35/60聖地サンティアゴ巡礼ガイド本の著者と出会い直接アドバイス
5/20(木)→アストルガ 朝方に冷える 17.4㎞/€27 日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会提携アルベルゲ @€5×2
昨日は猛暑でした。
けれど夜になると涼しい風が吹き、真夜中のトイレツアーは快適でした。
空から降ってきそうな星を心地よく観ることができました。
しかし朝方になり、かなり冷え込んで来ました。目覚めると、私はのどの調子が変でした。Denも風邪気味のようでした。痰が絡んだ咳をしていました。
朝の光が、窓から差し込んできました。
荷物の支度と朝食を済ませ、8時45分に出発しました。
今日は18㎞ぐらい歩くね。じゃあ、2時ぐらいには着くかな~
ChaiとDenは、距離を聞けばどのくらいで歩けるかが感覚的に分かって来ていました。
カミーノを逆行、忘れ物を取りに行く
およそ40分ほど歩いたところで
あぎゃ~!
あら、どうしたの?
アルベルゲに帽子忘れた~!うわ~ん、あれ、銀ピカのバッジが付いてるんだ!
ええっ、忘れたの⁉ あれは置いていけないわね…。
SJPP(サン・ジャン・ピエ・ド・ポー)で買った黒い帽子は、いろんな思い出のピンバッチが付いていました。
けれど今、結構な距離を歩いて来ていました。
昨日に引き続き忘れ物…、これを戻るのは、つらいわ~!
まったく…、今日も忘れものかい…。
がっくり。
うーんどうしよう、考えた末...。
田舎のあぜ道にChaiとDenと私のバックパックを置いて、私ひとり、アルベルゲへ帽子を取りに戻る作戦に出ました。
絶対にここを動かないでよ。1時間ぐらいで戻るからね。
オッケー!
ママ、がんばって~!
私は、カミーノを逆行して歩き始めました。
すれ違う人の不思議そうな顔
帽子あるかなあ、あってくれぇー!
お願い、カミサマ!
普段、気にもしていなかったにですが、急にDenの帽子の存在感を強烈に感じて、居てもたってもいられなくなりました。
ナヘラのオスピタレロがくれたホタテの銀ピカバッジが付いていました。
そしてこの暑い日中、帽子が無いと困ってしまいます。
帽子帽子、帽子、ぼうし~‼
ゆがんだ表情で、私一人でカミーノを逆戻りしていると、すれ違うすべての人々が不思議な顔をしました。
「あれ、どうしたの?」
「あなた、子どもたちは?」
「大丈夫?何があったの?」
声を掛けてくれる人、すれ違いざま
「?」と顔に大きく書いてある人もいるました。
アルベルゲで一緒にだった、ドイツから来たおばさんたちとすれ違いました。
すると、向こうから大声で
「あなた!男の子の帽子が、アルベルゲにあったわよ!」と声を掛けてきました。
そう、それを取りに行くのです!
そこに居たみんなは、あれまぁ、お気の毒に~…。
という顔をしました。
そのグループの中に、クリスチーナの顔がありました。
怒ったお尻で歩く
私は、競歩の選手のように、すっちゃかすっちゃか、早歩きの早歩きでした。
帽子が有ってほしい~という
祈るような気持ちと共に
またかよ~という
苛立った気持ちが、激しく盛り上がってきました。
それで 怒ったお尻でわしわしと歩いていました。
あ、そうだ!アルベルゲが閉まっていたらどうしよう…。
朝、巡礼者が全員出てしまうと、14時まで開けないアルベルゲもあるのでした。そうしたら諦めるほかありません 。ChaiとDenをそんなに待たせたら、心配になってしまうだろうから。
再び、祈りの気持ちにシフトしました。
カミサマッ!
あの思い出の帽子~‼
どうか開いていて~!
アルベルゲ開いていてくださいっ!
いつの間にか小走りになって居ました。
ハッハッハッ…、着いた~!
大きな黒い門の扉を、恐る恐る押してみました。
お願いっ!開け‼
ギイィ~
開いていました。
よかった!
丁度おばちゃんが、掃除を終えて帰る所でした。
私は「黒い帽子、ありませんか?」と頭にかぶるゼスチャーをして見せると
おばちゃんは
「帽子?これかしら?」とすぐに出してくれました。
ムーチョ・ムーチョ・グラシアス!
「そう!それです。ありがとうございます‼︎」と
感謝感激のお礼の言葉を並べ、アルベルゲをあとにしました。
カミーノで実感「普通の状態」の有り難さ
イヤッホ~やった〜‼︎
再び、早歩きで戻りました。今度はもう嬉しくてスキップギャロップ、ルンルンルン!
