47/60新聞に載る!長距離巡礼者の絆・夢は決めると本当になるよ!
6/1(火)→ポルトマリン 暑さ限界の寝苦しい夜 16.4km/€51泊、素敵な四角教会の町 @€5×3
私は夜中、お腹がぐわぐわした違和感で、目が覚めました。枕もとに置いた懐中電灯で荷物を探り、整腸剤を探して飲みました。 暑い、アツ〜イ。ああ~、寝苦しい。何でこんなに汗をかくのだろう…。熱でもあるのかしら…。
すると、下の段のベッドに寝ているDenが、蝉の幼虫のように、はしごを這い登り上段の私のベッドにやってきました。 アーン、暑いヨー、アツーイ…。
時々、Denは私のベッドに寝袋を引きずって入ってきました。二人で寝るには窮屈、けれどDenが怖い夢で怯えたり不安を感じて、何となくママの隣で寝たいと思うときは、いつでもウェルカムにしていました。
幼児でもないのにママと一緒に~??と思われるかもしれません。
けれど、Denは男の子、あと2~3年もすれば、身体も大きくなり、変な声と変なヒゲで親離れしていくのは目に見えているのでした。 こんな風に甘えて頼りにしてくるのも、一生のうち、あとほんの少しの期間なのよね〜。
増してこのカミーノ暮らしは、毎日が違うベッド、違う枕で寝て過ごしているのでした。
日本でさえ、寝相が悪く、朝起きると枕が足にあり、逆さまになっていることが、しょっ中あるDenはよくベッドから落ちないで寝ているなぁ〜と感心しているぐらいでした。
寝ながらも、それなりに緊張感を持っていると思うのです。
しかし、5分もすると…
ヒーッ、やっぱり上もアツ〜イ!
しかし、本当に暑い!
この部屋は、通路を挟んだ両側に2段ベッドが並んでいました。その夜は熱帯夜でしたが、エアコンはおろか、換気も無しでした。
暗闇の中、多くの人が暑さで寝苦しく身をよじり、寝返りをうち、やり場のなさに耐えている気配が、そこここに感じられました。 うーん、このベッドは「行」と思うことにしよう…。
けれど、いつのまにか寝入っていました。
朝5時15分に電気が点く
ふと、ガサガサ支度する音、シャワーを浴びる音で目が覚めました。
気が付くと、まわりの人々が出発の支度を始めていました。どのベッドも手探りで動いていました。まだ、窓の外は真っ暗でした。腕時計を見ると えっ、5時?みんな早いなあ!
それが5時15分!でした。 わあ、こんな早い時間に電気を点けられたのは初めて〜!
アラン先生が言っていたのはこのことか…。
部屋の巡礼者たちは我れ先に!と出発して行きました。
普段、寝ぼすけの私たちも、危機感を感じ、なんとかそれに続きました。
一昨日は、ラッキーでした。巡礼仲間がシェアしてくれたので民間のアルベルゲの個室をリーズナブルな価格で泊まることができました。ですが、この先、アルベルゲがフル(満員)で泊まれなかった場合、ホテルやペンションだと、1人が一泊40ユーロぐらいすることもあるのだと聞きました。
それは痛い出費です。 是非とも避けたいわ~。
6時に起こすね、と言っておいたChaiとDenですが、起こすことにしました。5時20分でした。
突然の早い出発の声掛けも 暑いね~、うん、いいよ…。外に出たほうが涼しいかも。 ここ暑い〜、よく眠れなかった~、もう出発するの?わかった~。
闇夜の月、版画の中を歩く
3人は、起きてから超特急で支度をし、アルベルゲをあとにしました。
6時前には出発することができました。
わーっ、真っ暗!
懐中電灯で、黄色い矢印を探しながら進みました。
わあ!月がきれい!
黄色い矢印を見失わないように…。
濃紺の空、木のシルエットに囲まれました。 版画の中を歩くみたいね~。
月があるのに太陽も出てきたよ!
仕方なく泊まったアルベルゲの意味
突然起こしたから、眠い~!とか、文句が出るかしら…?
外のが涼しくて全然いいね!
わあ!夕焼けみたい。きれいだね~!
畑もおはようの時間だよ~!
