。

階段の途中におばちゃんがいました。

うわっ、下にいたんだ

Chai

私たちに背中を向け、誰かと立ち話をしていました。

私たちは、しばらく階段の上に身かがめ、様子をうかがっていました。おばちゃんは、なかなかそこを動く気配がありませんでした。

私は、ここがダメならもう2km、

それがダメならその5kmでも、歩くのは仕方ないと思いました。

けれど、ホセの仲間たち45人が、いままさに私たちのために、頑張ってくれているのでした。私たちが泊まれなかったとなると、おばちゃんと再び怒鳴り合いつかみ合いが始まるかもしれない…。

そして、おばちゃんは本当に怖いのでした。怒鳴りながらホセを突き飛ばした時、ホセの身体がすっ飛びました。その迫力に度肝を抜かれました。

ヒイイ、見つかったら絶対、叩かれる

Kumi3

わわわ、怖い〜!

Den

おばちゃんのおしゃべりは、続いていました。私たちは息を殺して待っていました。ただただ時間が過ぎて行きました。本当は短かったのかもしれませんが、とても長く感じました。

ああ、冷や汗…。いつまでこんな…。

どうしよう、バルでおじさんたちが心配して待っているし

Kumi3

え~い、強行突破だ!

DenChai、いいかい?おばちゃんに目を合わさなで、階段を一気に駆け下りてバルまで走るよ!靴は履かないでいいから!

Kumi3

うん、わかった!

Den

OK

Chai

いくよ~!

ドカドドドッ〜・・・

おばちゃんは、その足音に振り返りました。

私たちを見るなり

「◎✖▽▲✖✖~!!」

怒鳴り声をあげ通りざまのDenのシャツをひっ掴みました。

ぎゃぁっ!

Den

パシッ!

私も瞬時にそれを振り払い

うわあああ~!

Chai

3人とも大声をあげながら階段を駆け抜け靴下のまま、向かいのバルへと掛け込みました。

 

アドバイスは流れに任せる

 

ハアハアハアハア…。

Kumi3

STおじさん、SNおじさんのSSコンビは

「どうしたの?遅かったね~。と言いながら

私たちの慌てぶりに、目を丸くしました。

ハアハアハア、これこれこういう訳で、、、、

Chai

今さっきの事件の一部始終を説明しました。

お姉さんたちがベッド使っていいよって言ってくれたんだけど、おばちゃんがすごく怖いの…。

Den

いま、とりあえず抜けてきました。まだ3人のバックパックは階にあるままなのです。スペイン人の巡礼仲間4,5人が私たちが泊まれるようにと協力してくれて。それで…、私たちは、どうしたらいいと思いますか?

Kumi3

お金を払いたくてもおばちゃんは怒ってるから難しいし。どこか別の宿へ行ったほうがいいのかな….

Chai


STおじさんSNおじさんのSSコンビは、腕を組みながら考え出しました。

「うーん、そうだな、そこまでホセたちが言うのなら、

流れに任せてみたら?とSTおじさん。

「そうだね、

地元スペイン人の、彼らのやり方に添ってみるのも有りだね。とSNおじさん。

そう…、そうですね。流れに任せてみましょうか…。

Kumi3

とにかくとにかく…、腹ごしらえしよう!

ハンバーガーセットとコーラをChaiDenに、わたしは野菜サンドセットを頼みました。

 

602 camino bar バル 12stsn

安堵感が押し寄せ、私たちはお昼ご飯をワシワシと食べました。

ああ、おいしい~!

まともな食事は久しぶりのような気がしました。

そして、嬉しい事におじさんたちがご馳走してくれました。

有り難うございます!!

バルでひと息ついていると、ホセがやって来ました

SNおじさんさんがスペイン語で受け答えをしてくれました。

ホセは言いました。

アルベルゲのおばちゃんは…、

私たちのベッドの空きを、別のスペイン人に回したかったのでした。そして残念なことですが

「東洋人にあげるベッドはないわ!」と言ったそうです。

それを聞いた瞬間

ホセは頭に血がカーッ!と上って

「こんな小さな子どもが、炎天下のなか25kmも歩いて来たっていうのに!

何で断るんだ。差別するのか!