「♪ぼうしがあった、帽子があった、ぼうしがあったよぉお\(^o^)/」
はやく、帽子があった事を知らせた~い!
だが、しか~し...
考えてみれば…
いつもどうりに帽子をかぶってくれば、何もこんな面倒なこと無かったのよね…。
「当たり前にあるもの」が無くなった時、初めてその「もの」の価値に気が付くのでした。昨日の半袖シャツやパンツ、靴下も、失くしかけて初めて、無いとどれだけ困るのかを強烈に意識しました。
この黒い帽子も無くしかけたからこそ、どれだけDenにとって大切なものかということが分かったのでした。
こうして見つかっても、結局は、
いつも通りの姿のDenになるだけなのにね。
これだけ忘れものが続き、連日カミーノを歩き戻るという痛い目に遭うと
ああ~、普通のことがありがたい!
しみじみと、感じ入ってしまうのでした。
おや?影が多い…?
田舎のあぜ道に、子どもたちのシルエットが遠目に見えてきました。
あれれ?
寝転んでいる影が1つ多くない?
増えている….
誰⁉
クリスチーナだ!
ニコニコして
「ハーイ!」と挨拶をしてくれました。
異国の見知らぬ田舎のあぜ道に、子どもだけで足を投げ出し不安そうにママを待つ2人の姿に、急きょ寄り添ってくれたのでした。
巡礼者は、あと戻りもイヤだけれど、止まることすらもイヤだというのに。一時間以上、一緒に待っていてくれたのでした。
嬉しいなぁ!ありがとう‼︎
ほらっDen!帽子あったよ~。
あ~、よかった!ありがとう!
「さて、行こうか。」
4人は一緒に歩き始めました。
旅は道連れ
しばらく田舎道を行きました。
旅は道連れ、クリスティーナも一緒です。
クリスチーナは、荷物が大きいのに、私よりも歩くのが速いはやい!
私が遅いのね…。
何度も3人一緒に「大丈夫?」
と振り返られ、声を掛けられてしまいました。
「ハイハイ、大丈夫よ!」
私は、小走りして追いつくようでした。
でも、遅いのはね、Den、Chai、クリスチーナの、3人の歩く後ろ姿がとてもカッコ良くて、バシバシ写真を撮りながら歩いていたのよ~。
時には、小走りして先回り。みんなの前に立ち
ハイチーズ、
パチリ!
しばらくトコトコと田舎のあぜ道を行きました。
牧場を見つけました。牛たちがくつろいでいました。
子牛は、別なところの小屋で休んでいました。しばらく牧場を観察をしました。
さあ、歩こうか。
気持ちの良い田舎道が続きました。
クロスのモニュメントを発見!
ちょっと休憩しよう!
再び、歩き出しました。
白い木の林。今までの木々と少し違ってきたね。
Chaiとクリスティーナは、おしゃべりしながら歩く歩く~!
マリア・ホセおばさんの屋台
クリスチーナは、以前のアルベルゲで日本人の女性と一緒になったそうです。その女性は、アストルガでオスピタレラをするのだと言っていたというのでした。
日本人のオスピタレラか~、会ってみたいわぁ。カミーノのいろんなこと、聞いてみたい。早く着きたい、アストルガ~。
しかし、強烈なこの暑さ。徐々に疲れが溜まってきました。
ちょっぴり風邪気味のDenが遅れ始めました。
Denもクリスティーナと一緒に歩きたいけれど…。速いんだから、もうっ…。
そんなタイミングの中、乾いた赤土の果てに、屋台のようなものが見えてきました。
なんだろ、何なに?
それは 裏切らなかったのでした!
冷たい飲み物、果物、ビスケット、クッキー、ナッツ、ジャム、、好きなだけ飲んで食べて良いという、カトリックのボランティアでやっている寄付の屋台でした。
わ~い、最高の最高!
バックパックを投げ出し、皆んなそれぞれ好きなものをパクパクと食べ始めました。風邪気味だったDenも私もビタミンをたっぷり、水分をしっかりと、とることが出来ました。
そして突然!
クリスチーナが素っとん狂な声をあげました。
I can’t believe it!
信じられな~い!
これら、全てオーガニックショップでしか手に入らない、無添加でカラダにいいものばかりだと言うのです。お値段もかなり張るものでした。
ジャムやハチミツを手に取り、目を丸くして感動していました。
そうなの?わーん、泣ける~、うれしいわぁ‼
しかも、この疲労困憊のタイミングで、ぽっかりと現れたこの屋台は救いの神!