ChaiとDenは思いのほかサクサクと進み、むしろ暗い早朝から歩くのを楽しんでいました。
昨日のアルベルゲには、仕方なく入った感じがあったのですが、そこにはいくつかの巡り合わせがありました。
私とChaiが真紅の薔薇を貰ったり、欲しかったXDカードが手に入ったり…。
更に、この素晴らしい夜明けを歩くために、あの暑苦しく寝苦しいベッドが存在していたのかもしれない…とさえ思えてくるのでした。
日中、かなり暑くなるので、今までも朝5時台に出発したいと思っていても、3人の寝起きと支度を繰り上げることが難しく、実行出来ずにいました。 朝焼け歩き、一度やってみたら良かったね!これからは朝型になって歩こうよ。
うん!涼しくていいね。
昨日の寝苦しいベッドはさ。この朝日の中を歩くために必要だったのよ。失敗は成功のもと。アンラッキーはラッキーのもと!
ママは楽天家だもんね。
朝日の美しさと息苦しさ
空が明るくなり出すと早い早い~。
デジタリンだって綺麗きれい!(別称ジギタリス・毒がある)
カカシ君、夜明け前までは、自由に動きまわっていたんじゃないの?
わあ、眩しくて行き先が見えないね!
朝の光の美しさと裏腹に、明るくなった世界に目に付き出したのは、牛の糞がいっぱいということでした…。
Denはニオイに敏感なので うーん、鼻で息ができなーい!
牛の出勤
このあたりの道は、牛の牧場があちらこちらにありました。
さあさあ、ホルスタイン種チーム、牧場へ出勤ですよ~。
モーッ!ジャージー種チームは、草っぱらに出勤済みでした。
あと100㎞の道標!
何でもない道端に座り、パンをかじりました。
やっぱり、牛のにおいがするんだよな~。
仕方ないでしょ。慣れるしかないんだから。
あ、あれ見て!
道の途中、あと100kmの道標を発見しました。(落書きが残念…。)
あと、もう少しでサンティアゴ大聖堂だね!
あなたたち、新聞で見たわよ!
4~5人のスペイン人のグループが私たちを追い抜いて行きました。
と同時に
「あなたたち、新聞で見たわよ、日本から来た親子でしょ。わあ、ほんとにそうだわ!一緒に写真を撮っていいかしら!」と声を掛けてきました。
「いつの新聞ですか?」と聞くと、2~3日前の日曜版に特集されていたのだそうです。 へえー、見たいなあ。
一緒に写真を撮りました。
「スペインに来てくれて嬉しいわ!あと100km、お互いに頑張りましょうね!」と励ましてくれました。そして、速足で先に行ってしまいました。 どこかで、その新聞を探してみようね。
2010年5月31日(日)前後のスペイン、ガリシア地方の新聞(多分)に、私たちの記事が出ていたそうです。当時の新聞を持っている方、または何かご存じの方、おられましたら是非、メールにて教えてください!一応、ここで呼びかけておきます。(^^)
石がゴロゴロで歩きにくいけど、、この石の柱は助かるね~。
そしてとうとう、あと二桁になったよ!
99㎞!
無人休憩所のおもてなしに2度びっくり!
まだ10時前でしたが、陽が昇り暑くなってきました。
ちょっと止まって上着を脱ごうか。
途中、バルで1リットルの水を買いました。
休憩ターイム!
再び、歩き出しました。今日はいいペースで進んでいます。
道の途中、民家の前の机に果物がいっぱい載っていました。
その横に[DONATIVE](寄付)と書いてありました。 わぁこれ、ありがたいね〜!
素敵な企画にびっくりしました。
それぞれ、バナナとリンゴとキウイをいただきました。小銭をかき集め、お皿に入れました。
わーい、嬉しいね!
写真を撮るね~と言っている間に、DenとChaiは歩き出しました。
パチリ!と写真を1枚撮ると
今いくよ~、待って〜!
5分ぐらい歩いたところで…。
あ!1リットルのペットボトルの水を、机の上に置き忘れたわ~!
えーっ!あれ、まだ水が3分の1ぐらい残ってたよね?
そう、水は大事だものね!
仕方ない…。
来た道を戻りました。トホホ…。
すると、また びっくり。
え〜⁉ 嬉しい~‼︎
飲みかけの1リットルのペットボトルの水が、満タンになっていました!
親切だね!お礼を言いたいね。
門を少し入って
オラー、オラー!
