27/60スペイン・メセタ大地17㎞一本道、ネジが飛び笑いながら歩く
5/12(水)→カルサディージャ・デ・ラ・クエッサ 卓球の朝練 27㎞/€27 @€6×2
朝7時、 卓球の朝練をしてくるね!
出発の支度するあいだいいよ〜。8時にはバルで朝ごはん食べようね。 もう少し! もう少しね!
2人は、昨日の8時間の連続卓球で、かなり上達していました。
卓球…。
ChaiとDenが二人でこんなに真剣に遊べることって…、カミーノで見たことがありませんでした。
いや、日本でも。
4歳の年齢差、女子と男子の興味も異なり、これほど2人が長時間、一緒に遊ぶことはありませんでした。
あまりに熱中してやっているので、 止めさせるのもヤボかしらぁ~、もったいないかしらぁ~…。
が、しかし気がつけば8時半になっていました。
もう、いい加減にして!朝ご飯食べなさいっ!
また、今日も出遅れてしまいました。
ホタテリュックのプレゼント
出発まえ、バル兼アルベルゲのマスターが見送りをしてくれました。
おじさんは「指圧、ありがとう!カミーノ頑張ってな。」とみんなを励ましてくれました。
ムーチョ・グラシアス!
ハグしてお別れをしました。
おじさんは別れ際に、ホタテの形をしたリュックをChaiとDenにくれました。
わあ、かわいい!嬉し~い!
ココロもカラダもフル充電することができました。
名残惜しい別れをエネルギーにして、今日はいっぱい歩こう!
とその時、心に思ったのかもしれません…。
景色が単調になってきて思う事
しかし天気は、雨が降りそうで降らない、はっきりしない空でした。そのせいかしら…。
淡々とした市街地を歩き、舗装された道、ガードレール、工場…。気持ちがスカッとしない景色が続きました。
今にして思うと、最初の頃のピレネー山の見晴らし、パンプローナに続く野原の景色は素晴らしいものでした。
けれど、あの時はそれを楽しむ余裕が全くなかったのでした。
バックパックが重い…、足が痛い…、巡礼の旅生活に慣れていない…。
歩くことで精一杯でした。
そして、この景色は、いつまでも続くのだと、何も気にせずにいました。
巡礼暮らしに慣れてきて、周りを見回す余裕が出来てきたこの頃ですが…、
景色は単調になってきました。 あのピレネーの素晴らしい見晴らしは、あの日のあの時だけだったのね。今ごろ気が付いたわ…。
(デジカメの写真を再生し、カミーノの始まりから順に見ながら思ったことでした。) あの美しい山や見晴らし、森を、もっと味わっておけばよかったナ…。
これは、普段の生活でも言えることかもしれません…。忙しく大変過ぎて、一番充実していた時期が記憶にない、ということがありました。
それって、後になって気が付くのよね~。
その時その時を、味わって楽しまなければ!
そして…、
私たちは3人は会話をしながら歩くことができました。
もし、1人でカミーノに来たなら、単調な道にいくらか退屈し、今日みたいな、どんよりした空だと、孤独感が押し寄せてくるかもしれません。また、巡礼仲間とのやりとりで、時には気疲れするかもしれません。
私は、常に子どもたちの生活をサポートしているという意識が背中に貼り付いていました。それで寂しさや不安でカミーノを迷うスキはありませんでした。
今朝みたいな卓球の暴走に一喝したり、3人のパンと水の調達と食事のバランスを思案したり…。
守るものがあるという事は、気持ちが強気の方向にせせり立っています。それは盾となり、余計な邪気を寄せつけない役割となっていました。
逆に私は、子どもたちに
気持ちを守られていたのかもしれません。
B級グルメ・ランチお楽しみ会
お昼ごろ、町になってきました。 ディア・スーパーマーケットがあるよ!
わおっ!
気持ちにメリハリが出てきました。
いつでもスーパーマーケットは楽しい〜!
いま持っているパンは硬くなっていました。 みんな、パンに合うお昼ごはんを自由に買ってよ~し!
わ~い!
3人はスーパーマーケットになだれこみ、それぞれ好みの食品をチェックし始めました。
そうそう、いつものお菓子を仕入れておかなくちゃ!