それに、臨時用のマットが向こうにあるのを見たぞ。

もっと人数が泊まれるはずなのに!

何でそんな意地悪をするんだ!」

と、怒鳴ってしまったのだそうです。

しかし、おばちゃんは主張を変えず、口論は続いたのでした。

そうだったんだ…。

さらにホセは、私たちのために、最良の方法を考えてくれていました。

「ここから1km離れたところのアルベルゲに予約が取れたから、そこに行くといい。このアルベルゲは、おばちゃんも最悪だが、シャワーも最悪だ。男女いっしょでドアも釘もないから、ChaiKumi3は、多分シャワーを浴びれないだろう。」と言いました。

1kmなんてへっちゃら。大丈夫!!

Den

ホセ!私たちのためにありあがとう!

Chai

なるほど、流れとはそういうことになったか。

よかった…。気が楽になった!

Kumi3


私たちは、バックパックを取りにアルベルゲに戻ろうとすると、ホセの友だちが3階の部屋からバックパックをバルまで運んで来てくれました。ついでに靴もお願いしました。

「おばちゃんに顔を合わせるとややこしくなるから、このまま行けばいいさ!」

うん!

ホセ、かくまってくれたお姉さん、荷物を運んでくれたお兄さん。

みんな、本当にありがとう!

私たちは、それぞれハグをして別れました。

603 カミーノ リバディソ・デ・バイソ 123仲間たち

ホセ!またどこかで会えるだろうか…。

 

タクシーに乗っちゃっていいの?

 

そのkm先のアルベルゲは、たまたまSNおじさんの泊まるペンションの近くでした。

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう 街並み 12n

私たちは、一緒に歩き出しました。

まだまだ暑いね、今日は疲れたでしょう。ビールも飲んだことだし、ここはタクシーで行きましょう。」とSNおじさんは言いました。

これまた、ありがた~い!

正直、寝不足とおばちゃん事件、そして暑さでクタクタ。

さらに、バルでビールを飲んでしまったので、バックパックを背負って歩き出すと、フラフラしていました。

ところが、ChaiDenは声を上げました。

ええ~!、乗り物に乗っちゃうの?

Chai

全部歩いたってことに、ならなくなるよ~

Den

躊躇しました。

とにかく、ここも流れで行こう!ホセが予約してくれたアルベルゲにたどり付けなかったら、それも困るからね。

Kumi3

ChaiとDenは、釈然としない顔をしていました。

SNおじさんがタクシーを呼んでくれました。私たち4人は荷物をトランクへ入れたり、抱えたりして座席に小さくなって座りました。

歩いて20分の道のりをタクシーは5分で、ピューン!と移動しました。

 

二つ目のアルベルゲ

 

アルベルゲの前にタクシーが止まりました。

私たちを降すと、SNおじさんはそのまま座席に残り、ペンションへと向かいました。

 アルベルゲに入り、受付でホセの名前をいうと

「ああ、OK〜!聞いてるよ。」

と、スムーズにチェックインすることができました。

 

シャワーと洗濯を終えると、やっと落ち着きました。

新しいアルベルゲは、キッチンがありましたが、まわりには一軒もお店がありませんでした。

今日と明日の食料を仕入れておかないといけません。最初のアルベルゲの町は、バルやスーパーメルカド(マーケット)が近くにあり、賑やかでした。

ね、思ったのだけどね。さっきの町に戻って買い物しようか。そして、タクシーに乗った区間を歩き直せば、乗り物に乗ったことにならないんじゃない?

Kumi3

うん!無事チェックインできたって、ホセたちに知らせたいな。

Chai

うん!そしてコーラとチップスも買おうよ。

Den

ChaiとDenの顔がパッ!と明るくなりました。

Chaiは、何やらノートをちぎってメッセージカードを作っていました。

 

タクシーに乗った距離を歩き直す

 

アルベルゲにバックパックを置き、さっきの町へ戻ることにしました。

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう教会23

途中、教会がありました。

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう教会 椅子

中に入ってみました。

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai 向かう教会祭壇

素朴な祭壇を見学しました。

バックパック無しで歩くと足取りも軽く、すぐに町に着きました。スーパーメルカドを発見し、ピザやヨーグルト、パンにハム、シリアル、果物などを買い込みました。

コーラとチップス、ホセたちにも買おうよ!