屋台の主に、皆んなでお礼を言い、名前を教えてもらいました。
マリアさんでした。
余りに感激したので、クレデンシャルにサインをお願いすると、
かわいいハートのスタンプを押してくれました。
嬉しいことに、すぐ横の空き家にソファが置いてあり、座って休むことが出来ました。
そこから出発するまでが、自分との戦いなのでした。
「さあ、出発しよう!」と心に決めても…、
また桃を取ってしまい、座ってかじってしまう。
「もう、ごちそうさま!」と決めて立つのですが…、
またビスケットを取って座って食べてしまう。
「さあ、行かなくちゃ!」でも…
もう一杯だけ!とコーヒーを飲んでしまう…。
あー、離れたいけど離れられない~‼︎
最後の最後のもう一個!
いい加減にしろ!自分~!
名残り惜しみながら、やっとの思いでこの屋台を離れることが出来ました。
幸せいっぱい、お腹もいっぱいでした。
そして、寄付でした。(いくらでもよい。)
それだけでも嬉しいのに、安売りのビスケットだってじゅうぶん有難いというのに、この屋台は、最高級のオーガニックなものを提供してくれました。しかも飲み物や果物は、炎天下の中、どれも氷で冷やしてありました。
カトリックの道で、巡礼者に対しての素晴らしいおもてなし!
全身にリスペクトのシャワーを浴びた気がしました。
私たちは、すっかり元気を取り戻し、アストルガの街まで、はつらつと歩き出しました。
こっちだよ!オッケー。
誰かが作った矢印を、振り返ってパチリ!
クロスのモニュメント、みんなで写真を撮ろう!
あーん、待ってよ~。
やっぱりそうか…、Denはコンパスが違うんだね。
かなり遅れてしまいました。
Chaiとクリスチーナは、歩くペースが速いのでした。
英語で話が通じるって楽しい!
原っぱのポニーは、すっかりくつろいでお昼寝でした。
建物が増えてきました。もう、街は近いね!
と思ったら、また田舎道に戻りました。
教会の屋根に作られたコウノトリの巣を見ると、そのたくましさに、思わず微笑んでしまうのでした。
橋を渡って街に入るようでした。
車道に沿って、しばらく歩きました。
暑いけど、大丈夫だよ。まだ、さっきの屋台のおやつパワーが残ってるからね!
わあ、やっとアストルガの街に入ったよ!
アストルガの日本人オスピタレラ
坂のてっぺんにアストルガのアルベルゲがありました。その坂は、車がひっくり返っちゃうんじゃなかしら?というぐらいの急勾配でした。
えっちらおっちら…。
登り切った~!
やった~、着いた~!アストルガのアルベルゲ。
ご近所の犬がお出迎え。アストルガはいい街だよ。のんびりしておくれ~。
アルベルゲのレセプションで休んでいました。
あっ、日本のひとがいるよ!
わあー‼ トモコさんじゃないですか?
たどり着いて、ホッとしている私たちに、お菓子や柿ピーをくれました。
このスペインの地、外国暮らしで思いがけず手にした柿ピー!
醤油せんべいの味が懐かしく、Denは私の分まで恐ろしい速さで飲むように食べてしまいました。
教えてトモコさん!巡礼中の注意事項
カミーノについて、トモコさんに聞きたいことが山ほどありました。レセプションの仕事がひと段落した頃、私たちは話す時間を持つことができました。
なぜ、サンティアゴ巡礼のアルベルゲにいるのですか?
トモコさんは言いました。
「巡礼の道を2回歩いてからね、どうにかして、この道の存在を日本のみんなに広げたいと思って、日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会というのを立ち上げて活動しているの。
そこで、日本人のオスピタレロを派遣してみようか、では現地の調査をしてみようか、という計画の下見に来ているのですよ。
ここアストルガのアルベルゲは、なるべく理想に近い快適な滞在を意識して運営されているの。部屋を少人数にする、キッチンをつける、シャワーの数を多くする、とかね。
今日はこれから、巡礼中にトラブルにあった人と面談をするの。
お金を盗られちゃったのね。スペインの中でもサンチャゴに続く巡礼の道は、もっとも治安が良いと言われているのだけれどね。
今年みたいな聖なる年(2010年)は、たくさんの人が訪れている中に、スリやコソ泥が紛れ込んでいるのよ。
その人はね、ちょっとトイレに行っている間に500ユーロ(65.000円)盗まれたの。シスターでね、一緒に歩いていた人に盗られたらしいの。
ということは、巡礼者のふりをして、数日一緒に歩いて、金品をどこに隠しているのかを密かに窺い「それ、いまがチャンス!」という訳ね。巡礼路は安全という伝説は鵜呑みにしないほうがいいですよ。」
ガーン!そんな輩が横行しているなんて…。ショック!なんだか寂しい気持ちになりますね~。
トモコさんは「簡単に、中を案内しましょう。」と席を立ちました。私たちも後に続きました。
すぐに戻って来ると思った私は、さっきまで書いていたノートとペンとペットボトルの水を、机の上にそのままにしておきました。
すると、トモコさんは言いました。
「そのボールペンやノート、無くなったら困るのでしょ?持っていきましょう。ここは日本とは違うのです。
指先から離れた時点で、ペンでもチョコレートでも所有権が無くなるのですよ。」
と言いました。
あっ、そうなのですね!ボールペン一本でも失くしたら大変!持って行きます!!