全粒粉のチョコサンドビスケット、3パックで1ユーロでした。
これは美味しくて、安くて、一番人気のおやつでした。
どうやらこの近くの高校生たちがお昼休みのようでした。それほど大きくない店内に30人ぐらい居て、レジはすごい行列でした。
それでもスーパのレジ係の人は、慣れた素早い手つきで、お客をサクサクとさばいていました。 ここのレジは、なんだか日本ぽいわ!
私たちは、それぞれの好きなものを買いました。
Denはスプレー缶入りの生クリームを買いました。
Chaiはアプリコットヨーグルト。スペインのフルーツ入りヨーグルトは具がぎっしりです。500㎖のジャンボサイズでした。
他、チーズと洋ナシ、オレンジ、トマトを買いました。
私はスペインのうずら豆の水煮をひと瓶買い、砂糖を入れてスプーンでかき混ぜてみました。 ああ、煮豆のよう。この味はあんこに似ている…。プチ日本食だわ!
少し歩き古い教会の庭のベンチに座り、ランチタイムにしました。みんなそれぞれのお気に入りを、硬くなったバケットパンに付けて食べました。
硬いパンが生き返ります。お互いにシェアして、楽しみました。
おいしい!
さいこーっ!
うまっ!
思い思いの言葉で、感動しながら、今日のB級グルメ・ランチお楽しみ会は終了しました。
あ~あ、食べ終わっちゃった~。
さて、重いバックパックを背負わなくちゃ…。
謎のブロンドの彼女
教会の庭を出て歩き始めると、小柄でブロンドの彼女とバッタリ出くわしました。
すると彼女は、いきなり
「何を食べたの?」と聞きながら、食料が入った私の手提げ袋に手をつっこんで、中を探り出しました。 ええっ!
何回か彼女を目にしていますが、この時初めて言葉を交わしたのでした。
整った顔立ちの彼女は、なんだか目がうつろでした。歩き方もふらついていました。私たちに、何か早口でまくしたてると、行ってしまいました。
Chaiは、彼女の背中をみて あの人、変じゃない?なんか酔っ払ってるのかな?
ね~、あの人覚えてる!、Denのレインウエア、着ていた人でしょ?
ChaiとDenは、2人とも何かを感じとったようでした。
挙動不審…。
謎のブロンドの彼女でした。
旅のアンテナ・本能的なカンを鍛える
旅に出たらカンに頼ることも多いのよね~。
このカミーノだけでなく、旅に出ると頭のてっぺんにアンテナが立つ感覚を感じます。それは楽しいこと、危ないこと、何か変?なことを瞬時に嗅ぎわける本能的なアンテナです。
私が、子どもを連れて旅に出ることの大きな理由の一つは、この本能的なカンを鍛えることにありました。
そのために、以前にも子連れでアジアのバックパックの旅などを、していたのでした。(そのうち、ブログにしていきますね。しばしお待ちください。)
旅の鉄則!あやしいものに近付かない
実は、私は数日前からブロンドの彼女が気になっていました。
昨日の犬と芝生とハンモックのアルベルゲで、Chai とDenは卓球大会、私はフランスの指圧セラピストと指圧マッサージ大会をしていたときのことでした。
ご飯をご馳走してくれたバルのマスターへ、お礼の指圧マッサージが終わった時
「私もマッサージやってほしい!」とナイスタイミングで、ベンチにうつ伏せに転がりこんできたお姉さんがいました。それがブロンドの彼女でした。
バーベキューの仲間うちで、指圧マッサージをしていたのですが、断る理由も無いので「OK!OK!」とフランス人おばちゃんと私でコラボし、上半身、下半身とマッサージを分けて施術をしてあげました。
マッサージが終わって
「やあ、いつから歩き始めたの?」と
巡礼者同士のコミュニケーショントークを、自然に始めようと思ったのですが
「あ~、気持ち良かった!」と言うなり
サ~ッと立ち去ってしまいました。
残された私とフランス人おばちゃんは、目を合わせ、手のひらを広げて肩をすくめ
「あらまあ!」というジェスチャーをしました。
フランス人のおばちゃんセラピストは
「彼女は若いから~。」と言っていました。せめて、どこの国から来たのかぐらい、おしゃべりしてほしいと思いました。
また、思えば一週間前、トサントスというアルベルゲでも、ブロンドの彼女に会っていました。
朝、出発前にDenのレインウエアウエアが行方不明になりました。
外は雪が降っていました。レインウエアを防寒着としても使っていたDenにとって、なくてはならないものでした。
もう外に出られない!と玄関で半ベソをかいていたDenでした。
階段を下りてきたブロンドの彼女が、なぜかDenのレインウエアの上下を着込んでいました。
「そのレインウエア、この子のものなんです。」と言うと「あら!」と素早く脱ぐと、そのまま
サーッと消えてしまいました。
何で人の服を勝手に着ちゃうんだろう⁇。
謎だなあ、この人…。
と思ったのが最初でした。
それから予期せず、何度も会ってしまうのでした。
さらに、ブルゴスの大きなアルベルゲの非常階段で、夜遅く騒ぐ声がしました。
そっとドアを開けて階段を覗くと、若い男女4、5人のグループがビール、タバコ、ギターでパーティーをしていました。 あ、またブロンドの彼女がいる…。もう、10時よ~。みんな寝てるよぉ…。
小心者で英語力のない私は注意も出来ず、心の中で叫び、そのままベッドに戻りました。
そして、今日また、ブロンドの彼女に手提げ袋を探られてしまいました。3人とも やっぱり、あの人何かあやしい…。
黄色の警戒ランプが点滅でした。
旅の鉄則、あやしいものには近付かない!