Den

わあ!サクランボ。美味しそう!これもホセたちやSNおじさんに、お土産に買っていこうよ。

Chai

グッド・アイデア~!

Kumi3

買い物が終わりました。

 

サクランボの差し入れとカード

 

最初のアルベルゲに行ってみました。多分、定員まで受付を済ませると、オスピタレロは居なくなってしまうのが、ガリシア地方に入ってからのアルベルゲでした。

でも万が一、おばちゃんがいたら気まずいので、入口の外で、ホセたちが来ないか待っていました。

待ち始めてすぐ、ベッドを譲ってくれたお姉さんが、通りがかりました。

聞くと「ホセは出掛けてしまって、何時に戻るかわからないわ。」ということでした。

では、これみんなで食べてください。

Chai

コーラチップスと袋一杯のサクランボにChaiが用意したカードを添えて渡しました。

カードに書いた言葉は

”Thank you Jose and beautiful friends!”

でした。

お姉さんは

「ワーオ!」と声を上げ、

ビッグスマイルで手を振りながら、アルベルゲの中へ入って行きました。

これで、ホセも安心してくれるね。私たちのために、あんなに頑張ってくれて、涙がでるほど嬉しかった。

Kumi3

まだ残る日差しの中、3人はタクシーで飛び越えた道を、歩き直しました。

これでタクシーに乗ったことにならないね!

Den

DenChaiは、満足そうなピカピカした顔になっていました。

 

青空の下ブランコセラピー

 

道の途中、SNおじさんにのペンションにも、サクランボを届けに寄りました。

美しい芝生に囲まれた、山小屋風のしゃれた建物でした。

「ほら、こんなとこだよ。見てみるかい。」

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai  ペンション部屋2

落ち着いた木調のシンプルな部屋でした。

これで、45ユーロならいいですね

Kumi3

「たまに、こういう所へ泊まるといいよ、ドミトリーだと、イビキや話し声で眠れない時があるでしょう。」SNおじさんは言いました。

ええ、ええ、まったくその通りです!

Kumi3

と、力強く頷きました。今朝のアルベルゲは

まさしく爆音イビキで、睡眠崩壊でしたから!

ペンションの外に出ました。芝生は公園のようになっていました。

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai  芝生 ディナー

木のベンチとテーブルに座り、晩御飯にしました。

今日のおばちゃん、怖かったね~!

Den

でもさ、いつも誰か救いの神が現れるよね~!

Chai

ことのほか、おいしく感じられる野っぱらディナーでした。

食事が済んだ後、ブランコに乗りました。

途中、SNおじさんが芝生に出てきました。

イタリアにはね。ブランコセラピーという心理療法があるんだよ。大人もブランコに乗ると童心に返るでしょ。それで、うつが治ったりするらしいのね。裸足で乗るのがいいんだよ。」と教えてくれました。

 

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai  芝生ブランコ13さっそく裸足になりました。

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai  芝生ブランコ3

わはは~い!

Kumi3

Denは、芝生に大の字になりました。

602 Camino カミーノ パラスデレイ papas de rai  芝生ねころび2

気持ちいい~や。

Den

私もChaiも、ブランコから降りてDenの真似をしました。

スペインの青空の下、自然と笑いがこぼれ身体がプカプカと浮かびあがるようでした。

プラスマイナス、プラスだね!怖い事もあったけど、優しさがいっぱい詰まった一日だったね!

Chai

 

 

この記事を書いている人 - WRITER -
「中学校に行けないなら、スペインをひたすら歩く旅に出てみない?」と15歳の次女と10歳の弟を連れ、スペインのサンティアゴ巡礼(カミーノ)へ行くことにしました。初日にガイドブックを失くし、スマートフォンも使えなくなるという状況に陥り、私たちはまるで中世の巡礼者のように道にある黄色い矢印だけを頼りに歩きました。かかった日数は60日、歩いた距離は930kmでした。その後長女と夫と2回ほどカミーノの一部を歩きました。
詳しいプロフィールはこちら

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Copyright© 子連れサンティアゴ巡礼・旅ブログ , 2024 All Rights Reserved.