が、誰も出て来ませんでした。
見てるか見てないか、
聞こえるか聞こえないかはわからないけれど、
ペットボトルの水を高くかかげ
「ム〜チョ・グラシア〜ス!」
3人は、大声で叫びました。
無人見張り付き販売所
ペットボトルの水を無事に手にし、歩き出しました。
途中、中世の巡礼者のような出で立ちのおじさんが犬と一緒に歩いていました。
しばらく行くと、またさっきと同じように家の前に机がありました。
その上にポットに入ったコーヒー、水桶に入ったコーラ、ジュースがありました。
横に「€1」と書いてありました。
これは、無人販売所なんだね。
うわっ、あそこの柱の陰から、ほらっ、人がこっちをジーっと見てる!
そーっと見回すと、あらま?この家の人かしら…。
確かに私たちを柱に隠れながら注視しているのが分かりました。
なんだかちょっぴり怖いので
私たちは、まったく手を付けずスルーしました。
歩きながら かえってドナティブ(寄付)の方が、みんな気軽に立ち寄って、お金入れていくのにね。
カミーノで犬が...
田舎道をしばらく行きました。
すると11時頃、センスのいいバルを発見しました。
敷地の中の外テーブルと椅子で、休むことにしました。
カフェレチェとチーズケーキをたのみました。
おいしい!チーズケーキの甘さとコクが最高!
カフェからの眺めもいいね~! 今朝の出発はバタバタしたけれど、これで疲れが飛んでいくわね~。 あ~、このまま眠りたいなぁ〜。
とホッコリしたのも束の間、にわかにテーブルの周囲がざわざわと騒がしくなりました。
2頭のシェパード風の巨大な犬が、私たちのテーブルの周りをウロウロし始めました。
落ち着いて食べられないほど、寄って来ました。
食べものが欲しいのかな…、でも、チーズケーキはあげられないよ!
すると、オスとメスらしき2頭の大型犬は、私のすぐ横に来て、止まりました。
そこに留まると、二頭はあやしい動きを始めました。
なんと、すぐ隣でおんぶガエルのように交尾を始めました。
すると、Denがゲラゲラと笑い出しました。 なにあれー!?変なの、ギャハハハ~!
あらら〜。もー、何でわざわざここで…。
まてよ….。
これは、性教育のいい機会かもしれない…、と考えました。
Den、笑っちゃいけないのよ。これは交尾っていってね。
オスには精子、メスには卵子が、それぞれの性器の中にあってね。それがくっつく事を「受精する」って言うの。受精すると、心臓がドッキンドッキンと動き出して、生命が生まれるの。赤ちゃんが出来るのよ。
そのために、しているのが今のこれ、交尾ね。子孫を残すために、とても大切なことなんだよ。
ふーん。
しかし、ワンコたち….。
私のすぐ横でず~っと…。
大きな犬だから、存在感のあること….。
なんだか落ち着かないので、食べ終わると直ぐに出発しました。
さ、いこうか!
Ⅾen、学校で保健の時間にやらなかった?
うーん、女子だけ集められてやったような気がする…。
ポルトマリン・アルベルゲ着36番目
石垣にヘビがいるかもよ。50㎝は離れて歩くんだって。アラン先生が言ってたよ。
橋を渡るとアルベルゲのある町、ポルトマリンでした。
長い階段がそびえ立っていました。荷物があるので、階段の上りは一段一段がきついのでした。
うんしょ、うんしょ、ふうっ~。
片足でリュックと身体を、勇気を出しつつ引き上げるのでした。
ChaiとDenはきゃんきゃんと跳ねるように階段を登って行きました。
てっぺんに門が見えました。
そこをくぐると、ポルトマリンの町が始まりました。
この町はとても分かりやすいのでした。マカロニウエスタンの映画のように、大きな通りの両側に、お店が軒を連ねていました。
そこをずんずん歩いていくと
四角くて、大きな丸い窓の素敵な教会がありました。初めてみるデザインでした。
その先を、まだまだ歩いて行くと、
あった、あった!
アルベルゲは、人が並んでいるので、すぐに分かりました。
入り口から、大きな荷物を足元に置いた人々が、それぞれに休んでいました。時間は13時半でした。
まだまだ、定員まで余裕でした。このアルベルゲは150人が泊まれます。DenとChaiは、何回も入り口から待っている人を数えました。
36番目だよ!
前のほうにホセがいたよ!
150人定員で余裕と思っていましたが、一時間後には、ここも満員になってしまいました。
ホセ発見!
30分ぐらい待ち、玄関がオープンしました。
ここ、ガリシア地方は、
ひとり一律5ユーロでした。(2010年当時)
クレデンシャルにスタンプを押して貰うと中に入りました。
オラー、ホセ!