17㎞の道、行くの行かないの?
曇り空、雨が降りそうで降らないので助かりました。
古い建物、そして商店街もありました。
子どもたちの好きなkikosです。時間は12時半、歩いた距離は10kmほどでした。
どうする?この町は楽しそうだね。アルベルゲもあるよ。泊まる?
私は、行くか泊まるかは必ず2人の判断に任せることにしていました。
次のアルベルゲはどのくらいで着くの?
ここから17kmの一本道を歩いた先だよ。その間、何もないんだって。水もお店も。行くなら食糧を仕入れていかないとバテちゃうね。どうする?この町に残ろうか?今、13時だよ。
いつもなら、13時~14時ぐらいには、その日に泊まるアルベルゲに着いていました。私はこの町に残りたい~と思いました。
天気も曇りでいま一つだし、古いたたずまいが素敵なこの町、探索してみたいなぁとも思いました。
ね、この町に泊まりたいよね。みんなもそうでしょ? ね、ね、そうでしょ〜?
先に行こう‼
あ~、そうなのね…。わかったわ。。行こうか…。
17km延々と続く原っぱへ。
「本当に行くのかい?」魔女みたいな木が、問いただしているようでした。
「遅いなぁ、 いくよ!」子どもたちは気合十分!
途中で見た、のんきな羊の群れに癒されました。
歩き出してちょっと後悔…。 わ、ほんと遠いなぁ~。
「もう、引き返せないのはわかってるだろ?」と木が言っているようでした。
道はゆるいアップダウンがありました。道が沈みこみ、先が見えなくなったかと思うと、登りがだらだらと続きました。登り切ったかと思うと、また道が沈みこんでいるのでした。
ずっと向こうまで見える、白い砂利の道が続きました。道の右側も左側も原っぱでした。
途中、私たちをおじさん2人が速足で追い越して行きました。それきり、人と会いませんでした。
出だしの遅い私たちです。今日、この道のとりを飾っていると思われました。
遠くの果てまで何もない。
その遠くの果てまで、たどり着く。
するとまた、
次の遠くの果てが出てくる…。
その繰り返しでした。
今度こそ、遠くの果てに建物が見えますように!
あ~っ、また無い!!
そして、3人は歩く速度が違いました。 わあ、Chai、早いわ~、追いつけないわ~。
疲れすぎて変な笑い顔、頭のネジがすっ飛んだ!
おやつにしない⁈
オッケー!
先を行くChaiを止め、そこまで私とDenが追いつきました。おやつタイムにしました。
生クリームスプレー缶が大活躍!
再び歩き出しました。どうも途中から、足がバカになってきたようでした。
疲れすぎたせいか、もはや疲れを感じなくなっていました。
こうなるといくらでも歩けるような気がしました。
DenもChaiも、やはり疲れ過ぎたのか、
辛い顔というより
変な笑い顔が出てきました。
頭のネジが、すっ飛んだのかもしれません…。
ね、ね、今日はいままでで一番、巡礼者っぽい顔してない?ウハハ~!
