11/60カミーノで悲しくなったアルベルゲ、追い出されたキッチン
4/26(月)→トレス・デル・リオ / 道草カミーノ 8km /€29 民間宿@€7×2
ロス・アルコスのアルベルゲで朝食をとりました。
7時半でした。
Chaiは『町名と宿のプリント』を見ながら
今日は、どの町まで行く?
ほんのちょとだけ、横になるね。
え~、寝ないでよ~っ!
一時間遅れ、8時半の出発になってしまいました。
アルベルゲの看板。
ロス・アルコスのアルベルゲ、さようなら~!
カミーノを歩く集中力が散漫
天気が良いね~!暑くなりそう。
今日は、歩きやすい平坦な道なのですが、私たちの進みはおそろしく遅いのでした。
オラ~!こんにちは!こっちおいで~。ね、ママ、パンのかけら出してよ。
水溜まり跡に、杖で落書きをしてみたり…。
わあ、石を積んでいこうよ。 やだ~、アルベルゲ着くのが遅くなっちゃう、はやく行こうよ~。
菜の花が、のんびり、サワサワと揺れて咲いていました。
でもまあ、急ぐ旅ではないから、好きなように探索していいのじゃない?
わたしたちは 道草カミーノなんだから。
道に迷った昨日は30㎞近くの距離を炎天下の下を歩いていました。
今日は疲れが出たのでしょう。歩く集中力に欠けていました。
さ、のんびり行こうか~。
休憩、休憩、休憩…
ちょっと休みたい。
水分補給は大事ですネ。
しばらく緩やかな上り坂が続きました。
ねえ、チュッパチャプスある?
黄色い矢印とホタテ道標が
「こっち!、こっちだよ!」と
教えてくれます。
しかし今日のDenは、ちょっと歩くと、
水飲みた〜い!もう一本チュッパチャプス〜ちょうだい!休もうヨ~!
トレス・デル・リオの町が見えてきた
トレス・デル・リオの町が見えてきました。
わあ、飛行機雲がいっぱいだ~。
トレス・デル・リオの町は見えたものの、なかなかたどり着きませんでした。
あ~ん、疲れた。休んでいい?
え~、また? 5分前に休んでるんですけど…。
今日のゴールは、もう少しだ~!けれど…、
すでにDenはバテバテでした。
休みたい~。疲れたよ~。うっうっ〜。
ついに、道にへたりこんでしまいました。
沈黙… 3分経過… 5分経過…。
ずっと、こうしてもいられないよね。どうする?どうしたい? ううっ、休みたいから歩く…。
おお!Den、なんだか
すごい名言…。
「休みたいから歩く…。」
一見、矛盾しているようですが
アルベルゲに着かない限りは、本当には休めないのでした。 そう、その通り!
そうして、Denはノロノロと立ち上がり、再び歩き出しました。
間違って入ったアルベルゲ
トレス・デル・リオにたどり着きました。
まだ12時前ですが、アルベルゲに入ることにしました。
今日あたり、がっつりと洗濯がしたい!と思っていたので、ちょうど良いと思いました。服がどれも薄汚れ、汗臭くなっていました。
アルベルゲを探しました。公営のアルベルゲに泊まる予定だったのですが、その少し手前にあった民間アルベルゲに、うっかり入ってしまいました。
1人7ユーロはちょっと高いので (公営は5ユーロぐらい)、行こうとすると、宿泊代は私とChaiの分だけでいいよと言ってくれました。
それは有難い!とチェックインすることにしました。
レセプションの男の人に、設備を確認したところ
「ここは 洗濯機もあるよ、キッチンも使えるよ!」とニッコリして親指を立てました。
うん!それならいいね、バッチリだわ‼︎
サンティアゴ巡礼の定番お昼ご飯
荷物を置くと、外にあるテーブルに座り、昼ご飯を食べました。
カミーノでお昼の定番メニューは、パンとサラミと果物でした。ナイフでパンに切れ込みを入れ、ササッと具材を挟みサラミサンドにしました。
日射しがせまって来て、テーブルの日陰がどんどん無くなっていきました。
バルの向かいの家の前に日陰のベンチがあり、そこで食休みをしました。
ロス・アルコスで親切にしてくれたカップルが、手を振りながら通り過ぎていきました。
最悪の洗濯、母は怒鳴る…
さて、腹ごしらえを済ませると、次は洗濯でした。
ChaiとDenに声をかけました。
洗濯機に入れるから、洗濯物を出して~。
2人とも、バックパックの中の下着やTシャツ、泥だらけのズボンなど、山のように出しました。
しかしDenは、室内着のズボンを、もう10日間もはいているのに、洗濯に出さずにいました。
それも脱いで。洗うから。替えのズボン持ってるじゃない?