ホセはスペイン人で英語が上手でした。前のアルベルゲでChaiの弾くピアノを正座して聞き感激してくれ、みんなでムカデ鬼ごっこで一緒に走り回りました。
また、日本に来たことがあり、カタコトの日本語が話せました。
とっても親しみやすい陽気なお兄さんのホセと、DenもChaiもすっかり仲良しになっていました。
ここのアルベルゲの受付でも、やはり紙シーツをもらいました。それは使い捨てのため、朝になると部屋のすみに、ゴミの山ができました。 仕方ないのよね…。ベッドバグという、南京虫の防止策なのだから。
たしかに、ベッドバグが一匹でもベッドに居たら、身体中を刺され、ひどい痒みと皮膚のただれで、旅ができなくなるぐらいのダメージを受けるのです。
一度、冗談で
「かゆいなあ、ベッドバグかなあ〜?」と、ひと言口にしました。
すると、アルベルゲから出たばかりの巡礼者たち4~5人が、
急に私のそばから飛び離れました。
「どこで?」「どこが?」「今の宿?」「ベッドの場所は?」
と質問攻めにあいました。
あ、これは、冗談でも口にしてはいけない、深刻なことなのだわ…。
キッチンに道具がない
ポルトマリンのアルベルゲに入り、荷物を置き、キッチンのチェックをしました。
あら、ここも綺麗なキッチンなのに、調理用具が一つもないのね…。
キッチンに来た人は皆、ため息や残念な声をあげていました。
ホセも仲間たちも怒っていました。
「お湯ひとつ、沸かすことができないじゃないか!」
私たちは、気持ちを切り替え今晩は冷たいディナーと思い決めました。
シャワーをササッと浴びました。特にトラブルもなくOKでした。
洗濯も協力して、サササッと終えました。
ポルトマリンの町探索
さて、一番楽しい時間、町探索に繰り出しました。
メインストリートを行くと
昨日に引き続き、お葬式が行われている所を目にしました。
花束が歩道に続きました。
クロスのモニュメントがありました。
途中のお店でDenが、カミーノケーキを発見しました。お土産屋さんやスーパーでよく見かけるものでした。
これは、昨日のアルベルゲのデザートに出ました。アーモンドプードルが入っているマドレーヌのような焼き菓子でした。
これ買って~!
昨日食べて、味が分かったからもういいよ~!
スーパーメルカドを発見しました。私たちの好きなディア・スーパーマーケットでした。
日焼け止め、パン、ハム、チーズ、オレンジ、タコの缶詰、水、ポテトチップス、
さっき、ケーキを断られて残念だったDenにチュッパチャプス…。
今晩は、乾きもので豪勢にいこう!とカゴに入れレジに並ぶと
日本人ぽい人がいるよ⁈
見回すと日本人らしきおじさんがいました。
向こうも私たちに気が付いて
「あれ?君たちは日本から?」と聞きました。
「あら、日本の方ですか?」とわたしも聞きました
「おー、おーーっ!」と互いに歓声が上がりました。
おじさんは、私たちの分のビールとコーラを買い足してくれました。
アルベルゲまで、4人並んで歩き出しました。
外のベンチに食べ物と飲み物を広げ、さっそくパーティーが始まりました。
お疲れさま、カンパーイ!!
おじさんはSTさんと言いました。
夢はなると決めると本当になる
STおじさんは、もと新幹線の運転手だったそうです。
息子さんが、去年この巡礼に来て
「おやじ、行ったら。きっといい!」と勧められ、今年ひとりで来たのだそうです。
あれこれ今までの旅の話、日本での話…、STおじさん、私、Chai、Den、順繰りに主役となり脇役となり、止めどなく話しました。
同じ、厳しい道のりを歩いてきた長距離巡礼者でした。なんだか、それだけで、出会って数時間なのに
互いの気持ちの距離の近さを感じました。
STおじさんは、DenとChaiに向き直して座り
「おいちゃんなぁ、子どもの頃の夢は新幹線の運転手って決めていたんだ。
なりたい、じゃないんだよ。なる!ってね。そう決めるとね、不思議と夢は叶うんだよ。
とニコニコしながら言いました。 「なりたい!」じゃなくて「なる!」だね。
なんてシンプルで強いメッセージだろう! STおじさん、ありがとう。コーラとビールもご馳走様!