アハハハ~、いい顔してる~。今日は全部で27㎞だよね。
えへへ、えへへへ…
9時に歩き出し、今16時30分でした。
町だ!アルベルゲだ!
暗い空がポツポツと雨になり始めました。
何十回目の向こうの果てに何か見えました。
わあ!町だ!あれだ~‼
魔法のように、町が目の前にふわっと浮かびあがりました。
心に灯りがともるようでした。最後のチカラを振りしぼるようにして、アルベルゲにたどり着きました。時間は17時でした。
ヤッホー、やった‼︎ 着いた~!
しかし、憧れの温かいシャワー、居心地の良いランチルーム、素敵な庭!!…。
どれも、ありませんでした…。
そこは、大人数の詰め込み式アルベルゲでした。
天気が良くないので、外で過ごすこともできません。テーブルとイスのランチルームもありませんでした。
2段ベッドに座っているしか居場所が無いのでした。隣の人と近過ぎて、気持ちが落ち着きませんでした。
ベッドに荷物を置き、洗濯物をオイルヒーターに掛けて干しました。疲れた人が満杯の、寒いこの部屋から逃れることにしました。
バルでまた会う、変な縁。
どこかにバルはないかしら?
バルに着くと、そこも人が集まっていました。みんな考えることは同じでした。
外は冷たい雨でしたが、徐々にみぞれ変わってきました。 うう~、寒いっ寒いね!はやく落ち着こう。
私は日誌、DenとChaiは学校のドリルを持って行きました。
すごく寒い日で、ダウンやフリースの長袖姿の人の中、奥の席に
白いタンクトップ1枚のお姉さんがいました。
うひゃあ!見ただけで寒いわぁ。
あっ!あの人じゃない?
よく見るとまたもや、ブロンドの彼女でした。薄着過ぎて目を引きました。
私たちは用心し、奥の居心地の良さそうな席はブロンドの彼女がいるので避けました。入口に近い手前のテーブルに席を取りました。
彼女とは変に縁があるなぁ。まあ、気にしないんだ…。
バルはどんどん人が入ってきました。
椅子が無くても立ち飲みでもいいさ、と手に手にグラスを持ち、それぞれがビール、ワインで
今日の17㎞の道のお疲れさんパーティーをしているようでした。
このソーセージ辛くないですか?
お腹がすいたよ、ソーセージが食べたいナ。でも、辛いと食べられないんだよな~。
自分でなんとか買ってごらん。
そして、ガラス越しに太いソーセージを指さし、たどたどしいスペイン語で エス・エスト・ピカンテ?(これ、辛いですか?)
回りの席や立ち飲みのお客さんたちが、グラスを持ちながら
「お⁈」と反応し、みんなで
「辛くな~いっ‼」
とスペイン語と英語の叫び声が飛び交いました。
バルのお姉さんもゲラゲラ笑い、お皿に辛くないソーセージを乗せてくれました。
無事、自力で買うことができたDenは、ドヤ顔で戻ってきました。
アルベルゲに戻って見たものは!?
私たちは8時半にバルを出ました。外は雪になり、薄く積もりはじめていました。
この、アルベルゲに戻るほんの5分の道のりが、とても長くしんどく感じました。寒さに弱い私は、歯の根が合わずガチガチと震えてしまいました。
ううう~っ、寒ぶっ‼
ChaiとDenはベッドで寝袋に入り、横になりました。
私は寝る前に洗面所の電気で、Denのレインウエアのズボンの穴を、持ってきた布の粘着テープで修繕しました。
洗面所からChai、Denのところへ戻る途中、通路隔てた向かいに
バックパックの中身が床に散乱している、留守のベッドサイドが目に入りました。
わあ〜お、なんて不用心!
豪快にブラジャーとパンツが脱いだまま
床に広がっていました。
私はChaiとDenに声を掛けました。
見てごらん、緊張感なさすぎ。旅で女子の下着は、特に注意しないとダメよ‼
良くない見本として注意をしました。
さあ、寝よう寝よう~。寝るは楽し。シアワセ〜!
今日は長かったね~!
3人はすぐにグーグーと深い眠りにつきました。
朝になり、例のゴチャゴチャのベッドサイドの横を通ると…
あ~っ、あのお姉さんのだったんだ~!
そこにはブロンドの彼女がいました。
どこまでも、縁があるのね…。