カミーノの奇跡、失くした本の著者だった!
「ガイドブックは持っているの?」とトモコさんに聞かれました。
実は、パリの空港に置いてきてしまったのです。それは、とても詳しく書いてある本で、見ながら歩こうと思っていたのですが…。
それは、この本でした。
トモコさんは
「あ~!あれね。私が取材して執筆したのですよ。」
ええ~っ‼︎トモコさんて、私が無くした本の著者だったの⁉️
トモコさんはにっこり笑って頷いていました。
そ、そうなのですか!、あれ、ほんとにわかりやすいです!ずいぶん細かく調べたのですね…。
それもそのはず、トモコさんはスペイン語と英語が堪能でした。地元スペイン人からの情報、文献からの情報とネットワークが半端なく広いのでした。
私たちは、フランスから巡礼事務所でもらった町名と宿と距離のプリント一枚を頼りにして歩いてきたのです。
「 それなら、英語の小冊子をあげるわね。何か参考になるかもしれないから。」とトモコさんは現地のガイド小冊子を持たせてくれました。
他にもフィステラの海の話、温泉のある町オウレンセ、アストルガの石博物館…。
オレンジジュースのマシンて何ですか?
トイレに行きたい時のスペイン語はなんて言えばいいのですか?
最後にトモコさんは「巡礼(カミーノ)を終えた人は、何らかの形で巡礼に関わりたくなるのですよ。」と言いました。
アルベルゲ、小さな部屋にホッとする
部屋はクリスチーナと一緒の4人部屋でした。
これぐらいの大きさの部屋だと落ち着くのでした。
部屋が広くて大人数だと、ザワザワ度が高くなり居心地が雑な感じてしまうのです。ドミトリーなので、当たり前なのですが、アルベルゲによって、たまに小さな部屋にあたるとホッとするのでした。
シャワーを浴びました。熱さ、お湯の量もバッチリ!でした。
夕飯は、クリスチーナと私たちとで、分担することにしました。クリスチーナはパスタ、私たちはサラダとデザートです。
アストルガの街探索&買い物に出ました。
カミーノ、旅用品グッズ屋さん
あ!爆丸(バクガン)がある、これ結構好きなんだよね。スペインにもあるんだ…。
爆丸とは、日本のカードとキャラクターのゲームでした。
店頭の人形の顔がコワイ…。
広場を見下ろすシティホールでした。
石のレリーフ壁画がありました。
そして、ガウディの作ったアストルガ司教館。
歩ける距離になんでもある、探索の楽しい街でした。
巡礼後のディナー散歩は幸せタイム
クリスチーナはトマト、オリーブ、パプリカのパスタ。私たちは、レタス、キュウリ、パプリカ、オリーブのサラダと、メロン、オレンジのデザート。それぞれを持ち寄りました。
アルベルゲのテーブルとイスは外にありました。
天気が良くて気持ちいい〜。
おいし~い!
後片付けの皿洗いはDenとChaiがやってくれました。
夜9時だというのに、外はまだ明るく日本の夕方の6時ぐらいの感覚でした。
もう一度、町に探索に出かけました。再びスーパーマーケットを調査したあと
ベンチに座り、みんなでアイスクリームを食べました。
巡礼のあとのこんな時間が、最高の幸せタイムでした。
夜9時半の広場の様子は、まだまだ人がたくさん賑わっていました。
私たちは明日の巡礼があるので、広場を抜けてアルベルゲにへ戻りました。私たちとクリスティーナだけでひと部屋を貸し切りでした。
知らない人の居ない、いびきも聞こえない、
プライベートで借りた部屋のように、リラックスして眠ることができました。