もう一つのズボンは、ママが勝手に選んだから、ゴムが伸びててヤダ。
え?ママが勝手に~⁈荷作りした時に、最終チェックは自分でしたはずでしょう⁈
あのズボン、ずり落ちてきて、はけないんだもん。
じゃ、Denは今まで、はけないズボンをリュックに入れて、 だってママが~! 人のせいにするなっ!
ムカムカしながら、汚れたものを集め洗濯機に入れ、洗い始めました。
すると、5分ぐらいして
洗濯機が、ガクガクッカタカタ~…
ゴトンッ。
あれ?途中なのに、止まっちゃった。ボタン押し直してみようか。
洗濯機は、うんともすんとも動かなくなりました。アルベルゲの人を呼びに行きました。男の人が来てくれ、スイッチやコンセントを抜き差ししたのですた、どうやっても動きませんでした。
男の人は、苦笑いして
「オ~ノ~!」と手を広げて見せました。
どうやら洗濯機は停電?か故障のようでした。
もお〜っ、結局全部手で洗わないといけないのね。やだ〜!
踏んだり蹴ったりとはこのことでした。
洗濯槽から、水を含んだ重い服をバケツに移し、手洗い場に運び石鹸でもみ洗いをしました。
3人分の着替えやタオルは、けっこうな量でした。服をしぼる作業も、力仕事でした。
最悪の洗濯、私は再び怒鳴る…
私とChaiが暑さの中、汗をダラダラ垂らしながら洗濯をしている横で、Denは床に座り込み、膝の間に頭を埋めたまま動かないでいました。
さっきのゴムの伸びたズボンのことでイジけたたまま、洗濯を手伝おうとしないのでした。
ムカッ!!
私は再び怒鳴ってしまいました。
みんな働いているのにナニっ!その態度はっ‼
Denは、思いきり私をニラみつけ
ふくれっ面で、イヤイヤ手伝い始めました。
2階の窓のロープに、洗濯物を全て干し終わるまでの約1時間、私とDenは険悪な時間を過ごしました。
こういう時、Chaiは妙に気を使い、サクサクとよく動くのでした。
終わって外のベンチに座りました。
見上げると、いま干した洗濯物が目に入りました。汚れた服がお日さまのニオイになって乾いていく。
普段なら、それはシアワセな光景なのですが、今日はそれを少しも感じませんでした。
つまらない気持ちが、胸いっぱいに充満していました。
たまたま、アルベルゲの隣にティエンダ(食料品店)がありました。
ビールとチップスを買い、日誌を集中して書くことで私は個室に入った気持ちになることにしました。
「どうしたのぉ~?」と犬が見てきました。
Denも、漢字ドリルをやり始めました。
普段は声掛けをしてイヤイヤ取り掛かるはずなのですが、ムカつくママの側に居なければならない時間を、それをやって潰す!ようでした。
ここは海外、見知らぬ街なのでした。
旅の親子は24時間、基本的にはずっ~と一緒なのでした。気分転換に1人で町をほっつき歩く…、という訳にはいかないのでした。
日誌を書いているうちに、私のささくれた気持ちは、段々と収まってきました。
最悪のキッチン、私は怒鳴られる!
そうだ!、今晩は美味しいトマトパスタを作って、みんなの気持ちを寄せてみよう!
大きな玉ねぎ、パスタ、瓶入りトマトソース、ツナ缶を買いました。
アルベルゲのキッチンでお湯をわかし、フライパンを温め油を敷きました。刻んだタマネギを炒めようとザザッ~とフライパンに入れた
その時...
不意に宿の若い女の人が現れました。
そして
「ここでは、料理はできない!」と言うのでした。
私は「どうしてですか?」と聞くと
「換気扇が壊れているから無理!」と言って換気扇を指さしました。
そうは見えないけれど…、
動いているし…。
「キッチンが使えると聞いています。」と言うと
「No!」
せめてフライパンの上のタマネギだけ、火をいれさせて下さいと、指さしながらお願いしてみました。
「No!」
女の人の態度は、頑なでした。
そして
「GET OUT!! Right now!」
(出ていって、ほら早く!)と
怒鳴り、私たちを追い立てました。
私たちは、怒鳴られて飛び上がるほどビックリしました。
そして、その女の人の目を見て、ゾッ!としました。
凍りそうな冷たい目…、
私は一瞬で、怯えてしまいました。
その表情には、考えたくはないけれど
「東洋人..ダカラカナ…?」
という考えが浮かびました。
慌ててChaiに指示をだし、用意したビニール袋にフライパンからタマネギをザザッと入れました。大急ぎで食材を片付けると、私たちはキッチンから慌てて飛び出しました。
駆けこむように再び、外のベンチに座りました。
ひどいねっ、あの態度!意味わかんないこと言われて追い出されたね!
キッチンを使っていけないなら、いけないで 普通に…。ふつうに言ってくれたってわかるのにっ!怒鳴るなんて…。
あの見下した態度は、何だったのだろう?
心がぞわぞわしました。
生の刻んだタマネギの入ったビニール袋がここにありました。油が付いていて生温かいままでした。
こんな風に料理を中断されることの無念さ。それも相まって、私は徐々に怒りの感情がにじみ出て来て、いたたまれなくなってきました。
巡礼者は、リュック一つで旅をしています。ビニール袋のたった1枚だって貴重なのでした。
今だって炒めたタマネギを入れるために、洗濯バサミの入っていた袋を慌てて逆さにし、空のビニール袋を作り、タマネギを入れたぐらいでした。
さらにこの先、キッチンがどこにあるかわかりません。明日の宿にあるとは限らないのです。刻んだタマネギ、パスタ、トマトソースの瓶、ツナ缶…。
今日使い切ると思って、全部、封を開けてしまいました。
お店には返せません。
私たちにとって、重さは大問題でした。
これらを持って運ぶことは、大変なことでした。
キッチンが使えるということだったから買ったのに…。
洗濯機も結局は、止まってしまい手洗いだった…!
泊まるんじゃなかった。こんなところに‼︎
最悪のキッチン、さらに私はショック!
アルベルゲの男の人が戻ってきました。
私は「キッチンが使えると聞いていたのに、女の人にダメと言われました。どうなっているのですか?」と身振り手振りで尋ねました。
すると男の人は、チェックインの時と変わらない親切さで
「オ~。そうでしたか。待ってて!」と言って女の人を探しに行ったようでした。
少ししてから、
さっきの女の人が、私たちを呼びに来ました。
私たちは、怯えながら後を付いて行きました。
そして、女の人はキッチンに入ると私たちに向かって、話し始めました。
信じられないことに、いま、全くの別人になっていました。
満面の笑顔を浮かべながら
「ハイ、換気扇はここ、お皿はここ、フォークはここ、ゴミはここね。どうぞゆっくりしてね。ウフフ!」とキッチン内を丁寧に案内してくれました。
すぐ近くで、男の人(上司かな…) が何か作業をしていました。
私は、さっきとあまりに違う女の人の態度にショックを受け、息をするのも苦しく感じました。
アルベルゲには、他の巡礼者も次々と到着し、キッチンで料理を始めました。女の人は注意をすることもありませんでした。
せめて、さっきは勘違いだったとか、さっきは強く言い過ぎたとか言ってくれたらいいのに。
私は、ボーゼンとツナとトマトのパスタを作りました。
テーブルに運び、3人で食べ始めました。味もよくわかりませんでした。ChaiとDenはおいしいと言ってくれたけれど、私は返事も上の空、抜け殻のようになっていました。
Denは、自分のせいかと思ったようで ママ、今日はごめんね…。
違う、違うのよ…。
Denのことなんて、とっくに許しているよ!
あの女の人の態度…。
あんな風に憎しみのこもった目で、人を怒鳴りつける事が出来るなんて。
さらにその後、男の人(上司)がいるからって?
気味の悪いほど優しい態度に変わるなんて…。
何でそんなことが出来るんだろう?
悲しくて、悔しくて、そういうことが嫌すぎて、動揺がおさまりませんでした。
そして今日、アルベルゲに泊まっている巡礼者は、私たち以外、皆んな欧米人でした。
今日、感じたことなんだけどね。人によって態度を変えるって、すごくイヤなことだね。やるほうも、やられたほうも、本当に悲しいことだよね…。
オレンジの光はいつも優しい
散歩に行こうよ。
うんいいね。まだまだ、日が暮れないものね。
三人は、サンダルを履いて歩き出しました。このアルベルゲには、居たくありませんでした。
教会が夕陽を待ち始めました。
町も夕陽を待っていました。
オレンジの光はいつも優しいね。
あたりを暖かい色に染め、今日一日をなだめてくれるようでした。
夕日が、山の向こうに完全に落ちたのが21時半でした。
もう帰ろう、眠くなっちゃった~。 うん、わたしも。
その夜、私はなかなか寝付けませんでした。今日のキッチンの女の人の冷たい目を忘れようとしても、目に焼き付いているのでした。
ダメだ~。あした一刻も早くここを出よう。